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青木古書店の不思議な一日 その6

残りの本を調べたが特に手掛かりとなるようなものは見つからなかった。

「やはりその切手が目当てなんでしょうか。ネットで調べてみたいですね。」
「素人には本物かも分かりませんからまずはプロに鑑定に出しましょう。」
「ところで本を持ち去った犯人達は切手が挟まれていないことに気が付いたら絶対戻って来そうですね。あるいは私を付け狙うか。」
「ですから私としてはしばらく青木さんの身柄を保護したいところです。ですが署内では今朝の一件を殺人事件とは見ていない者がほとんどで。」
青木の顔はたちまち青ざめた。
「では自分の身は自分で守れということですか。」
「私は確かに殺人があったのだろうし犯人達はまだ諦めていないと思ってます。そこでなんですが、青木さん、良かったら今晩は私の部屋に気ませんか。狭いですが一晩くらいは我慢して貰えるかと。」
「良いんですか。私としてはお言葉に甘えたいですけど、刑事さんの立場とか大丈夫でしょうか。」
「そもそも事件性があると思われていないんですから、個人的な付き合いだという理解でいきましょう。それに私は古本屋に興味があるので是非青木さんとお近づきになれたら嬉しいです。」
「では本当にお言葉に甘えます。ありがとうございます。」
青木の顔に血の気が戻ってきた。

その後、長谷川は切手を専門店に持ち込みに出掛けていき、青木は夕方まで店で夕方まで一人店で過ごしたが、店の前には長谷川が配置した警察官が交代で警備に当たっていたため命の危険を感じることはなかった。
しかし、いつも通りには過ごせるはずもなく、自分が事件に巻き込まれるような予兆はなかったかと、ここしばらくの出来事を思い出そうと時間を遡っていった。

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