写真はみんなで撮ればいい 「#月曜日に会いたい人展」を小学生と一緒に作ってみた
小学生たちと共に過ごした夏休みが終わった帰り道、ふと頭に浮かんだのは、なぜか夏目漱石「草枕」の冒頭だった。
理性だけで行動していたら他人と衝突する
感情を気遣ってばかりいると足をすくわれる
信念を貫くのも窮屈だ
そうだよね、漱石。
(あ、心の中の夏目漱石に呼びかけています)
・知識ばかりで人間味がない人
・感情が先走って振り回されている人
・目指す目標は素晴らしいんだけど、地に足ついていない人
いるよなー。たくさんいる。
写真撮影に例えたらこういうことかもしれない。
うん、いるよね。全部いる。
僕だってそうかもしれないし、この3つのバランスを取るのは難しい。
でもさ、違うんだよ漱石!
一緒にやったら分かると思うんだけど、バランスとかじゃなくて、小学生たちはここら辺を軽く飛び越えてくるのよ!
漱石が生きた昭和の時代は、「人の世は住みにくい」からこそ「詩が生れて、画が出来る」だったかもしれない。
でも小学生を見てたら、あれ?違うかも、と思ったんだよね。
まず、写真はある。
今はもう常に存在している。
だからこそ、令和を生きる僕たちは「(ちょっとだけ)人の世を住みやすくできる」と思ったんだなー。
夏休みの2ヶ月掛けて気づいたことだから、順番に説明していくね!
「#月曜日に会いたい人展」始動!
改めまして「月曜日に会いたい人をふやす」をテーマに活動をしているつぼけんです。
(↓過去の記事はこちら↓)
日常をちょっとだけ豊かにしてくれる人=月曜日に会いたい人を、どうやって増やそうか?といつも考えています。
VIVISTOP NITOBEというクリエイティブ空間のクルーである、やまろ(山内佑輔さん)のところに遊びに行ったところ、それなら一緒に写真展やろー!と10分で決まりまして、夏休みは写真展をやる企画が始動しました👏
その名も「#月曜日に会いたい人展」
有志の4人の小学生たちと一緒に、それぞれが思う「月曜日に会いたい人」の写真を撮って展覧会を作ろう!というものです。
ここからは、前述のVIVISTOPクルーやまろのリポートをベースにしながら振り返ってみようと思います。
↑ 流れはこちらの記事から転載 ↑
process1 | 写真を撮るってどういうことだ?
初回はまずはポートレート撮影体験!
「はい!笑って!」では、なかなかいい表情は撮れない。
でも「笑わせる」だけが、いい表情とは限らないよね。
では、「その人らしい表情」って、どうやって撮影すればいいのだろう。
撮影セットを使って、カメラマン体験をしてもらいました。
process2 | ”月曜日に会いたい人”って、なんだ?
「月曜日に会いたい人」ってどんな人だ??
家族よりも遠くて、でもアイドルよりも近くて。自分の人生を豊かにしてくれる人!?
みんなで書き出しながら、「月曜日に会いたい人」を探っていきます。
process3 | 撮ってみて、どうだった?
「実際に写真を撮りたいね!」とカメラを抱えて、それぞれ撮影に挑戦してみた1週間。撮影してみて再集合。
人に「撮らせて」とお願いするのがそもそも難しい、という話になりました。
「なんで、撮るの?」
「写真撮って、どうするの?」
これに、答えられるようにしたい。撮影させてってお願いしやすいようなものが欲しい。
「カードとか作ったらいいんじゃないのかな。」
この企画を説明するカードのアイデアをメンバーで持ち寄って、考えました。
process4 | さぁ、撮影してみよう!
カードも披露し、撮影の準備はOK?
写真展の日程も確認して、さぁ撮影いってらっしゃい!
8月5〜16日までの期間で、それそれがカメラをもって「月曜日に会いたい人」の撮影に挑戦しました。
process5|写真を語る・写真展をつくる
メンバーそれぞれが写真を撮影してきました。
「この人はだれ?」
「なんで月曜に会いたい人だと思ったの?」
ラジオ収録風にそれぞれの想いを語ってもらいました。
そして、「写真展をつくろう!」
ここに貼ったら、どうだろう?
キャプションはどうする?
ここは手書きで・・・大きさはこれくらい?
大人も子どもも一緒になって、手を動かして、アイデアをだして。
写真展を準備しました。
process6|写真展と振り返り
ついに開催「月曜日に会いたい人展」!
