ドラマ「未満警察　ミッドナイトランナー」 を弁護士がゆるっとツッコんでみた。

緊急事態宣言解除後、テレビ番組の撮影もソーシャルディスタンスを保ちつつ再開され、軒並み放送がストップしていた連続ドラマも放送が再開されました。
過去の名作をみるのも楽しいですが、結末が分からない新作を見る楽しみを改めて感じます。

さて、そんな今期のドラマの中でも私が一番注目しているのが「未満警察 ミッドナイトランナー」。こちらは、日本テレビ系で土曜日10時から絶賛放送中のドラマです。警察学校一年生の二人組が事件を解決するバディもの。そのバディを世界中のセクシー案件を一手に引き受けるケンティこと中島健人さん（SexyZone）と最高級の顔面から飛び出すユニークな発言で茶の間をざわつかせる平野紫耀さん（King & Prince）が演じています。

中島さん演じる理論派の本間快は、ちょっとめんどくさい感じがかわいい意識高い系の役どころ。セクシーを封じたケンティのキャラは彼の新たな一面を見せてくれています。一方の平野さん演じる一ノ瀬次郎は肉体派で、いわゆる脳筋的な憎めない役どころ。バラエティでは見られない、彼の人間離れした運動神経と肉体には驚かされました。この凸凹コンビの軽妙なやりとりにニヤニヤしつつ、アクションあり、裸ありのおいしい作品です。

ただ、少し気になるのが二人の捜査態様。このまま問題行動ばかりしていると、二人は警察学校を退学になってしまうのではないか…。一抹の不安が私の脳裏に過ります。無事に二人に警察学校を卒業してもらうにためにも、誠にお節介ながら二人の捜査の問題点について検討してみようと思います。

まずは、警察学校生や警察官の捜査権限の範囲について押さえておきましょう。

警察学校生に捜査権限があるの？

そもそも、警察学校生に捜査権限があるのか？と疑問に思うところですが、警察学校に入った時点で、警察学校生は警察官の身分を取得します。階級は巡査です。よって、給料も出るし、希望すれば警察手帳も支給されるそうです。法律上は、他の警察官と同様に事件の捜査をすることができるんです。よって、快君（ケンティ）達も捜査できるんですね。

では、警察学校生の捜査権限を押さえたところで、快君（ケンティ）達の捜査を振り返ってみましょう。

参考：◆「5分で分かる未満警察ミッドナイトランナー　2話」
https://www.ntv.co.jp/mimankeisatsu/story/02.html
参考：◆「5分で分かる未満警察ミッドナイトランナー　3話」
https://www.ntv.co.jp/mimankeisatsu/story/03.html

先週（7/4）と今週放送（7/11）の第2，3話では、人身売買組織による家出少女の誘拐事件を解決するストーリでした。

偶然女性（上白石萌音 ）が連れ去られる場面を目撃した二人。直ぐに110番をしたものの、なかなか捜査が行われないことにいら立つ二人は、自ら捜査をすることに。（普通の人は警察の人の指示に従いましょう）

聞き込みの結果、女性が働いているお店が判明。快君（ケンティ）がお客さんとしてお店に聞き込みに行くことに。次郎ちゃん（平野くん）は、お店の外で待機することに。
ところが、そのお店は女の子が膝枕しながら耳かきをしてくれるお店で（耳かき自体は医療行為にあたらないので、耳かき屋さん自体は問題ないらしい）、そのお店に警察のガサ入れが！このままだと、潜入もとい膝枕されてまんざらでもない快君（ケンティ）が危ない！

ではここで、問題です。

Q：お店の外で待機していた次郎ちゃん（平野くん）が、警察官をお店から遠ざける為にとるべき合法的な行為は以下のどれでしょうか？

①警察官に近くで泥棒が入ったと告げて気をそらす
②警察官の帽子をとって逃げる
③警察官を殴る

正解は…

ありません！！

ちなみに次郎ちゃん（平野くん）が実際にとった行動は②警察官の帽子をとって逃げるです。

おぉ！次郎ちゃん（平野くん）…これは、器物損壊罪（刑法261条）や偽計業務妨害罪（刑法233条）にあたる可能性が濃厚な行為だよ。まだ、入学したてで習ってなかったのかもしれないね。
なお①は虚構申告罪(軽犯罪法第１条第16号)に③は公務執行妨害罪（刑法95条1項）や暴行罪（刑法208条）か傷害罪（刑法204条）にあたる恐れがあります。次郎ちゃん（平野くん）、次はきちんと警察の人に事情を説明してね！！

