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雨からは傘が守ってくれるのに。

買ったばかりの小説が、残りのページ数を減らしながらクライマックスに向かっていく。
コーヒーショップの端の方に座り、わたしは小説を読んでいた。
グラスの中のアイスコーヒーが減り、溶けた氷のだけが抵抗いている。

いつのまにか、わたしたちは定期的に数字を確認しないと生きていけなくなってしまった。それは、何故かわからない。
この国では聞いたこともない依存症の名前がピョコピョコ顔をだす。だけど、ここは少しばかり隔離された空間のようだ。
そう思いながら、アイスコーヒーのグラスに口をつける。
それから、また小説に目を戻す。

なんだかとても自由に思えるこの場所でも、煙草に火をつけることはできない。その為には、もう少し隔離された壁の向こうに行かなければならない。

わたしはテーブルからはなれ、少し歩き、それから煙草に火をつけた。

一本吸ったら、出よう。

あちら側の珈琲の匂いも、こっち側で薫るタバコの煙も両方好きだ。でも愛好家が思うよりは嫌いだから、わたしは随分いい加減な人間なのだろう。曖昧、なのだ。

煙草の巻紙が焼け、ジリジリと急かしてくる。
たとえばグラスの中の氷が、珈琲の飲み頃を終わらせるように溶け出しても、または小説の内容がただの小さな文字だとしても、わたしは一向にかまわない。だけど、曖昧なことには依存してはいけないらしい。この国では、そう決まっているらしい。

このテーブルから離れていく大概の人は、数字を見て決める。

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