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車と交通事情(その1)〜肩を張らずにフランス35

日本に帰るたびにこう思う。

「なんでこんなに公共交通機関がいっぱいあるのに自家用車も道路に溢れているんだろう?」

空港に降り立って両親の家にたどり着くまでの2時間。電車から田んぼと畑はチラホラとしか見かけない。反対に住宅地が途切れて見えなくなることはまずない。これだけ家が密集していて交通機関も発達しているんだから車の必要はあまりないんじゃないかと余計なことを考えてしまう。


日本の交通事情を話したい訳ではないので場所をフランスに戻す。

ドゴール空港に着く。まだ上空にいる間に眼下を見られた読者もおられるだろう。目に入る大部分が耕作地。麦や菜の花、トウモロコシ、ヒマワリなどを育てている。

RERでパリまでの車中からも同じような景色が見られる。パリに近づくにしたがって住宅地や集合住宅が増えるのは当然だが。

モンパルナス駅を利用するので例にとると、TGVが発車して10分ほどはトンネルが多く景色はほとんど見えないが、それを過ぎヴェルサイユを通り越すといきなり野原が広がる。集落や村は時々現れるがとにかく家屋を見ることは俄然少なくなる。

TGVと農耕地と村

フランスは元来農業国。間違いがなければ日本のおよそ3倍の面積に半分の人口。人口密度が6分の1だからかなりスカスカしている。

車の話をしようとするのになかなか車が出てこない。

何が言いたかったかと言うと、街からほんの5km離れると公共交通機関がなくなってしまう。 « TER »地方列車は生活範囲を網羅するには程遠い。郊外バスも朝と夕方を除くと1時間に1本しかなかったりする。停留所も家のそばにない。

大部分のフランスで車は必需品だ(やっと車が出てきた)。車がないとパンも買えない。自宅から出ると一番近いスーパーでも5kmある。パンもガソリンも同じ場所。自転車で行けない距離でもないが、上りあり下りありで1度やって辞めにした。それに毎日買い物に出ることはなく、どうしても買い溜めになるので、自然と量が多くなる。車がないとどうしようもない。

スーパーの駐車場

コンビニが200-300mおきにある日本とは違い、街中に住んでいるとしても中規模以上のスーパーまで3-4kmはあるのが普通。一般的に買い物は車で行く家庭が多い。

問題は学校や仕事。

県庁のある大きな町に住む人たちには公共交通機関が完備されている。バスに加え最近ではトラムウェイが復活した。大都市になるとメトロまである。距離もしれているので自転車も電動スクーターもスケートボードも移動手段になる。

反対に街中から10kmほど離れたところに自宅があると移動に頭を悩ませることになる。バスの郊外線の停留所、地方列車の駅から遠くなければ問題なく利用できる。ただし本数は限られる。

それよりも離れてくると、十中八九車になる。

地方にいて街中から離れた自宅だと、毎日の通学通勤でも車を利用せざるを得ない。他に手段がない。

子供の学校の送り迎えにしても同じ。親が送り迎えをしないと学校が受け入れてくれないので(安全のため)、仮に1-2kmでも車を出すことになる。

自宅が街からどんどん離れていっている今、車はフランスではいよいよなくてはならないものだ。

ちなみに最近では車のコマーシャルでも « covoiturage »「相乗り」を推奨している。エネルギー不足が叫ばれる今日、抑えられる所は抑えましょうということだ。

続く

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