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2019年3月の記事一覧
夢の引越し便 #4-④
視覚と聴覚を失った僕は、虚無と焦燥を感じていた。それらは今まで体験してきたものとは比べ物にならないものだった。虚無感は風船のように無を漂う孤独で、焦燥は見識のない異質な生物に突然変異させられたような特別な不安を抱かせるものだった。僕は僕では無くなっていることを認識し、何を目的に存在しているのかを感じ取れなくなっていた。
凍るような寒さを感じているにも関わらず、汗は止まらなかった。膿を潰したような嫌
夢の引越し便 #5-①
遠くで微かに部屋のチャイムが鳴った。
音が聴こえていることを感じる。空気を感じる。
ようやく安寧が訪れた。
ゆっくりと目を開く。瞼を開く前から、周囲に明るさを感じていた。
間違いない、僕の部屋だ。瞬きをする。目を閉じてまた開く。何も代わり映えしない、いつもの僕の部屋、いつもの僕の部屋のベッドだった。
もう一度、今度は確かにドアチャイムが鳴らされていることを認識する。
枕もとのデジタル時計に目を
夢の引越し便 #5-②結
タカハシ運送は、ごく普通の景気の悪い運送業者のようだった。広いトラック乗降場と簡素な事務所。門には錆びが目立った鎖が干からびた蛇のように地面にこびりついていた。
門の傍に立てかけられた横幅2メートル程の看板は、知っている人間だけが「夢の引越し便」と読めるくらい塗装が剥げ落ちており、看板の裏面には何年か前のものと思われる選挙の宣伝ポスターがしわしわになって貼りついていた。
僕はトラックから降り、事
「夢の引越し便」あとづけ
肩の荷が下りた気分です。
大学時代の作文なんです。最初は手書きで書きました。卒業間近に大学のパソコンで卒論やりながら入力そして出力しました。データは当時フロッピーディスクだったんですが、どこかへ失くしてしまいました。
そんなこんなで彼は自宅の手紙などを詰め込んだ収納ボックスに閉じ込められていたのです。
黄ばんで、シワシワで、読まれることを諦めているような悲しみを携えて、そこにそれはひっそりと息