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文学談義はこわい

まとまった時間が取れたので、ずっと小説を書いている。
小説を書くのは楽しい。

頭の中にあるイメージを文字として取り出す作業に興奮を覚える。

文字に変換する最中、謎の要素が入り込んで、意図していた調和とずれてくるのも楽しい。

そして人物を描くと、頭の中で友達が一人増えたみたいになる。

小説を書くことは、Nirvanaの「Lithium」の歌詞みたいな、危険な幸福感がある。
※これは前に別の記事で書いたかもしれない。


小説を書いているけれど、わたしは文学に詳しくない。

お気に入りの作家は何人かいる。
でも、その作家の作品のどこが世間から評価されていて、どんな作品に影響を受けているのか、時代背景や属するジャンルなどについてまったく詳しくない。

読んだ本について「自分はこう思う」と人に伝えるのも苦手だ。

わたしがこう思うからなんだというのだ? というセルフツッコミが頭をよぎるともう居ても立ってもいられなくなる。
まして、自分が書いた作品などを持ち寄って評論会的なこともーー大学以来やってないけどーー苦手だ。


そう、大学生のとき、同じグループの人々で、作品を合評する機会があった。
同じグループの人々というのは、ゼミや授業課題で一緒になった人、それから文学好きな友達などだ。

特に大学一年生か二年生くらいの頃は、自作品を作成した意図を説明し、他作品に評価を下してこそ一丁前な学生だという雰囲気があった。
そして文学やるなら教養としてこの本を読んでいて当たり前だよね、的な雰囲気がそこら中に渦巻いていた。

先輩から「文学について語りましょう」と飲みに誘われたり、なんでもない雑談の中に「ところでこの前読んだ三島由紀夫の……」みたいな談議が差し込まれることもあった。

真剣な面持ちで文学を語られると、そんなん知らないよ、と言えず、わたしも暗い面持ちでそれらしい文豪の名前を出して、それらしい感想を述べていた。

入学当初、周りにはやけに文学に詳しい学者肌の人が多くいた。
みんな高校生の頃から当たり前のように文豪の作品に触れていて、辞書のように分厚い百年前の外国文学を楽しく読んでいた。

わたしは徐々に感化され始めた。

なんか文学っぽいことやった方がいいのかもしれない……と思い、純文学系の作品を書いて読み合うサークルに仮入部したことがある。
そこでは後輩の書いた作品を、何らかの文学賞を取った先輩が毀誉褒貶し、こういった感じの作品を書きたいならまずはこの本を読みなさい、とすすめていた。
(そのときはジョン・スタインベックの「怒りの葡萄」をすすめていた)

入部しなかったけれど、その一回きりの文学的な張り詰めた空気はよく覚えている。

どうしても文学談議が悪い、ような書き方になってしまう。

文学談議は悪くない。
そのサークルでは毎年のように文学賞を受賞している学生を輩出していたので、文学の話をすることや自他の作品の合評をすることは、文章力を高めるための重要な礎になるのだろうと思う。

わたしが言いたいのは、文学談議が似合う人と似合わない人がいるということだ。

わたしは間違いなく似合わない。
人と真剣な話をするのが苦手だし、そもそも文学とかよく分からない。

小説や物語に人生を救われたと思っているけれど、無邪気に「本が大好き!」「図書館に住みたい!」とも言えない。
図書館に住めたら電気代は浮くかも知れないが、調理場や風呂場がないので日常の生活に困る。
あと毎日、利用者が来るので対人に対する心理的負担が大きい……といった現実的なことを考慮してしまう。

早い話が思想的なものに興味がないのだ。
深く心の中を探っていけば、わたしの中にも思想はあると思う(知らんけど)。
あなたのなかにも思想はあるだろう(知らんけど)。

それらを表明すること、それらを議題に意見を交わすことにあまり興味が湧かない。

小説を書くことは楽しいけれど、書きたいものは特にない、というのが身も蓋もないけれど本音だ。

自分の書いている小説の中の人々が、熱い思いを持って動き出すとびっくりする。
起承転結、序破急、緩急をつけないと小説は面白くならないし筆が乗ってこないのだけれど、いきなり「あなたのために命を捧げる」的な重い台詞が飛び出すと、我が創作ながらびっくりする。

君はそんなことを思っているんだ! わたしは誰かのために生命を投げ打ちたいとか全然思わないよ! なんでそんなこと思うわけ!? と思う。

往々にして自分の小説は自己犠牲や生死がテーマになりがちだけど、書いている方は理解に欠けるので驚いている。

話が盛大に逸れてしまったが、文学談議は、こわい。

絶対的な答えや優劣のある感じ、人によって個人の見解を否定する空気感があるのがこわい。
何よりこわいのは、この話をしていてお得感がまるでないことだ。

最近、友達と楽天ポイントをいかに多く貯めるかという話をした。
とても楽しかった。どこかのサービスに登録するだけで0.5倍の楽天ポイントがつくそうだ。
まだ登録していないけれど、楽天ポイントもっと欲しい。

とても楽しい談議だった。

わたしには小説の内容に関する私針や他作品の感想よりも、楽天ポイントをいかに効率的に貯める話の方が大事だなと感じた。

すべては人による。趣味嗜好の問題なのだろう。他人の趣味嗜好を否定することは趣味が悪いと個人的に思う(これは思想かな?)。
わたしの場合は、小説を書くのも好きだし、楽天でお得に買い物をすることも好きだ。

これからも小説を書きながら楽天で買い物をしようと思う。

強いて言えば、ポイントがつくからといって無駄遣いをしない。必要なものだけを買う。あと100円均一で楽天ポイントカードを出すのを忘れない、というのがわたしの中に見つけた強烈な思想です。

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