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【丸ごとレポート】Short Story for Sustainability Talk Live Vol.2

昨年12月2日、株式会社FROGLOUDから諏訪慶さん大泉共弘さんをお招きし、「Short Story for Sustainability Talk Live Vol.2」を開催しました。

「SDGs・ESGに取り組まなければとは思っているけど、何をすればいいのかわからない...」
「La torcheが取り組むSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)って何?」
「ミッション・ビジョンとパーパスの違いとは?」
「ショートフィルムってどんな価値があるの?」

そんな問いにじっくりと向き合いつつ、企業の事業や組織の変革を加速させうるショートフィルムの可能性に迫るイベントとなりました。

盛りだくさんの内容になっていますので、ぜひ、目次からご自分の興味のあるトピックを選んでいただき、学んでみてくださいね。

vol1はこちらから

登壇者プロフィール

株式会社La torche CEO 秋間早苗氏
東京大学大学院在学中の2006-7年、MIT、スイス工科大学などの大学連携より、サステナビリティをテーマにした学生サミットを主宰。 2008年同大学院国際協力学修士課程修了。卒後1社目の起業より、環境・医療・教育など多分野を横断する産官学連携および事業開発プロジェクトに携わり、事業性と社会性の統合、マルチステークホルダーの協働関係創出について研究と実践を重ねる。 2社目の株式会社La torcheの起業を機に、認知科学的アプローチによる「ものの見方の転換」による個人・組織の活性を取り入れ、アフリカをはじめとした国内外のSDGs事業開発、組織開発、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)をプロデュ―ス。2児の母。

株式会社FROGLOUD CEO 諏訪慶氏
2005年、米国アカデミー賞公認 アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」を企画運営する株式会社パシフィックボイスに入社。映像事業部 部長 兼 映画祭のチーフ・プロデューサーとして、映画祭協賛営業や企業・行政団体とのショートフィルム製作、
ショートフィルムを活用したビジネス周りを統括。2015年1月、同社執行役員に就任。代表の別所哲也と共に株式会社FROGLOUDを設立。代表取締役社長として現在に至る。

株式会社FROGLOUD CCO 大泉共弘氏
事業創造・ブランディング・マーケティング領域で、一貫したストーリー性を重んじるクリエイティブディレクター。理念は「ビジネス価値のあるオリジナルストーリーを生み出す」。映画業界を経て、大手広告代理店(オプト/東急エージェンシー)で、マスとデジタル、ブランドとダイレクトなどボーダレスな領域で指揮を執り、現在はフードデリバリーmenuなどの事業を担うレアゾン・ホールディングスで、部長 / シニアクリエイティブディレクター・コミュニケーションデザイナーとして、コミュニケーション領域を管轄する一方、ストーリーマーケティングを得意とするフログラウドでCCOを務め、社会貢献価値のある新規事業の立ち上げに従事している。

前回のテーマを復習。サステナビリティの再考とは?

三人の詳しい自己紹介は、ぜひvol.1をご覧ください。

秋間
こんばんは。La torche代表の秋間早苗です。本日もよろしくお願いします。
前回は、皆さんの持っているサステナビリティへの固定概念を緩めるべく、解説を進めました。

今日は、パーパスやミッション、ブランド、ビジョンなどの混乱しやすい言葉をわかりやすく整理することと、私たちが提唱している「ショートストーリー戦略」についてその価値をご紹介できればと思っています。

それでは、諏訪さん、大泉さん、自己紹介をお願いします。

諏訪
諏訪慶と申します。僕は、「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア」という国際短編映画祭でプロデューサーを務めてきました。そして、ショートフィルムのエキスパートであるクリエイターたちと、企業のブランディングをブランデッドムービーという映像ジャンルで実現させるFROGLOUDという会社を作り、今は代表をやっております。よろしくお願いします。

大泉
FROGLOUD・CCOの大泉共弘です。情報を得る手段が多様化する中で、どのようにメッセージを届ける側と受け取る側のコミュニケーションをデザインするかという領域で、ここ何年か活動しています。今回の企画は、そのコミュニケーションをストーリー化するというところが一番面白いところなので、楽しみにしています。よろしくお願いします。

秋間
では、まずは前回話したことを、ぎゅぎゅっとまとめて紹介します。
SDGsやESGに企業として取り組まなければまずい、という潮流が広がる中、サステナビリティに対する固定観念を持ったまま進んでしまうと、「脆い地球を守る」イメージで、維持保存の発想に偏ってしまうリスクがあります。

そうではなくて、事業をすればするほど、「稼ぎ(ビジネスの持続性)」「務め(社会の持続性)」の両輪を回せるような指針を立てることが大事です。さらに、そういった企業の存在意義を社内外に伝えていき、サステナビリティ推進の駆動力にしていく際には、パーパスの設定ショートストーリー戦略が効いてきます。このような流れで、お話ししてきました。

諏訪
前回は、パーパスの表現とストーリーの親和性の高さで盛り上がりましたね。今日は、皆さんにもさらに、このワクワクを共有できればと思っています。

大泉
前回の最後に、「ミッション・ビジョン」と「パーパス」あたりの定義の違いを説明してほしい、と秋間さんにムチャ振りをしたところ、ちょうどこの間、後輩とその話になったことがありました。僕なりに説明したんですが、あまりうまくはいかずだったので、今日の解説を楽しみにしています。

