気候変動リスクにさらされるワイン
テレビ東京の「海と大地を救う!ニッポンの挑戦者たち“絶品”ウニで海の砂漠化ストップ!」で紹介されたように、シャトー・メルシャンの椀子ヴィンヤードでは農研機構との共同研究で生態系調査を行い、草生栽培がネイチャー。ポジティブにつながることを明らかにしています。
(非常によくできた番組でしたね。)
残念ながら、TVer配信も終わったようです。
番組で触れられなかった椀子ヴィンヤードの活動の詳しい内容について知りたい方は、下記のサイトをご覧ください。
ところで、ワイン用のブドウは世界中で栽培されていることもあり、気候変動の農業への影響を論じる際にはワインが取り上げらえることが多いように思います。
今年の春には、科学ジャーナル『Nature Reviews Earth and Environmental』で「気候変動がワイン生産に与える影響と適応」が発表されて、「猛暑と干ばつが深刻化すれば、現在のワイン産地の最大70%が生産適性を失う重大なリスクに晒される」とされて大きな話題となりました。
色々なところで紹介されていますが、WIREDの記事がいちばん詳しいと思います。
https://wired.jp/article/enjoy-your-favorite-wine-before-climate-change-destroys-it/
実際には、スペインやイタリア、ギリシャ、そして南カリフォルニアの沿岸部や低地の伝統的なワイン産地の90%が、今世紀末までにブドウ栽培に適さなくなる、とされています。
大きいのは温度上昇。よって、現在よりも高度の高い場所に移動すれば、まだ栽培は可能です。
ここまでは、キリンにいた際に、一度調べて同じ結果を知っていました。(これは開示済みです)
しかし、この論文によると、移動するべきブドウ栽培に適した土地の面積そのものも最大50%減少してしまう可能性が高いとか。
さらに、温暖化に伴う日較差(朝晩の温度差)の縮小(主に夜から朝の温度が下がりきりない)により、良い品質のブドウを作ることが難しくなります。
また、気温が高くなるとブドウの実は早く熟し、糖分が濃縮されて糖度が高くなります。
一定程度までなら、むしろ好ましい場合がありますが、限度を超えると醸造した際にアルコール度数が高くなりすぎる、という問題が発生するのです。
そうなると、できあがったワインの味わいは従来とは異なってしまいます。
論文の中では、香りが消えてしまうことにも言及されています。
この糖度が高くなりすぎるという問題は、既に日本でも発生しています。
収穫のタイミングも早くなり、熟す速度が速くなるために、最高の状態のブドウを収穫するための時間が短くなる問題も発生します。
おいしいワインを適切な価格で飲むためにも、温暖化を防ぐ努力は、個々人にも求められるということです。
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