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「ゆるキャラ」はどう訳す?

 文化が違うんだから違うものが存在するのは当たり前。大抵のものは知らず知らずのうちにお互いの文化に溶け込んで馴染んでしまう。

 「ゆるキャラ」または「ゆるカワ」

 これは、無い。

 いや、全く無いわけではない。似たようなものはある。パリのデ⚫︎ズニーランドのようなテーマパークに行けば期待通りのキャラクターのグッズもあれば着ぐるみをまとった職員もいる。フランスの国民的ヒーロー、アステ⚫︎クスがテーマの « Parc A⚫︎térix » にも同じように着ぐるみがいるし、そもそも « bande dessinée »の主人公なので普通にグッズが存在している。

 この2例は「ゆるキャラ」ではない。作者がいて物語も存在している。キャラクターにはしっかりした性格があるし、ただカワイイだけのものでもない。

 フランスで「ゆるキャラ」に当たるものがないか色々考えたが思い当たらない。

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 去年秋に帰国した際に埼玉のいとこに会った話をした。車に乗っての移動もあっていくつかの市を通った。その中の一つの市役所の前を通った時「あのキャラができた時にちょっと問題があってねぇ。奈良かどっかの市と被っちゃったんだよね」という話を聞いた。

 どこの市でもやっていることなのか、確かに両親の住む町にもあるようだ。中規模以上の市がみんな「ゆるキャラ」を抱えているとするとものすごい数になるだろうなと要らぬ心配をしてしまった。

 ちなみに「ゆるキャラ」コンクールまであるという。何を競うのか知らないが全く暇なものだ。あんなものでも町おこしに役立つんだろうか?

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 これも一つのカルチャーショックかもしれない。

 恐らく日本をあまり知らない外国人が到着後すぐに目にするだろう数多の「ゆるキャラ」。

 飲み物の缶、お菓子の袋、様々な掲示広告。空港内からすでに始まっている。電車に乗っても吊り革広告、動画広告でお目にかからないことはない。

 テレビをつけても着ぐるみから、CGからこれでもかというくらい変化球を混ぜて登場する。某N⚫︎K教育テレビのお昼前の番組でもここまで幼稚化されたキャラクターは無いのでは?

 日本人には慣れっこになってしまっているようだが、外国人視点からすると「この国民の精神年齢は大丈夫か?」となる。どれをとっても小学校低学年までにしかウケそうにないものばかりだからだ。

 日本人に名高い効率性と厳格なイメージを持って日本を訪れる外国人には理解不能な代物。「ナンダコリャ?」とか「よくまあ大人が平気な顔でいられるなぁ」とか感じているはず。

 マンガカルチャーから派生したんだろうが、何であそこまで低年齢志向?マンガが全部あんなんでもないのに?

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 « déformé »デフォルメとはフランス語。わざと原型を崩す手法のこと。美術の世界ではそれなりの意味がある。

 「ゆるキャラ」は、マンガの中で登場人物がデフォルメされて出てくるものとも違う。キテ⚫︎ーちゃんのように、始めから子供が一筆書きで書いたようなものに見える。

 「万民に受け入れられるシンボルとなるキャラクター!」

 そう言われればそうなのかもしれない。けれど町のシンボルがアレっていうのも何だかなぁ…と思うのは自分が日本人気質を無くしたからなんだろうか?

 名の通ったメーカーのお菓子にも「ゆるキャラ」キャラクターがついていることがある。メーカーのイメージに関わることなので余程考えられた末のものなのだろうが、外国人的にはやはり理解に苦しむ。

 さっきカルチャーショックの一つかもと言ったが、これは自分の知る限り日本以外では見られない「社会現象」。民衆のコンセンサスがある前提だからあれでOKなんで、突然あれをうち(フランス)でやったとしたら、袋叩きに合わないまでも笑い物にされそうだ(あくまで個人の意見です)。


 「ゆるキャラ」


 どう訳そう?

 






 どう訳します?

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