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Lifestyle|森と暮らしと手仕事と〈04.フィンランドの短い夏が始まる〉

フィンランド東北地方の小さな村、タイバルコスキ。2015年に家族4人でこの村に移住してきたという、クーセラ麻衣実さん。大きな森とともに昔ながらのフィンランドの知恵で楽しく暮らす毎日は、現代の私達が忘れかけている大切なものを思い出させてくれるといいます。今回は、夏の訪れを知らせる自然の風景や目にも鮮やかな料理など、村の風物詩をご紹介いただきました。

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フィンランド東北地方の5月は、長い冬の眠りから覚めた自然の息吹を感じる特別な月です。夏至を目指して日はどんどん長くなり、現在の日の入りは午後23時頃。家の前の湖もようやく開けてきて、村の人々は早速ボートを出して釣りを楽しんでいます。

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やっと夏タイヤに換える頃、ようやく運転が楽になるちょうどその頃、待ちに待ったように森に放されるのがトナカイ。

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旅行者にとってはエキゾチックな風景も、住民にとっては厄介者。夏の間は毛色が路面と似ているので、基本走行速度80〜100キロの田舎道を走るには注意が必要です。トナカイの面白い点は、車が近づいても全く気にしないところ。至近距離に迫ろうがお構いなし、車道に立ち止まったままのこともしばしば。


我が家の羊たちも夏仕様になりました。

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3頭いる羊たちは皆、精神科医のお宅で羊セラピーとして飼われていたためか、人間が大好き。毛刈りの時も気持ち良さそうに(時折ため息まで漏らして!)その場にじっとしていてくれるので、初心者の私でも楽に刈ることができます。刈り取った毛は夏の間に洗って乾燥して、あとは長い冬のお楽しみ。

自然の目覚めは、こんなところからも感じられます。

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雪解け水を根から幹へと吸い上げた白樺の樹液。成分のほとんどは水ですが、1%ほどミネラル類を含み、ほんのり甘さも感じられます。この辺りでは春の健康飲料として各家庭で採取して飲まれており冷凍もできるので、友人は「冬に解凍して、春の思い出に浸るのが楽しみ」と言っていましたよ。私も動物の世話や庭仕事でひと汗かいた後、ぐいっと飲むのがこの時期の楽しみです。


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雪の解けたところからすぐに芽を出すのが、nokkonen(ノッコネン、和名:イラクサ)。とても強い植物で、春先から摘み始めても秋まで楽しめるので、どんどん湯がいては冷凍して、冬の栄養補給に備えます。

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先日まだ一面雪が覆っていた頃、冷凍庫から最後の冷凍ノッコネンを見つけて作ったのが、こちらのスープ、nokkoskeitto(ノッコスケイット)です。ゆで卵は我が家のアヒルの新鮮卵。ほうれん草のポタージュスープのような味わいです。他にも、クレープやワッフル生地に混ぜて焼き、リンゴンベリーのジャムを添えて食べるのも定番です。


さて、5月に差し掛かると話題になるのが夏休み。大人たちは、大抵4週間ある休みをいつ取ろうかとカレンダーを眺め、2カ月以上夏休みのある子どもたちの世話を、どう分担しようかと悩む時期でもあります。我が家では今年の7月を家族全員の夏休みにして、6月は義父母を含め、できる人が面倒を見よう、ということになりました。

小学校では例年5月の最終週、夏休みの始まる前週に、終業式を兼ねたパーティーが開かれます。保護者が子どもの学校での様子を見られる数少ない機会なので、毎年とても楽しみなのですが、昨年はコロナで中止。今年は現時点で野外での開催を検討中とのこと。

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上の写真は一昨年のパーティーの際、学校の玄関に飾られていた白樺の枝。芽吹いたばかりの白樺の小さな葉は夏の到来のシンボルで、人々はhiirenkorva(ヒーレンコルヴァ、ネズミの耳)と呼んで愛でます。


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さあ、フィンランドの短い夏が始まります!

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