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先週の市場混乱はヘッジファンドにとっての好機だった:堅調な企業決算に楽観論が浮上(ゴールドマン・サックス)


 米国時間の8月8日(木)に収録されたゴールドマン・サックスのポッドキャストの参考訳です。8/5から始まった先週前半の市場の混乱が落ち着いた中での彼らの市場認識が示されています。
 混乱の中での機関投資家の行動や大型テック株への懸念、S&Pのこれまでの好調な決算を受けてポジティブな資金の流れについて語られています。 

[主なトピックス]

  • 先週の週初めのマーケットの混乱は、弱い雇用統計と製造業ISMが要因。くわえて円キャリートレードの巻き戻しが発生し、ボラティリティトレードが影響を受けて、レバレッジ型ETFやCTAの大きな売りが発生。更に200億ドル相当のS&Pの売りが発生

  • この市場の混乱を多くの機関投資家やヘッジファンドは、買いの機会として捉え、特に高品質なディフェンシブ銘柄に投資を行った

  • マグニフィセント7のフォワードPERは懸念材料。一方で、S&P500のEPS事前予想は9%だったが、85%の企業決算を終えた現在、11%と上振れによるハードル・クリア。楽観的な見通しながら、8月末の重要なAI関連企業(NVDA)の決算発表に注目。




(1)インタビュー


[ナターシャ・トアナ](ゴールドマン・サックス・リサーチ)

 まずは、金曜日(8/2)と月曜日(8/5)に何が起こったのかを振り返りましょう。市場は、弱い雇用統計を受けて大きく下落しました。これは景気後退への懸念が高まったことだけが原因なのでしょうか?それとも、テクニカルな要因が損失をさらに拡大させたのでしょうか?

[ジョン・フラッド](ゴールドマン・サックス)
 両方の要因が影響しました。8/2の雇用統計データは、ソフトランディングが実現できるかどうかについて投資家に不安を与えました。雇用統計と製造業ISMの指標がどちらも弱かったのです。その後、週末にかけて、円を売り、米ドルを買うというFXキャリートレードの巻き戻しによるリスク回避が強制的に行われました。さらに、週末の日本市場は1987年以来の最悪の一日となり、日曜日(8/4)の夜間取引ではトレーダーが急いでヘッジを買い始めました。
 日曜日の夜間取引では、VIX先物が名目で35倍もの取引量を記録しました。その結果、月曜日の朝にVIXが動いたことで、多くのボラティリティのショート取引が影響を受け、強制的にリスク回避されました。特にレバレッジ型ETFで連鎖反応が起きました。月曜日には約200億ドル相当のレバレッジ型ETFやCTA(コモディティ・トレーディング・アドバイザー)関連の売りが発生しました。市場が下落する中で、CTAのモメンタムがネガティブに転じたため、今週中にさらに200億ドル相当のS&Pの売りが必要となる状況が生まれました。

[ナターシャ・トアナ]
 つまり、景気後退への懸念から始まり、それがモメンタムの巻き戻しを引き起こしたということですね。

[ジョン・フラッド]
 その通りです。

[ナターシャ・トアナ]
 この極端なボラティリティの期間中、機関投資家たちはどのように行動してきたのでしょうか?

[ジョン・フラッド]
 秩序立っていて建設的な行動をとっています。当デスクがモニターしている資産運用会社や企業、ヘッジファンドなどは、今回の状況を買いの機会と捉えています。月曜日(8/5)に市場に極度のストレスの兆候が見られた際、ファンダメンタルに基づくロング・ショート戦略を採用するマネージャーにとっては非常に厳しい1日でした。
 当社のプライムブローカレッジデータによると、平均的なヘッジファンドは年初来のパフォーマンスで140ベーシスポイントの損失を出しました。
しかし、非常に楽観的に感じたのは、月曜日に過去5ヶ月で最も多くのヘッジファンドがロングの買いを行ったことです。パフォーマンスの痛みや多くの不確実性にもかかわらず、世界で最も優れた投資家たちがこの状況を買いのチャンスと捉え、特に高品質なディフェンシブ銘柄に投資しました。

[ナターシャ・トアナ]
 最近、テック大手にも多くの注目が集まっています。これらの株は過去数ヶ月間、市場を押し上げる原動力となっていましたが、直近の数セッションでは最大の下落を記録しています。この動きは、どの程度市場のローテーションの一環として捉えられるべきでしょうか?

[ジョン・フラッド]
 多くはローテーションの影響ですが、それだけではありません。メガキャップ株から小型株へと資金が移動するためには、金利が長期にわたって低く維持されると信じることが必要です。現在、多くの人がそれを信じています。金利がどれくらい引き下げられるかは議論の余地がありますが、間もなく引き下げが行われるでしょう。この低金利環境が、メガテック株から小型株へのローテーションを引き起こしています。
 しかし、3週間前よりも成長懸念が強まった今、特にマグニフィセント7のフォワードPERのギャップに対し投資家が不安を感じるようになっています。マグニフィセント7は27倍の予想PERで取引されていますが、残りの493銘柄は18倍です。成長懸念が高まっていなかった時期には、このギャップはそれほど心配されていませんでした。

[ナターシャ・トアナ]
 FRBについて具体的にお伺いしたいのですが、トレーダーたちは、まさにこれから大幅な利下げサイクルに突入する可能性が高いという事実に安心感を抱いていると思われますか?

[ジョン・フラッド]
 トレーダーたちは、(先々週の)2つの悪い成長データに対して、株式市場と金利市場が過剰反応していると考えているようです。現実的に考えると、今年中に25ベーシスポイントの利下げが3回行われると予想しています。

[ナターシャ・トアナ]
今から9月中旬のFOMCまでの間で、特に注目していることは何でしょうか?

[ジョン・フラッド]
注目しているのは、企業の決算です。今期は、S&P 500の企業利益が前年同期比で9%成長するという高い目標に対して懸念がありました。この9%という目標は、ここ数年で最も高い水準です。しかし、現在85%の企業が決算を発表しており、その成長率は11%に達しています。この非常に高いハードルがクリアされているため、私は引き続き楽観的です。
8月末には、AI関連の非常に重要な企業の決算発表が控えていますので、そこに注目しています。ただし、決算の状況が予想外に悪化し始めた場合は、懸念が生じると思います。

[ナターシャ・トアナ]
まとめると、市場の次の動きについての結論はどうお考えでしょうか?

[ジョン・フラッド]
(先週の)月曜日にVIXが65に達したのを目にしましたが、これは2008年11月の金融危機と2020年3月のCOVID-19のときだけに見られたレベルです。しかし、今回の状況はこれらとは異なると思います。確かに成長懸念があり、テクニカルな売り圧力がまだ解消されていないため、もうしばらく市場には揺れが続くでしょう。それでも、決算に対しては楽観的ですし、デスクで見ている資金の流れもポジティブです。私たちもクライアント同様に、これを堅実な買いの機会と捉えています。S&P 500に5%の調整が発生している時に買う戦略は、これまでも成功してきました。今回もそれが変わることはないと考えています。

[ナターシャ・トアナ]
本日は、お時間をいただきありがとうございました。



(2)オリジナル・コンテンツ

 オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。

Goldman Sachsチャネルより
(Original Published date : 2024/08/10 EST)

[出演]
 Goldman Sachs
  John Flood:
   Head of Americas Equities Sales Trading in Global Banking & Markets
  Natasha Tiwana:
   Research


以上です。


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だうじょん


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