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ホラー的思考

天気、気温ともに良好な季節を迎え、早朝から釣り竿を海に傾ける。
周りの釣り人たちも、辺りが明るくなり始めるとともに気が付けば倍以上に増えていた。
地元民からも、釣り好きからも人気がある港のようで、数年前からは観光バスまで来るほど地域的にも集客に力を入れている様子が伺える。
暗黙の了解なのだろうが、各々一定の間隔を開けて釣りをしている。簡易チェアを用意する人、車の後ろを海側に向けてトランクをあけてする人、休憩中に景色が見えるようになのか海ギリギリに車を駐車するもの様々だ。
侵入禁止区域に歩いて行く人も見える。
釣りをしない人でも、その場所が禁止なのは地元民ならしっている。なぜか。
落ちて亡くなる人がいるからだ。

正直、珍しくはないと言えるほどに、亡くなる人は多い。それも、同じ場所で。
ニュースにすらならないのである。いや、これは正確なことではないから言い直すと、なってはいるだろうが地域住民からすると大したニュースではないのだ。
警察なんかはその処理に仕事はするだろうけど、それと同じように漁師はいつも通りに漁にでるし、わたしたち住民は犬と散歩し、老夫婦は日課のウォーキングをする。平野歩夢に憧れる少年達だって、スケボーの練習を休む理由にはしないのである。そして当然のように釣り人は、釣りにやってきて、魚を釣る気で海に竿を傾けるのである。
暫くすれば、また誰か釣り人が亡くなるだろう。
その間、何匹の魚が釣り上げられるのかは知らない。そんなことは、いちいち大したニュースにはならないのだ。

海に向かって釣り竿を傾ける。
竿がしなる。
今は、人が竿を握っているように見える。

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