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【MPH/LLM留学②】スタンフォード大学ロースクール法学修士(LLM)プログラムの概要

今回は、スタンフォード大学ロースクールの法学修士(LLM)プログラムについてご紹介します。スタンフォードLLMは規模が小さいせいか、他のロースクールと比較するとあまり情報が出回っていないように思います。

LLMプログラムを終えてみて、スタンフォードのプログラムや環境はとても素晴らしいものだと感じたので、より多くの人にその魅力を知ってもらえる機会になれば幸いです。

スタンフォード大学ロースクールの概要

スタンフォード大学は、アメリカ合衆国カリフォルニア州に位置する総合大学で、いわゆるシリコンバレー(サンフランシスコ~サンノゼにわたる地域の総称)のど真ん中に位置しています。
主にテック・医学系が強い大学ではありますが、ロースクールも高い評価を受けています。直近のアメリカのロースクールランキングでは、イェール大学と並んで1位の評価を受けています。一方で、ハーバード大学ロースクールは4位(タイ)であり、これと比較してもスタンフォードの評価の高さが伺えます。

スタンフォードロースクールは、その規模の小ささが1つの特徴です。JDプログラムは1学年約250名、LLMプログラムは約75名の学生が在籍しています。これに対して、ハーバード大学ではJDが約1000名、LLMが200名弱であり、かなり規模の差があります。少人数制であることもあり、JDとLLMとの距離は比較的近いと思います(実際、JDとの交流の機会が何度もあり、今でも連絡を取り合っている人が数名います。)。教員と生徒の距離感も近いように思います。他方で、ロースクール単体のカリキュラム数のバラエティさは、大規模校と比べると少し物足りなく感じる部分があるかもしれません。

スタンフォードには、LLMプログラム以外にもSPILS(Stanford Program in International Legal Studies)JSD(Doctor of the Science of Law)というプログラムが存在します。SPILSはLLMと同様に1年で修了するプログラムで、研究志向の学生向けですが、参加者は数名程度とLLM以上に少人数です。JSDは博士課程であり、通常5年以上の研究期間が必要とされています。アメリカの博士課程は一般的に4〜7年かかるため、JSDプログラムも同様の時間を要します。

図書館の閲覧スペース。事実上24時間利用可能。

LLMプラグラムについて

LLMプログラムには以下の4つの専攻があり、それぞれ必修科目等が異なります。4つの専攻を合わせた生徒の合計数が75名ほどなので、1専攻は16~17名ほどです。出願・選考は各専攻ごとに行われ、(公式情報ではないため定かではありませんが、)それぞれ数百人単位で出願数があるので、合格率はかなり低いと聞いたことがあります。

  1. Corporate Governance & Practice (CGP): 会社法やM&Aなど。

  2. International Economic Law, Business & Policy (IELBP): 国際仲裁や国際通商法など

  3. Environmental Law & Policy (ELP): 環境法や再生可能エネルギーなど

  4. Law, Science & Technology (LST): IT、知的財産、ヘルスケアなど

学生の多様性に関しては、私の在籍時は思ったよりも国籍に偏りがあった印象ですが、これは年によっても大きく異なると聞いているため、一般的な傾向とまでは言い難いと思われます。なお、私の在籍時は、中国、インド、ブラジル、日本、台湾、韓国の5カ国で全体の3分の2ほどを占めていた記憶で、特にアジア・南米地域からの学生が多かったです。

日本人留学生は、私の年は多めで9名でした(内訳はCGPに2名、IELBPに3名、ELPに2名、LSTに2名)。また、日本からのビジター・スカラーとして裁判官が1名在籍していました。ほとんどの学生は四大(五大)事務所や外資系法律事務所に所属していますが、インハウスや他の事務所出身の方もいます。純ジャパ(完全に日本で育った人)は少数派で、帰国子女や幼少期を海外で過ごした経験のある人が多いのも特徴です。

開講科目は、HP上で公表されているので、自身の関心のある開講科目があるか調べてみるとよいでしょう。ただし、受けたい科目が毎年開講されない可能性があるので注意が必要です。

タームは、Pre-Fall(8月末~9月下旬)、Fall(9月下旬~12月上旬)、Winter(1月上旬~3月下旬)、Spring(4月上旬~6月上旬)の大きく4つに分かれています。Pre-Fallのみ、3週間ほどでLLM生全員が同じ教室でアメリカ法入門(Introduction to American Law)と法曹倫理(Professional Responsibility)を学びますが、Fall以降は各々が履修したい科目を履修することになります。卒業式が6月中旬頃と、他のロースクールと比較すると1か月ほど遅いので、卒業してすぐのBar(アメリカの司法試験)を受験しようとすると、7月下旬の試験日まで1か月強しかない点には注意が必要です。

4つの専攻のいずれもコロキウム(Colloquium)と呼ばれるゼミのような必修科目がありますが、専攻によっては、それ以外にも必修・選択必修科目が指定されている場合があります。このような制約が少なく、もっとも柔軟に履修科目を選択できるのはLST専攻だったとの印象です。

