竜巻!?が庭を通った時の話〜肩を張らずにフランス74
突然ですがフランスに台風はないです。
日本と違い熱帯性低気圧の台風が西ヨーロッパに押し寄せることはないです。
夏の半ばから秋にかけてやってくる台風。子供の頃は台風が来ると学校が休みになるかもしれないのでバカみたいにワクワクしていたものです。風がやたらと強く吹いて雨がジャンジャン降っても学校が休みにならなかった時の失望感。多くの方に経験があるんじゃないでしょうか?
台風のないフランス。代わりと言ってはなんですがこちらには「嵐」 « Tempête »があります。季節の変わり目によくあるtempête。「春の嵐」がイメージとして一番知られているのではないかと思います。
まるで関係のない話ですが、tempêteの山形のアクセント。フランス語をやった方ならご存知でしょうが、 « s »が元々あった印なんですよね。「テンペスト」と言った方が馴染みがあるかもしれません。シェークスピアかベートーヴェンを思い浮かべます。
さてこのtempête。風力だけは台風に負けいないかもしれません。頻繁にあるので慣れましたが、よくこれで屋根が吹き飛ばされないものだと思います。
また余談ですが、フランスでは「風力25メートル」とは言いません。 « vitesse de vent à 90km/h »と車の速度と同じ言い方をします。大体日本にいた時から思っていたんですけど、速度を秒で表されてもピンと来ないんじゃないですか?雨量を表すmmも似たようなものですが…
風は強いんですが雨が大量に降るとは限りません。そこらが熱帯性低気圧と違うところでしょう。カラッ風がビュービュー吹いて木の枝が流れるような姿勢になる絵面ですね。
もちろん土砂降り雨もあるし、雷も鳴ります。
ちなみに雷なんですが、住んでいる地方が起伏に乏しいせいか肝を冷やすような大音量では鳴らないです。
これも子供の頃の思い出ですが、「メリメリ!メリメリメリ!!ドッカーン!!!」とくる日本の雷は子供心にやはり恐ろしかったです。思わず耳を塞ぐ動作には少しも誇張がなかったです。
うちの近辺で聞こえる雷はどこか生ぬるいですね。「グルグル、ゴロゴロ、バーン!」程度ですか。いや日本の雷が懐かしいわけではありませんが…
***
2003年、夏。ちょうど20年前になります。
来ました。 何が? 嵐が!
記憶が定かでないですが、この日、明るいうちはただ風が強く雨が普通に降っていたくらいだったと思います。ちょうど数日前から « salle à manger »の改装をやっている最中だったことはよく覚えています。
「22時くらいに作業をストップして床に着来ましたね。ところが真夜中の1時過ぎ。キャットドア?がなんだかバタバタいうので見に行ってドキッとしちゃったんですよ。思わず目を疑いましたねー!一面水浸しになっているじゃありませんか!?」稲川淳二さん風に(笑)
外はもうものすごい嵐。雷鳴がひっきりなし。雷光も止まない。雨がこれでもかというくらいの土砂降りで、キャットドアからジャンジャン入ってきていたんです。
雑巾とバスタオルで応急処置をしたんですが、流石に外に出てみようとは思いませんでした。
これ以上できることがなかったのでとりあえずその場はベッドに戻りました。寝付けたどうかは覚えていません。
***
翌朝。
嵐は止んでいました。
ドアの鍵を開け外に出ました。
中庭から右に進んだ正面に樹齢100年はあるんじゃないかと思われる梨の木が「あった」んですが
バッサリと見事に倒されていました。
そのまま右に進むと
すももの木が « Y »の字に枝をむしり取られ、さらに右に進むと
アカシアの木がこんな状態になっていました。
流石に呆然としました。普段見慣れた風景。怖いとか悲しいとではなくただ違和感がありました。
ただの嵐にしてはあまりにも強すぎるんじゃないか?と訝しく思い、調べてみると、どうやら「ミニ」竜巻が通って行ったんだろうということが分かりました。
この写真をご覧ください。
これは枝をむしられたすももの木。背中正面に古い梨の木があります。真っ直ぐに家の左を進むと倒れたアカシアの木にたどり着きます。竜巻だとすると色々と合点が行きます。梨の木とすももの木とアカシアの木が一直線上に並んでいるんです。「ミニ」竜巻だと思う理由は数メートル離れた他の木にまるで被害がなかったから。家に被害がなかったのが不幸中の幸いでした。
おそらく1kmほど離れたところの飛行場で発生した「ミニ」竜巻が野原を通ってうちに迫り通り抜けて行ったんだろうと想像しています。
***
あれから20年。
枝が折られる程度の嵐は毎年何度も訪れましたが、もちろんここまでの被害はこの一回だけでした。
気候変動の激しくなった今の地球環境。
20年間なかったとはいえこの先またこんな天災が降ってくる可能性がない、とは言えなくなってきました。
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