参考：◆「医師法第１７条、歯科医師法第１７条及び保健師助産師看護師法第３１条の解釈について（通知）」（厚生労働省）
https://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000g3ig-att/2r9852000000iiut.pdf

無事に警察官をまいた二人。その後事情を知っている男を見つけ出し、快君（ケンティ）の剣道三段の腕前により何とかナイフで抵抗した男の確保に成功する。

ではここで、問題です。

Q：事情を知る男に詳しく話を聞きたい二人が、とるべき合法的な行為は以下のどれでしょうか？

①ガムテープで身体をぐるぐる巻きにして、話を聞く
②暴行を加えながら知っていることを話せと脅す
③ズボンのポケットに入ったスマホをいじって調べる

正解は…

③！
③なら合法の余地あり！

解説しましょう。

まず①ですが、確かに事情を知る男はナイフを持ち出して抵抗していたので、男をガムテープでぐるぐる巻きにする行為に正当防衛が認められとも思えます。ですが、すでに取り押さえられ抵抗できない人に対して、身体の拘束をする行為には正当防衛は成立しません。

また、②ですが、正当防衛が成立しない以上、暴行は暴行罪に、脅迫行為は脅迫罪が成立する可能性があります。

そして③ですが、逮捕状が出ておらず、現行犯人でもない人の身体を逮捕することや身体検査をしポケットに入っているものを勝手に調べることはできません。
所持品検査は逮捕状がなくても行うことができますが、本人が拒否している場合は原則として違法となります。ただ、犯罪の嫌疑、捜査の必要性、被検査者が被る不利益を総合考慮して、社会通念上相当なものであれば適法となる場合があります。今回は誘拐事件の重要参考人に対する所持品検査なので、捜査の必要性があり合法となる余地がありますね。


以上より、上記①②は、違法な行為となる疑いが高いのでやってはだめなんですね。

ちなみに、快君（ケンティ）たちは①②③をしていました。もー、違法捜査で世間から叩かれちゃうゾ☆

その後も、手掛かりのスペインバルに潜入し、敵とひと悶着。次郎ちゃん（平野くん）のアクションが冴えわたります。ここでも、重要参考人を拘束した二人は、知っていることを答えないと目をえぐると脅迫。もー、これも脅迫罪になっちゃうよー！

さて、無事に女性（上白石萌音） が監禁されている場所にたどり着いたふたり。
どうやら犯人は家出少女を集めて海外に売り飛ばすいわゆる人身売買をしていた。うわーこれは胸糞だ！ぼこぼこにしちゃえ！（というか、110番したら？）

ちなみに、アジトへの侵入は住居侵入罪にあたる可能性があります。

まぁ、その後二人は加藤雅也扮するブロック塀をこぶしで粉砕する男と戦い、いったん捕らわれ、上半身裸で吊るされるものの、次郎ちゃん（平野くん）の筋肉おかげで何とか脱出します。（筋肉は裏切らない！）

無事に生還したものの、捕らわれている女の子たちを助けたい二人は、出港間近の犯人と女性たちの居所にたどりつき（居場所が分かった時点で、上の人に連絡しよう？報告・連絡・相談は社会人として常識だよ。）、加藤雅也に最終対決を挑みます。

ここから、一気にドラマはハイローに。
次郎ちゃん（平野くん）には、是非ともハイローに参戦して欲しいですね。事務所の事情とか知らないっす。

まぁ、何とかラスボス加藤雅也を倒した二人は、誘拐されていた女性たちを無事救出。

その後、二人の行為は当然問題になり、退学騒動にもなりますが、今回は味方（今のところ）の伊勢谷友介扮する教官の口添えで退学は免れることに。

めでたし、めでたし…？

いや、とにかく立派な警察官になるためにも、二人には法令順守を貫いてほしいですね。

無事に卒業して立派な警察官になれることを心から願います！

参考：◆「未満警察ＨＰ」
https://www.ntv.co.jp/mimankeisatsu/