また、科目選択の自由度は、NY Bar(ニューヨーク州弁護士)受験の有無によっても異なります。NY Bar受験のためには、ロースクール在学中に一定の科目を履修することが求められています。そのため、当該科目を履修し、自身の専攻の(選択)必修を受講すると、自由に科目を選択できる余地がかなり狭まってしまう可能性があることに注意が必要です。

ロースクール以外の授業も履修できます最大9単位まで)。スタンフォードには他に6つの大学院(School of Medicine、Stanford Graduate School of Business、School of Sustainabilityなど)があり、これらの授業も一定の上限内で履修可能です。私は、Public Health(公衆衛生)やプラネタリーヘルス(Planetary Health: 環境問題が健康に与える影響について学ぶ分野)に関心があったため、School of MedicineやSchool of Sustainabilityで開講されているWomen and Health、Health Policy、Planetary Healthなどの授業を多く履修しました。

その他、LLMプログラムに関する詳細な情報は、ロースクールのHPに記載されています。

スタンフォード大の生活環境

スタンフォードのキャンパスは非常に安全で、治安も良好です。夜遅めの時間であってもキャンパス内を徒歩で歩けます。たまに不審者が構内に入ってくることが無いわけではないですが、速やかに警察等が対応している印象でした。とはいえ、キャンパス内では何度か車上荒らしや暴力行為などがあったようで、日本と比べるとやはり気を引き締めないといけない部分はあるように思います。

メディカルスクールの建物

気候は穏やかで過ごしやすいです。夏は日差しがかなり強く、日焼け止めは必須ですが、日本と比較すると乾燥しているため、不快に感じることは少なかったです。ただ、「カリフォルニア」の単語から連想するよりは寒冷なように感じました。朝晩の寒暖差も大きく、真夏を除いてパーカーが大活躍しました。気候区分としては、比較的珍しい地中海性気候であるため、雨季と乾季が存在し、夏場はほぼ雨が降りません。冬に緑に覆われる山々も、夏場には荒涼とした茶色い大地に変わります。紫外線+乾燥で、お肌の管理は少し気を付ける必要があるように感じました。

乾季の荒涼とした大地@Stanford Dish

大学構内は広大であり(杉並区と同じ面積とのこと)、敷地内には、教室・研究棟・大学病院に加えて、各種競技のスタジアムや小高い丘が広がるエリア(天文台があるため、Stanford Dishと呼ばれます。)など、様々な施設があります。メモリアルチャーチと呼ばれる教会もあり、教会周辺のエリア(Main Quadと呼ばれます。)は異国情緒あふれる観光スポットにもなっています。

夜のMain Quad

ダイニングホール(食堂)もキャンパスに点在しており、各ダイニングホールで異なるジャンルの食事を楽しめます。スタバを始めとしたカフェテリアも多く入っていますし、銀行や郵便局、コンビニなども入っているので、構内で(良くも悪くも)ほぼ生活が完結してしまいます。なお、構内には大きなジムが2つあるほか、ゴルフレンジ、ゴルフコース、テニスコート、厩舎(馬術部があり、乗馬もできると聞いています)などがあります。構内も安全なので、ランニングをしている生徒も多数います。

ジムには屋外プールもあります。体力等に応じたレーン分けになっているので泳ぎやすい。

スタンフォード周辺(シリコンバレー)の日本人コミュニティは割かししっかりしており、東大や慶應のOB会も存在しています。また、スタンフォード周辺にはPlug and Playなどのスタートアップ向けインキュベーションセンターがあり、スタートアップ関連の人材も多く集まっています。スタートアップ支援に関心のある方にとっては、知見を広げ、ネットワークを築くための貴重な時間を過ごすことができるのではないでしょうか。

PLUG AND PLAYには日本企業も多く入居しており、ピッチ等のイベントも多く開催されています。

ネックは学費・家賃の高さと娯楽の少なさだと思います。学費は、為替相場にもよりますが、円安の局面ですと1年で1000万を超えます。家賃も高めで、サンフランシスコを含むベイエリアは全米でも有数の高額エリアです。ニューヨークやボストンに次いで家賃が高いとされています。物価も日本と比較すると高いように感じます(私の留学時は円安で1ドル160円まで下がったので、特に割高に感じました。)。娯楽も少なく、最寄りのパロアルト市を含めて人口数万人の町が点在するエリアのため、大きな娯楽施設は限られています。同級生の中には、金曜夜などに車で1時間弱離れたサンフランシスコまで出かけている人もちらほらいました。

おわりに

スタンフォード大学ロースクールのLLMプログラムについて書いてみましたが、いかがでしたでしょうか。スタンフォードでの1年は、少人数制の利点を最大限に活かしつつ、シリコンバレーで過ごせる利点を最大限に活かして、勉学にネットワーキングに励むことができ、結果として多くのチャンスにも恵まれた環境でした。
皆様がLLM留学先を検討するに当たり、少しでも参考になれば幸いです。

もし、「これが知りたい」ということがありましたら、コメントやいただけますと幸いです。


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