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フランスで音楽を習う〜肩を張らずにフランス29

「フランスで音楽をやる」と聞いたら読者の皆さんはどう想像されるだろうか?

 1/ すごいなあ。何とかコンクールで賞を取ってパリに留学に行くんだろうなあ
 2/ 日本で昔からやってて相当優秀だったんだろう
 3/ フランスまで行くなんてお金がずいぶんかかるだろうなあ
 4/ やっぱり頭も良くなかったら無理だよねえ

 などなど

皆さんはパリとリヨンにある国立高等音楽院 « Conservatoire National Supérieur de Musique »を考えておられる。あれはフランス音楽教育の東大と京大。東京芸大と同じレベル。プロの技術と素質がないと入れない。今ではコンクールで賞を取ったような外国人学生がわんさか押し寄せるので自国民で入れるのは稀になってきている。

ここで話したいのは、全世界の音楽生が夢見るパリとリヨンの高等音楽院ではなく、小学校に入る年齢に差し掛かった子供たちが自宅から通う、いわゆる「習い事」としての音楽教育について。

フランスには地方、 県、市に依存する大小のコンセルヴァトワールと呼ばれる音楽学校がある(それ以外にアソシエーションなどが経営するものもある)。全くの初歩から高等音楽院入学レベルまでの音楽の授業を提供している。

ここでは音楽に絞って話をするが、これらのコンセルヴァトワールにはダンスと演劇のクラスもある(施設による)。パリとリヨンの高等は音楽とダンス。演劇は独立している。要するに音楽に限ったものではないということ。誤解のないように。

細かすぎる内容だと分かりづらくなるので概要だけ説明したい。

コンセルヴァトワールは公立の教育機関。だから万人に門戸を開いている。年間費用も主に市から補助が出ているのでびっくりするくらい安く済む。

未経験の子供たちが初心者の大多数。基本、登録すれば入れる。ちなみに外国人も試験に受かれば入れてもらえる。かくゆう自分もはるか昔にこうやって入った。

コンセルヴァトワールという施設は60年代に国のイニシアティヴで設けられた。世界中どこへ行っても(多分)類を見ない、フランスが誇れる施設と言える。

大まかに初級、中級、上級と、そのさらに上を目指すレベルの授業が受けられる。さっきも書いた通り高等音楽院入学レベルまでの生徒がいる。

いわゆるソルフェージュ « Formation musicale »は不可欠。これがフランスが誇る独自のシステムで、ソルフェージュがクラスとして独立している国はあっても珍しい。

1年間のソルフェージュの後、子供たちは楽器を選ぶ。コンセルヴァトワールはオーケストラのほぼ全楽器とピアノ、ギターなどのソロ楽器、チェンバロなどの古楽器、それから声楽の授業を提供している。その他にも合唱、室内楽、オーケストラ(レベルごと)、吹奏楽や、楽曲分析、和声法、音楽史とおよそ音楽の全分野を網羅する授業が受けられる。

うちの学校では、音楽、ダンス、演劇の3分野を足し合わせると生徒数約1500人。中規模だろう。

毎年何人かはフランスのパリ、リヨン、スイスのジュネーヴ、ローザンヌ、ベルギーのブリュッセル、ドイツのドレスデン、デュッセルドルフといったヨーロッパ各地の高等音楽院に入っていく。

Conservatoire National Supérieur de Musique et de Danse (CNSMD) de Lyon

何といっても生徒と先生と自分とが三位一体になって高等音楽院まで押しやったという達成感は半端でない。爽快感もある。言っていなかったが伴奏者の仕事をしている。

手前味噌になるが、プロレベルの教育を受けた経験が無いにもかかわらず、上級生徒を相手に十分教えられている自分を褒めてやりたい。長年培った経験と知識によるのだが、その中でも一流の先生との授業で感じ取った音楽性とそれを教授するテクニックが何よりの糧となっている(もちろん自己啓発も欠かせないが)。

あえて説明を簡略化したけれども、概略をわかっていただけただろうか?とにかく公立の学校で誰もが安価に入れるにも関わらず、音楽界の「東大」まで続く音楽教育が受けられる。先にも言った通りフランスが全世界に誇れる施設だと声を大きくして言いたい。

「これを知りたい」という方が読者の中におられたら、遠慮なくコメントをどうぞ。


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