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風呂敷ブランド「NUNOIMI」とコンテクストデザイン

こんにちは。
「赤信号もみんなと渡れば怖くない」と同じ理論で、
「正月もみんなで太れば怖くない」を信じてやまない野口です。
#今年は5キロは太ったかなあ

さて、僕が2021年に読んで「これは座右の書になるな」と感銘を受けた本があります。本というよりは概念です。

早速紹介しましょう。こちらです。

Takramのコンテクストデザイナー渡邉康太郎さんの著作「コンテクストデザイン」です。

コンテクストデザインとは一言で説明すると

コンテクストデザインとは、それに触れた一人ひとりからそれぞれの「ものがたり」が生まれるような「ものづくり」の取り組みや現象を指す。

「CONTEXT DESIGN」(P12)

です。
コンテクストデザインをそのまま読解すると、「文脈をデザインすること」とも受け取る事ができます。
しかし同書の著者である康太郎さんは、これを明確に否定しています。
「コン=共に」「テクスト=編む」事を推奨しているデザイン活動のことを指しているのです。

デザイナー(作り手)だけで完結するの作品、サービスではなく、使用者が彼らの意思を反映させて初めて完成するような作品のことです。

デザインはふつう、正しい使い手に、正しい使い方で、正しい価値を提供することを目的とする。明確に言語化されたされた比較可能な価値を定め選んでもらう。例えば数百の「赤」がそろっている口紅、高解像度のカメラを備えたスマートフォン、加工が綺麗な写真アプリ・・・。これらはマーケットの要請に応えるために必要だ。でもこのような条件を前提としないデザイン活動があってもいい。価値そのものの定義が使い手の側に委ねられているデザインがあってもいい。

同書(P12)

つまり、作り手が意図した使い方だけでなく、
100人の使い手がいれば、100通りの使い方が生まれる、そんなデザイン活動を推奨する概念になります。

康太郎さんは、デザイナーという立場、経歴、活動から、この概念の美しさにたどり着いたのだと思います。
「一冊だけの本を扱う、一室だけの書店」
「いつ届くかわからない手紙」
「花と言葉の贈り物」
「時間を計らない砂時計」
など、同書にも様々なコンテクストデザインの活動と、実験の様子が記録されています。

どれもコンセプトを聞いただけでちょっと心が躍りませんか?
ただの理想論でなく、実装論として、体現されています。

一方で、僕がここまで大きくコンテクストデザインの考え方に美しさを覚えたのは、僕の文脈があります。

それは僕が18歳の時に無人島でサバイバル生活をした時のことです。
目的はありません。サバイバル生活で何かを得ようと気持ちではなく、サバイバル生活そのものが目的です。
無論、手ぶらで行きました。

無人島にはもちろん人工物はありません。
自然物しかありません。
あるのは
石 木 雑草 海 漂流物 生物 etc…

寝るためにシェルターを作りたいと思った時、都心での暮らしだったら、
一流のデザイナーによって作られたテントを買って、説明書を読みながら組み立てて終わりです。
便利ですね。

ところが無人島ではそうはいきません。
まずは細い枝や草木を集めます。
おっと、集める前に、それらを刈り取るためのナイフが必要でした。

まずはナイフを調達する必要がありそうです。
そのために石を拾って削ってナイフっぽくします。

ナイフ作成中

・・・

このように、すぐには解決しません。
無人島にあるモノを切ったり叩いたり削ったり組み立てたり、
「僕の意思が介入することで」初めて、僕の生活が成り立ちます。

そこには自然物との深い対話が必要です。
対話を通して、自分の新しい一面にも気づかされます。

僕の手よりこの石の方が硬そうだ。
この草木はトゲがあるけど、僕の手の皮膚の分厚さの方が勝っているな。
この蔓はこのくらいの力を入れて引っ張ったら切れてしまうのか。

断言します。不便です。
文字通り日が暮れます。


でも



不思議とそんな生活にも豊かさを感じました。
その生活では、僕はずっと主人公だったのです。

自然物。
石や草木は僕にとって何も価値のないモノです。

でも僕自身の目的のために、僕が手を加える事によって、僕にとって意味あるモノに変わります。

本来、それらの自然物は僕にとって価値あるモノとして機能するために生まれてきたわけではありません。

でもそれは余白を残してくれました。
僕の手が加わる余白を残してくれました。その余白のお陰で、僕とそのあらゆる自然物との間に物語が生まれたのです。

都心での生活は、余白がほとんどありません。
「便利」や「効率化」に支配されると、余白は無駄なモノとして、削られます。
もちろん、便利な社会を否定しているわけではありません。
しかし、それに支配されすぎると、「デザインされたモノに自分の行動が掌握されている」ような感覚になりました。

無駄や余白を徹底的に削ぎ、使用意図が細部まで設計されているモノだけに囲まれた生活に主体性はあるのか?
その生活において、僕の物語は、僕が主人公としての物語は感じられるのか?