「ミッション・ビジョン」と「パーパス」の違いを理解しよう

秋間
はい。今日はまさにその話題をしていきます。
こちらの図をご覧ください。

「視線」をキーワードに、パーパスを考える

まずは、どこからの視点か、というところに重点をおいて解説をしていきます。
「ビジョン」や「ミッション」はこれまで、社内にとっての旗印、社内から見て役割を果たしていくものでした。そして一方のブランドは、企業イメージと同じように、その企業が未来に対してどのような価値を提供する姿勢があるのか、社内以外からの目線にも耐えうる存在として策定されてきたのではないかと思います。

そして、今まではバラバラにあったこれらを統合する存在として、オレンジの三角形として示している「パーパス」があります。社会との関係性の中で、強く価値を持つ言葉であるということを、ご理解いただけたでしょうか。

それでは次に、こちらの図をご覧ください。

「時間軸」をキーワードに、パーパスを考える。

今度は、時間軸で見ていただきましょう。真ん中を「現在」とした時、これまでの企業から出されるメッセージが、現在から未来の間の右側の部分に集中しがちだったことにお気づきになるのではないでしょうか。

でも、過去から今までの間、つまり創業から今に至るまでの間に会社が存続されてきたということは、たくさんの方々から支持を受けてきて、社会に価値を提供してきたということですよね。

会社の存在意義・パーパスはこのように、未来の話だけではなく、過去から今に至るまでどんな存在だったかという要素も併せ持っているはずです。

さまざまなストーリー、人々の意見、目的を統合させて作る北極星のようなものだと、捉えていただければと思います。

大泉
なるほど。統合しているんですね。
僕なりのイメージでいうと、「ミッション・ビジョン・バリュー」は現在進行形で、パーパスは未来志向なのかなと。「2030年の私たち」のような形で表現される機会も増えていく中で、未来に向けてどうありたいかを設定されているのがパーパスだと捉えていました。

秋間
おっしゃる通り、多くの方々がパーパスを、未来寄りの意味で使っています。それは、SDGsやサステナビリティなど、「未来に向けてどうにかしなくてはいけない」「これまでのやり方ではまずい」という話題が、とても大きくなっているからだと思います。これだけ不確実で変わりやすい世の中で、どんな環境でも意思決定をスムーズにして、存在意義で迷わないようにしたいという危機意識の高まりを感じます。

ただ、「望ましい未来」にフォーカスを当てすぎると、抽象度が高くなり、どの会社でも似たようなキーワードになりがちなんですよね。そこで「これまでどんな価値を出して、どんな人たちを助けてきたか」を用いることで、一気にその会社の色濃いオリジナリティを出すことができます。この両軸の統合が、パーパスの力を強めるために必要なんです。

会社の過去はキャラクター、未来はストーリー

諏訪
過去までのミッション・バリューは会社の「キャラクター」と言えますよね。過去に何をやってきたかが、そのキャラクターの性格や個性を決めていく。そして、そのキャラクターがこれから何をしていくのかがストーリーになり、パーパスとして表現されていくんじゃないかなと、改めて親和性の高さを感じました。

秋間
キャラクターという発想は、確かにそうだと思います。キャラクターの凸凹も含めた唯一無二性が、物語を作る上では大事ですね。

諏訪
キャラクターが似ていると、さっき秋間さんがおっしゃっていたみたいに、未来に何をするかも似てきてしまいます。でも、キャラクターが違うからこそ、ストーリーも、向かう先の未来も個性が出てくるのかなと思います

秋間
そして、そんなイキイキとしたキャラクターが出てくるストーリーは、人の心も惹きつけますよね。「それ面白いね!」と前のめりにさせたり、没入して自分のできることは何か、と考えさせる力を、これからのショートストーリーは持つのではないかと改めて感じました。

ここからは、表現手法としてのショートストーリーの可能性について、諏訪さんと大泉さんに語っていただきます。

諏訪
なぜショートなのかは、会社のメッセージを伝えるのに、人は2時間も作品を見てはくれないからですね。短い方が現実的に届けやすいからこその表現形態というのが、一つあります。

ただ、長編映画でもショートストーリーでも、ストーリーが持つ力や、人を感動させるための構造を持っているのは同じです。短い中でもきちんと人の心を掴むストーリーは、確実に人の心に残るものであり、だからこそ脚本作りがとても大切になってきます。

大泉
今は「可処分時間の取り合い」と言われるように、情報を集めたり、エンタメに触れたりするためのチャンネルが多すぎるんですよね。なので、「メッセージを届けたくてもそもそも見てくれない・聞いてくれない」というのは切実な問題で、尺の長さでみるかどうかを判断されることも本当に多いです。そしてもちろん、短ければ短いほど、伝えられることも限られてきます。

ただ同時に、諏訪さんが携わっているショートショートフィルムフェスティバル」の力もあって、ショートストーリーでないと描けない世界観もあるよねという価値観も広まってきていると思います。そこに、広告を作る人たちも目をつけたというのが、ここ数年の流れですね。

