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小説「儚い」シリーズ

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文:家猫しろ、絵:助手くんの、ファンタジー短編小説シリーズ
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2015年5月の記事一覧

鍵束、それは儚い

鍵束、それは儚い

 カラン、コロン。
 店先で来客を示す真鍮の鐘が鳴った。
 入店した男は、腰に皮の袋をぶら下げたこそ泥だった。物腰を見ればだいたい客がどんな職業なのかくらい、わしにはすぐに見破れた。コソ泥が万引きでもしにきたか。こんな町外れの小さな、古びたわしの店にやってくるという事は、よほどせっぱつまっているのだろう。わしはそしらぬ顔をして、こそ泥の様子を仔細に監視した。

 わしは骨董品を扱う道具屋を営んでい

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