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レッスンの思い出ー忘備録1ー

ドイツでは、主に3人の教授に師事したのですが、どの先生もそれぞれの教えを補って、更に前へと押し進めてくれるようなレッスンでした。せっかくの貴重な教えですので、思い出すたびに書き留めておこうと思います。

練習は、どんな曲でもまぁ同じような経過を辿って上達していくのですが、学生時代の私の場合、曲が仕上がっていくにつれ曲のテンポもずんずんアップしていく、という習慣がありました。有名なピアニストと同じ速さで弾けるようになるのが嬉しくて、エチュードだろうとバッハだろうとソナタだろうと、とにかくもうずんずん速くなっていくんです。(笑)

ミュンヘンで教わったマッシンガー教授は、低い声で非常に穏やかな口調の先生でした。そしてオシャレなジョークも頻繁に出てくるような楽しい雰囲気のレッスンでもあったのですが、その日、先生は真面目な表情で、ゆっくりと「いいかい、自分の耳で自分の演奏を聴きながら弾いているかい?聴きながら弾けているかい?」と私に質問しました。その時、私は先週より更にテンポアップしたショパンのエチュードを「今日はちょっと上達してるもんね〜!」という意気込みで、弾き終わったばかりでした。

マッシンガー教授は、褒める時には生徒がテレて困るほどゲキ褒めしてくれるので、このエチュードの上達もてっきり褒めてもらえるものと思いきや、とても真面目な表情をした教授から先ほどの質問が、、。

「え、、、、。あ、そうだ、、ホントだ、、。私、そういえば、聴きながら弾いてないや、、、。」と突然我に返った私、、。テンポが速くなることが嬉しくて、知らずにテンポアップにばかり集中して練習していたのですね。マッシンガー教授の質問で、いきなりストーンっと地面に着地させられた、、、という感じがしました。

マッシンガー教授は「速く弾けても、めっちゃ雑だぞ!」と直接私に言う代わりに、私が自分で「聴けてないで弾いてる=めっちゃ雑。」と気づくように質問し、諭してくれたのでした。

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