昔は、映画監督を目指す人々が自分の実力を示すため、長編映画をとるまでのステップアップとして取り組んでいたショートフィルム。しかし現在では、一つのエンターテインメントとして、長編映画と肩を並べる存在になっている。

秋間
サステナビリティ推進の目線からさらに話を進めると、ショートストーリーには、やはり人を動かす力があると思います。ストーリー自体が持つ余白に自分の居場所があり、自分ごとに感じることができるという点では、今までは他人事として冷めた目で見られがちだったサステナビリティに向けた動きにも変化をもたらす存在です。

稼ぎながら務めを果たせるし、自分達ならではの価値も生み出していける。
そんな風に人の考え方を変えて、どんどん巻き込んでいく力が、「ショートストーリー戦略」にはあるのではないでしょうか。

ショートストーリー制作の解像度を上げるために。懸念点や、社内における効果について

諏訪
僕は一方で、企業がパーパスを描く際に、綺麗な話しか描きたくない病にかかってしまうことを懸念してもいます。

弊社で制作した「BMW 青い手」の例でいくと、ただ車を綺麗に見せたり、ブランドを綺麗に描いてしまうと、結局広告でしょって思われてしまう。でも実際には、そのブランドの背景にどんなストーリーがあるのか、どんなストーリーの中であれば馴染むかまで深めて考えて作品を作っているんです。ネガティブな話題が入ってはいけない、刺激の強い描き方はしてはいけないなどの考え方には縛られていない。

優等生的な描き方にとどまらないように、気をつけて創っていきたいなと思っています。

BMWショートフィルム「青い手」。
藍染職人の父と、その息子との関係を描いたブランデッドムービー。
ほろ苦いエピソードもありながら、どこか人と人がつながることの尊さを感じさせる作品。

大泉
その点においては、僕は結構ポジティブに考えていますね。
今は、自分を綺麗に描きたい、自分たちだけがお金稼げればよいみたいな考えを持つ企業は、どんどん淘汰されていっていると思います。

そんな中でも価値を出し続けている企業の持つパーパスには、サステナビリティマインドも含まれているし、良いストーリーでもあることが多いです。

以前だと、「企業の伝えたいメッセージ」と「見る人が聞きたい話」の乖離が水と油のように激しい中、コミュニケーションデザインに苦労する場面も多かったのですが、最近はトレードオフ(何かを得るために他のものを犠牲にするという考え方)からトレードオン(相反するものを新たな価値を生み出すことで両立させるという考え方)へと考え方が変わってきていることもあり、企業のメッセージが以前よりも価値のあるものに変わってきている印象がありますね。

知れば、届けば、相思相愛になるというパターンが増えてきている気がしていて、可能性を感じています。

秋間
諏訪さんがおっしゃっていたように、表層的な描き方ではない形にしたいというのは、私も強く思います。サステナビリティの話題でありがちなのは、「SDGsの何番と何番に貢献しています!」というパターン。でも実際には、世の中にある問題は全て繋がりあっていて、そんなに簡単にラベル付けすることはできないですよね。こちらを立てればあちらが立たずということもよくあるからこそ、真摯に自分達のやっていることを理解して、社内外に共有し、説得力を持たせなくてはいけないと思います。

諏訪
社内でSXに向けて意識を変えて、パーパスを作っていく過程。これだって立派な物語ですからね。ストーリーを作る準備ですら、ストーリーになるんですよ。これは、今まだパーパスの設定に取り組んでいない企業だからこそできる物語の発信の仕方であり、すごく価値のある物語の種でもあるなと思います。

秋間
新突破口としてのショートストーリー戦略というのは、クリエイターに依頼を出して、丸投げして作ってもらうというものではないと思っています。物語を作っていく過程で、色々な人を巻き込んだり、物語の種となるものを抽出したり、それを脚本に転換していったりと、それぞれの場面で、一人一人が関わり、自分ごとにできる余地を生み出していくことが大切です。

La torcheでも、企業がビジネス・サステナビリティ(稼ぎも務めも両立した形)を実現するために、まずは組織開発に重点を置いています。そこのコミュニケーションの過程もストーリーに取り込んでいけるという点で、FROGLOUDさんとの連携には大きな可能性を感じているんです。

来週は、いよいよ最終回となります。この3回にわたるライブ配信も価値のあるストーリーにしていくために、来週は皆さんも一気にこの話を自分ごとにできるような、そんな機会をご案内できればと思っています。

企業の方のみならず、説明ばかりで人が離れていってしまうのではなく、物語の力で人を動かす方向に舵を切るは、とても重要なことです。ぜひ、皆さんにそのヒントを受け取っていただく時間にできればと思います。

今日はありがとうございました。

La torche×FROGLOUD 共同プロジェクト始動!

そして、La torcheとFROGLOUDは昨年12月15日付で業務提携し、企業のパーパスをショートストーリーや映像で表現するサービス、「ショートストーリー for サステナビリティ」を提供開始しました。サービス詳細につきましては、以下のページをご覧ください。


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