そんな違和感を覚えさせてくれたのがこのサバイバル生活での体験になります。


その違和感を美しい日本語によって言語化されているのが本書「コンテクストデザイン」なのです。

自然や大地。
これこそが僕の考える偉大なる「コンテクストデザイナー」です。

情報の濁流に飲まれ、AIによるレコメンド機能やマッチングの最適化の発達により、
我々は一層「主体的に生きるとは?」という問いに耳を傾けてもいい時なのかもしれません。

同書では、その問いに関するヒントがたくさん詰め込まれています。

主体性の導きとはつまり、観賞・解釈・創作といった各位相を移行する摩擦を取り除く試みだ。いつまにか読むことが書くことにつながり、鑑賞が創作につながる世界をつくることだ。
・・・
コンテクストデザインは、人間を、生を肯定する。コンテクストデザインはそのためのささやかな補助線を引く。

同書(P38-39)

ああ、、こんな美しい言語化僕もしてみたい。。

ちなみに、20世紀フランスの人類学者/民族学者であるレヴィ・ストロースもブリコラージュという言葉で、コンテクストデザインの概念を間接的に支持しています。

レヴィ=ストロースは、具体の科学としての神話的思考を「ブリコラージュ」にたとえている。ブリコラージュは、器用仕事とか寄せ集め細工などと訳されているが、限られた持ち合わせの雑多な材料と道具を間に合わせで使って、目下の状況で必要なものを作ることを指している。

レヴィ・ストロース入門(ちくま新書)P135

詳しくは別noteでも解説してます。


僕は同書を読んだ時、コンテクストデザインを理想論に留めたくありませんでした。

そこで、僕もこのコンテクストデザインの概念を実証してみたくなりました。

それが、現在クラファン中の風呂敷ブランドNUNOIMIです。

コンセプトは
「余白ある生活に、あなたの物語を。」

私たちの風呂敷「NUNOIMI」はあなたの生活に“余白”を提供いたします。

便利な社会によって失われつつある“生活の余白”。
そして、その余白から生まれるあなたの物語があります。

この風呂敷に意味はありません。余白しかない、ただの布切れです。
だからこそ、“あなたが”この風呂敷に意味を宿し、余白を埋めて下さい。

この風呂敷に取扱説明書はありません。
だからこそ、“あなたならでは”の使い方で愛でて、物語を作って下さい。

「NUNOIMI」は生活に取り入れやすいように、「現代のシンプルな美しさ」と「消費されない愛着」をテーマに、
現代のファッションに合わせやすいデザインと、丈夫で長く使える上質な素材に徹底的にこだわりました。

NUNOIMIのある暮らしの主人公は常にあなたです。それがNUNOIMIのコンセプト。

「余白ある生活に、あなたの物語を。」

https://www.makuake.com/project/nunoimi/

風呂敷は言ってしまえば正方形の布です。

あなたが包むものを考え、それにあった結び方を考え、実際に結ぶ。あなたの生活と、この布のとの対話が始まる。
対話があって初めて、この布にあなたにとっての価値や意味が宿ります。
そしてただの布から、あなたによってもたらされたあなただけの何かになるのです。

僕はこの風呂敷をどう使って欲しいかという思いは込めていません。
強いて言えば、あなたらしい使い方を発見して欲しいというのがあります。
でもそれも強制はしません。
よくある使い方をして頂いても問題ありません。

でも必ず結び方には個性が出ます。
結んだ後にはシワが残ります。
それはあなたとNUNOIMIの風呂敷が残した対話の記録です。

「NUNO(布)」に「IMI(意味)」をあなたが付ける事で初めて
「NUNOIMI (FUROSHIKIと母音が一緒)」になるのです。
NUNOIMIを風呂敷として完成させるのはあなただという思いを込めました。

NUNOIMIがどんな使い方をされるのか、
NUNOIMIを通して、使用者の人生にどんな物語が生まれるのか。

それを僕は見てみたいのです。

そんな僕の実験に共感してくださる方がいらっしゃれば、
ぜひ、応援のほどよろしくお願いいたします。

再三紹介させて頂いているこちらの書籍を読んだ上で使用して頂くと、さらに深みがますと思いますので、是非ご一緒に。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

少しでもいいなと思った「いいね」や「シェア」して頂けますととても嬉しいです。


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