陸月 瑛永

ムツキ エイトです。物語を読むことも、書くことも人生を豊かにしてくれるので好きです。 …

陸月 瑛永

ムツキ エイトです。物語を読むことも、書くことも人生を豊かにしてくれるので好きです。 コーヒーを飲みながら、愛しのキーボード(HHKB)を奏でて文章を綴り、気分転換に筋トレをする。そんな丁寧な暮らしに憧れています。

マガジン

最近の記事

【エッセイ】ミニマリスト初心者

今頃になってミニマリストに興味を持ち始めた。 ミニマリストという言葉は数年前に話題になって、今でも緩やかにそのブームが続いているのかなと勝手に思っているので「今頃」と付けてみた。 彼らの存在はもちろん知っていて、何となく「少ない物で生きていく人達だよね」という認識をしていた。その上で自分には関係ないものだと思っていた。 でもそれはただの思い込みであり、ミニマリストの定義すらも誤っていたということに気付かされた。だから今、こうして文章にしているわけだ。 きっかけは、たま

    • 【ショートショート】解放の時

      私は今日、友達を亡くしたが最高の気分だ。 その子とはずっと昔から一緒で、毎日おしゃべりするような仲だった。 彼女は、本能や直感で行動しがちな私を論理と理性で理路整然と抑止してくれるクールなタイプの子だ。この冷静さに何度救われたことか。 私が一目惚れして盲目になりかけていた時も、彼女は冷静に語りかけてくれた。 「本当に彼のことが好きなのか。好きならば具体的にどこが良いのか。彼との未来は明るいのか」 この言葉のお陰で立ち止まって考えることができた私は、後に彼の悪い噂を聞き幻滅

      • 【エッセイ】害悪ルーティン

        最近、執筆活動の進捗の悪さがふと気になった。 週末に何か予定があったわけでもないし、お盆を挟むので「コレくらいは進捗があるだろう」と想定してた目標に届かなかったのが原因だ。 「アイディア出しに詰まった」「表現がしっくりこないため何度も推敲を重ねて時間を費やした」といった理由ではなく、単純に執筆に当てる時間が少なかったのが理由だと自分で分かっている。 “人生において時間は有限で、その限りある時間をどう使うかが重要” 様々な本や動画で使われるセリフなので一度は聞いたことがあ

        • 【ショートショート】賢者の苦悩

          僕は何でも知っている。 そんな僕のことを皆は全知全能だと思っている。 「知明くん!『出目金』ってなんて読むかわかる?」 「それは『デメキン』と読みます。デメキンは金魚の一種で、大きな目が特徴です」 「へぇ!知明くんまだ四歳なのにすごいね!僕小学生なのにわかんなかったや」 四歳だからといって侮らないで欲しい。 生まれる前から英才教育を受けているので世の中の大抵のことは知っている。 漢字はもちろん計算もできるし、各国の言語だって知っている。 もちろん生まれたばかりの頃はコミ

        【エッセイ】ミニマリスト初心者

        マガジン

        • エッセイ集
          5本
        • ショートショート集
          8本
        • 短編集
          2本

        記事

          【ショートショート】常連とストーカー

          「お待たせいたしました。こちら『プロシュートとフレッシュバジルのペンネ』でございます。」 店内に流れるクラシカルなBGMによく馴染む声が静かに響く。 二十代後半と思われるカップルの間に置かれた本日のパスタは、低めの天井から吊るされた暖色のライトの下で美しく輝いている。 僕のアルバイト先であるこのお店は隠れ家風のイタリア料理屋だ。その雰囲気もあってカップル客が大半だが、お一人様も珍しくない。 二名掛けテーブルが四席と四名掛けテーブルが一席、そしてオープンキッチンの目の前には

          【ショートショート】常連とストーカー

          【エッセイ】成長と欲求

          あなたは『成長』という言葉にどのような印象を抱くだろうか? 「前向きな考え」「面接の志望動機」「意識が高そう」 いい意味で捉える人も悪い意味で捉える人もいると思うが、私は肯定的に捉えている。 むしろ肯定を超えて『人生のテーマ』としているくらいだ。 今回は私の人生のテーマにもなっている『成長』についての考えを綴っていく。 まず、私にとっての『成長』とは何かを定義しておく。 私の考える成長は、 過去の自分を振り返った時「あの時は未熟だったな」と思えることだ。 例えば、

          【エッセイ】成長と欲求

          【ショートショート】完全アウェイゲーム

          意識が朦朧とする。 ぼやけながらも、かろうじて耳に届くけたたましい歓声は倒れる寸前の僕を前に最高潮に達しているようだ。 汗も出ない程に身体から水分が干上がり、口の中は粘ついている。 強烈なライトに照らされて目の前の相手もよく見えない。 しかし、相手は恐らくピンピンしているだろう。 周りの歓声に後押しされるかのように、むしろ力を増しているのではないかと錯覚するほどだ。 「不利すぎるだろ...」 立っているのがやっとだった脚は痙攣を始めた。 手の感覚はとうにない。 も

