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【ショートショート】完成図のないパズル

このパズルは普通のパズルと少し違う。

手元にあるピースはバラバラの1ピースだったり、既に組み立てられた塊だったりする。
完成図やパズルのフレームは無いので、最終的にどんな大きさで、どんなテーマをもっているものが出来上がるのかは予想もできない。

完成した完璧な状態のパズルを知ることができるのは、きっと作者だけだ。
ただ、好奇心だったり、ピースに映る絵柄だったり、その作者が好きという気持ちだったり、話題性だったりに惹かれて、思わずパズルを初めてしまう。

自分もその一人だ。
時刻は深夜零時。

完成図が分からないので、とりあえず手元にあるピースたちを眺めて自分なりにイメージしてみる。
ふと、塊になったピースを見てみると、それは一直線のへんを持っている事に気がつく。
4辺のうち、どこに属するかはイマイチわからないが適当なところに置いてみる。
すると、どこからとも無く新たなピースが降ってきた。

特に驚くことはない。
手元にあったピースは明らかに数が少なく、これで完成させられる訳がないと思っていたからだ。

まずは、鉄則通り4辺を埋めていく。
なんとなく埋まってきたなと感じたので、明らかにピースは足りていないが再度全体をイメージし、再び手を動かし始める。

へんを持つピースが手元からなくなったので、四方に凹凸があるピース達に目をやる。
全体像のイメージからしてこのあたりかなと予想がつくピースもあれば、こんなのどこ入るんだよと、他のパズルのピースが混ざっていることを疑いたくなるようなピースもある。

予想していたピースがピッタリハマった時の快感は、プログラミングで自分の書いたコードが予想通り動いた時のものに似ていて、なんとも言えない中毒性がある。

そうやってパズルを進めるうちに、どんどん全体像がはっきりしてくる。
同時に、自分の想像していた全体像とは全く違うことにも気付かされ、その興奮がパズルを進める手に拍車をかける。

すると、あるピースを堺に今まで4辺だと思って進めていたパズルが、実は四角形ではなかったという衝撃の事実に気がつく。
これだから、やめられない。

時刻は朝の4時。
完成が近づいてきている雰囲気を感じていたのに、次のピースが降ってこなくなった。

「めちゃくちゃいいところなのに...!」

絶対誰もが思う。

はやる気持ちを抑えて、冷静に状況を振り返る。
なんとなく全体像は見えた。でもまだ埋まっていない箇所はいくつもある。
このピース次第では完成図の見え方も大きく変わるはずだ。

そして、完成したものは人によって違うんだろうなとも思う。
それがこのパズルの面白いところだ。
実は、完成図はネット上に溢れているのだが、その図はそれぞれ違う。
大体は似通ったものになるが、その人の感性によって細部に違いが現れる。与えられたピースは同じはずなのに。
理由は単純で、完成に必要なピースが全て配られるわけではないから。
穴の開いている箇所は、各々が埋める必要がある。

最初にも言ったが、そのパズルの本当の完成図を知っているのは作者だけ。
皆の作った完成図とは全く違うものかもしれないが、作者はそれでいいと思っているはずだ。

完成図はあげないけど、ピースはみんなに平等に配る。後は、それぞれの思い描くまま完成させてくれ。そこに正解も不正解もないと。

次のピースがもらえるのは来週かな。


[あとがき]

この物語は、つい昨晩自分が体験したことをベースに作りました。
いくら休日だからといって、深夜にこのパズルを始めてしまったのは完全に魔が差したなと...

この「完成図のないパズル」あなたの中で何を思い浮かべましたか?
もちろん受け取り方は人それぞれなので、正解も不正解もありません。
ぜひ、コメントで教えてください!

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