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アカデミー賞のノミネート作品を知らない

今月末、アメリカでアカデミー賞受賞式が行われる。

映画の賞は、アカデミー賞の他、カンヌ、ベネチア、ベルリンの三大国際映画祭やキネマ旬報ベストテンなど多数ある。

しかし、これら映画の賞に対してほとんど興味がない。

実際、今年のアカデミー作品賞に濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』がノミネートされたことはニュースで聞き知っているが、他のノミネート作品を知らない。

このように、アカデミー賞でどの作品が受賞するのか興味を持てないのだが、アカデミー賞でどの作品が受賞したというニュースを見ると、その作品は「観たいな」と思う。それは、アカデミー賞の選考方式が他の映画祭やベストテンと異なる点が大きい。

賞の選考方式

映画祭の賞やベストテンは、批評家やジャーナリスト、または映画監督など少数の審査員によって決められる。そのため、それら賞は審査員の嗜好に左右される。審査員が異なれば異なる作品が受賞していた可能性は大いにある。

それに対しアカデミー賞は、現在だと6,000人ほどのアカデミー会員の投票によって決められる。アカデミー会員は、ハリウッドの映画関係者が多くを占め、プロデューサー、監督、脚本家、俳優、カメラマン、映画技術者等で構成される。映画監督だけとか批評家だけといった偏りはない。

そのため、ごく少数の意見や好みに左右されるという形にならない。

またアカデミー賞は、映画祭のように芸術的に優れていたかの審査ではなく、ハリウッド業界人による功労賞という位置づけが強い。

これらのことから、アカデミー賞は娯楽性と芸術性、その両方を兼ね備えた作品が受賞しており、数ある映画賞の中で一番納得感がある。これまでアカデミー賞を受賞した作品を観て、全てとは言わないまでも大きなハズレがない。

そのため、アカデミー賞受賞作品は「観たいな」と思う。

賞やベストテンは参考情報

アカデミー賞は、知名度が抜群でありマーケティング価値が非常に大きい。要するに金になる。そのためアカデミー賞を受賞すれば当然のこと、ノミネートだけでも「アカデミー賞」を大々的な宣伝文句にするのはうなづける。

ただ、それはあくまで参考情報に過ぎない。

アカデミー賞を受賞したということは、ハリウッドの映画業界を対象にした世論調査で人気だったということでしかない。アカデミー賞を受賞したから良い作品ということでも、凄い作品ということでもない。

個人的には、アカデミー作品賞の作品に大きなハズレはないが、しかし、首をかしげる作品はやはりある。

例えば、コーエン兄弟は好きな監督だし『ファーゴ』(1996年)や『バーバー』(2001年)は傑作だと思っているけれども、アカデミー作品賞を受賞した『ノーカントリー』(2007年)は、個人的には好みではない作品である。

アカデミー賞で受賞したかどうかより大切なのは自分がどう感じるかの感性であり、アカデミー賞受賞作品が「よかった」と思えば「さすがアカデミー賞作品」となるし、「よくなかった」となれば、ハリウッドの世論調査とは異なる自分の感性を知ることになる。

そうして自分の感想とハリウッド世論調査が同じ部分、もしくは異なる部分を知り、その理由を調べたり考えたりしていくと、新しい考え方や知識を得ることになる。

その結果、新たな感性を手に入れる、もしくは感性を磨くということになるのかもしれない。

そういう意味でもやはり、アカデミー賞受賞作品は「観たいな」と思う。

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