          【ショートショート】完全アウェイゲーム

          【ショートショート】同窓会の奇襲

          「かんぱーい!」 厚めのガラスが景気よく重なる音がそこかしこに響く。 張本は手に持ったグラスの方に唇を近づけ、ぐっと煽る。冷たさと刺激が口から喉を通過し、胃にとどくのを感じる。 「ほんとに久しぶりだな、張本〜」 張本の前に座っていた小林が、中身が半分ほどになったグラスを机に置きながら話しかけてきた。 小林は中・高と同じサッカー部だったこともあり、比較的仲の良い友人だったが、高校を卒業してからは仕事が忙しく、連絡すらしていなかったことを思い出す。 「ああ、三年ぶりくらい

          【ショートショート】同窓会の奇襲

          【ショートショート】完成図のないパズル

          このパズルは普通のパズルと少し違う。 手元にあるピースはバラバラの1ピースだったり、既に組み立てられた塊だったりする。 完成図やパズルのフレームは無いので、最終的にどんな大きさで、どんなテーマをもっているものが出来上がるのかは予想もできない。 完成した完璧な状態のパズルを知ることができるのは、きっと作者だけだ。 ただ、好奇心だったり、ピースに映る絵柄だったり、その作者が好きという気持ちだったり、話題性だったりに惹かれて、思わずパズルを初めてしまう。 自分もその一人だ。

          【ショートショート】完成図のないパズル

          【エッセイ】コーヒーが教えてくれる

          コーヒーが好き。 胸を張って「コレが好きだ」と言えるようなものは多くない。 自分にとってのコーヒーはそんな数少ない好きの一つで、大切なものだ。 そんな「好き」が揺らいだ時期が一度だけある。 コーヒーにハマったのは去年の10月頃。 友人の家に遊びに行った時、ハンドドリップのセットが目に入り「淹れてみたい」と言ったのが始まり。 一緒に遊びに来ていた友人と自分でそれぞれ淹れることになった。 どちらもドリップに関する知識はほとんどゼロ。 友人は適当にドリップし、自分はネットの

          【エッセイ】コーヒーが教えてくれる

          【短編小説】リング・オブ・メモリー

          「やっと皆を苦しみから開放させてやれる...」 パソコンのディスプレイの明かりに照らされたその男の表情は、言葉とは裏腹に喜びや達成感といったものを感じさせない無機質なものだった。 湿った空気がまとわりつくような蒸し暑い夜。 目の前にある32インチのテレビではニュースが流れている。 それをラジオのように聴きながら、学校から課された宿題を片付ける。 「無意味な時間だ...価値ある勉強のためにこの時間を使いたい。」 そう呟きながら、PCに映し出された回答を紙に書き写していく

          【短編小説】リング・オブ・メモリー

          【エッセイ】ゲームセンターと露天風呂

          先日、親・祖父母孝行を兼ねて家族で旅行をした。 旅行先は、自分が小中学生の頃に家族と何度か訪れた場所で、いわゆる思い出の場所だった。 祖父母は足腰が悪いので、観光はせずホテルでのんびり過ごす予定を立てていた。 そのホテルも家族で何度も泊まったところで、今回は10年ぶりの訪問だった。 ホテルに着いて手続きを済ませ、部屋に入ると窓一面にオーションビューが広がる。 あの時見た景色が、今も変わらずそこにあった。 ただ、部屋の雰囲気や設備等は流石に年季が入っており、10年前と比

          【エッセイ】ゲームセンターと露天風呂

          【ショートショート】真っ赤な禁断の果実

          ほんの出来心だった。 初めて「それ」体験したのは、24歳の時。 友人の家に遊びに行った時のことだった──。 「お前もやってみるか?すげーハマるぜ。」 「俺はもう、これ無しじゃ生きていけない身体になっちまったからな。間違ってもあんまり摂取しすぎんなよ。」 友人はそう言って、俺に黒っぽい種のようなものを見せてきた。 「この種、今はこんな色だけど本当は真っ赤らしいぜ。本物を見れる機会はめったにねぇ。俺も写真でしか見たことねーしな。」 いつになく興奮気味に説明してくる。

          【ショートショート】真っ赤な禁断の果実

          【短編小説】自己像幻視

          意識だけは妙にハッキリしている。 体の感覚はない。 俺の目には見慣れない角度で地面が映っていて、数十メートル先にはフロントが少しへこんだ車が止まっている。 その車のライトが俺をあざ笑うかのように照らしてくる。 車から50代くらいの男性が顔面蒼白で出てくるのが見え、周りからは悲鳴や救急車を呼ぶ声が聞こえる。 「こんなあっけなく終わるのか...」 自分の状況を理解し、頭の中でつぶやく。 徐々に人だかりができ始め、その中にとても馴染みのある顔が見えた。 細身で長身、ボサ

          【短編小説】自己像幻視

          【ショートショート】本当の世界

          2030年、AI(人工知能)の発達にともない、VR(仮想現実)技術もさらなる成長を遂げた。 今やVR上に自分の好きな世界を形成し、自由に人や設定を加えることで現実と区別がつかなくなるほどのリアリティを誰でも体験できる時代だ。 より手軽にVRを楽しむために、VRグラスやコンタクトレンズ型のデバイスの開発が進む一方で、体験者がVRの世界に入り込めることを追求する企業が「Dream Dive」という製品を開発した。 この製品は脳波を読み取り、五感をコントロールすることでVRの世界

          【ショートショート】本当の世界