たくさんの人に見てもらいました。
「月曜日に会いたい人って、そういうことか!」
「みんないい表情しているね!」
「私もやってみたい!」
などなどたくさんの声をいただきました。
また、写真展の中で、メンバーと振り返り。
またもやラジオ収録形式で様々なテーマについてお話しました。
写真は一人で撮らなくたっていい
以上が、小学生たちと探究しまくった夏休みの思い出まとめです。
暑い中来てくれて、会えるだけでも嬉しいなー、ありがたいなーといつも思っていました(それだけ暑い夏でした。。)
いろんな学びや発見があり、書きたいことはたくさんあるんですが、1枚の写真に絞ってひとつだけエピソードを紹介させてください。
笑顔の女性・かなえさんが写っている写真。
小学生のAさんの作品です。
キャプションには「私にとって、あなたはともだちみたいな人」とあります。
その背景をちょっとAさんに聞いてみましょうか。
この企画が始まった初日に、たまたまお手伝いで来てくれたかなえさん。
Aさんは会った時から、楽しそうな人だしお友達になりたい!と思ったそうなんです。
ユニークなのはその撮影手法。
被写体は決まった。じゃあ、どう撮ろう?と思ったときに生まれたのは「プレゼント作戦」
かなえさんの似顔絵を描いて、プレゼントすることで表情を引き出そう!となったのでした。
もう一度写真を見てもらいたいんですけど、もちろん被写体はかなえさん。で、右端に写ってプレゼントしているのはAさん。
つまり、写真展の作品なのに自分で撮っていないんです!
マジかよ!!
最高じゃん!
実は、この作戦を仕掛けてくれたのはVIVISTOPクルーのやまろ(山内さん)
写真展に自分の作品を飾るとなったら、自分で撮るものだと思うじゃないですか。
でも、Aさんは写真で撮るよりもプレゼントがしたかった。
「じゃあプレゼントは任せるから、僕がそこを撮るね!」と提案してくれて、急造の写真撮影チームが結成された、というわけです。
大切なのは、かなえさんの本来持っているステキな魅力を引き出して写真に収めることであって、もはや誰が撮るかは重要ではない。
大人と子どもが協力して撮ることがその場のベストなら、話し合ってそうすればいい。新しい共創の形を見たようでした。
どうせ窮屈なら協力しようぜ!
ここで、冒頭の夏目漱石「草枕」を勝手に改変した、写真撮影版に戻りたいと思います。
謎に図解するとこんな感じでしょうか。
「どう撮る?」は知識・知恵の部分ですね。
カメラなど機材を選んで、光を読んで、写真としてのクオリティーを上げようとする働き。
「誰を撮る?」は正確には「誰のどんな魅力を撮る?」が正しい表現だと思うんですが、感受性など感情が伴う部分とします。
人物撮影の場合、ただシャッターを押せばいいわけではなく、被写体の魅力をどう理解して、コミュニケーションを通じてどう引き出していくか?が大切となります。
「なぜ撮る?」は、最終的な意思決定の部分。
今回の写真は何のために撮っているのか? 誰にどう感じてほしいのか?
撮影した後の未来まで見通せるか?が鍵となるのではないでしょうか。
スキルだけでは、カメラの性能テストをしているだけ。
魅力を引き出すのが上手くても写ってなかったら話にならない。
コンセプトばかり立派でも何も伝わらない。
どれか一つでは写真は成立しない、ということが分かると思います。
つまり、写真撮影に関して言えば、フォトグラファー自身の中にこの3要素が揃ってこそ「いい写真」と言えるかもしれません。
一方で、かなえさんを撮ったAさんたちの判断は全く違うわけです。
まず今回、「なぜ撮る?」はあらかじめコンセプトが言葉になっていました。
自分なりに向き合う必要はあるけど、そこまで悩む部分ではなかったかもしれません。
つまり問題は「どう撮る?」と「誰を撮る?」をどうクリアーするか?で、「誰を撮る?」を最大化させるために、「どう撮る?」は他の人と一緒に撮っちゃおう!というわけです。
考えてみれば「どう撮る?」のハードルってどんどん下がっていますよね。
大きな一眼レフカメラがなくても、スマホ一台あれば誰でもきれいな写真が撮れる。
さらに、自分でできないならば、できる人がやればいいんです。
「こんな表情を撮りたいから撮って欲しい」と協力を仰げばいい。
仲間がいるなら一人でやる必要なんてない!と知りました。
今回は写真撮影を例に出しましたけど、どんなことでも生きていれば角が立ち、流され、窮屈な思いをするもの。
デコボコの人間たちが自分勝手に生活していて、衝突しながら何とか成り立っているのが人間社会です。
それならば、一人でやらずに得意な人にお願いしたっていい。
今回教えてもらったのは、どうせ窮屈な世の中なら、みんなで協力して窮屈じゃなくすればいいんじゃない?ということでした。
この記事では主に1枚の写真を取り上げましたけど、それぞれにエピソードが詰まったステキな写真展になりました。
次はどんな驚きが待っているか楽しみ!
ご自身の中に「なぜ撮る?」がある方は、ぜひ一緒にコラボしましょー!
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