ホラーに挑む2022 第2回:映画『らせん』感想(と小説『ループ』などシリーズのその後の話)

第2回にして早くも前回書いたことを改めて実感でき、かつ今後への不安が高まりました。

実感できたのは「知る」ことで恐怖には対処し得るというくだり。小説『らせん』を何度か読んでいたおかげで今回の映画鑑賞はほとんど怖くありませんでした

映画『らせん』自体、前作である『リング』と比べてホラーテイストが薄めということもあるかもしれません。それにしても重要なシーンをほとんど小説『らせん』と変えていない脚本のおかげで、怖そうなシーンを予期することができ、あまり怖がらずに済みました。

逆にいえば今後、知らないホラー作品を観るときには予見できない恐怖に慄かねばならないということで、怖がりの僕としてはこの企画の今後が非常に危ぶまれるところです。

さて、小説『リング』がオカルト現象に対して論理で立ち向かう作品だとすれば、小説『らせん』は科学の世界にオカルトが侵食してくるような怖さのある作品です。この点に関しては映画版では尺の都合もあってか科学に関する解説が少なくなっているため、話がやや飛躍しているように感じられました。原作を知らない人が観て納得いくのかと思ってしまう程度には説明不足でしたね。

ただそれでも前作に続き、この映画『らせん』も脚本の改変は上手かったと思います。特に貞子受胎の経緯の変更は、科学に関する説明を減らしても直感的に分かりやすくなるようにされた良い改変だったと思います。

企画趣旨に関して怖くない映画だったため、あまり『らせん』に関しては書くことがありませんね。というわけで『リング』シリーズのその後についてをば少し。

原作小説において、オカルトホラーな『リング』、科学ホラーな『らせん』に続く『リング』シリーズの一応の完結編は『ループ』となっています。この作品はほぼ純然たるSF。貞子も一応話の肝になっているといえばいるのですが、出番は会話中で扱われる程度にしかありません。
『ループ』自体は非常に面白く、『リング』『らせん』の世界にとっての神のようなものまで登場するなど(ネタバレ回避のため詳しくは書きませんが)シリーズの世界観がひっくり返る壮大な作品になっています。

しかし『ループ』は小説であることを利用した叙述トリック的な要素もある都合上、映像化はかなり難しい作品です。(脚本を上手いこと変えないと成立しないでしょう)

それゆえか、小説『ループ』と映画『リング』『らせん』が公開された1998年の次の年、1999年には映画『リング2』が公開されました。
これは原作無しのオリジナル映画で『らせん』とはパラレルの関係。『らせん』ではない『リング』のその後を描いた作品らしく、ホラー作品としての『リング』の続編といえるようです。
当然、当企画では次にこの作品を観ることになります。

一方の小説『リング』シリーズでは映画『リング2』と同じ1999年に短編集『バースデイ』が刊行。短編集に収められた3編はそれぞれ、『らせん』の高野舞視点の話、シリーズで断片的に語られていた山村貞子の過去、『ループ』の後日談となっています。
このうち、山村貞子の過去編(つまり『リング』の前日譚)は『リング0 バースデイ』として翌年に映画化されます。

その後、ハリウッド映画化などしつつも沈黙を続けていた日本での『リング』シリーズは2012年に再始動。小説『エス』と名目上それを原作にした映画『貞子3D』が公開されます。

小説『エス』は時系列がハッキリしておらず、ファンの間でも意見の分かれる作品。僕は『バースデイ』(及び『ループ』のオチ)と少しパラレルな関係にある、『ループ』から『バースデイ』に行かなかった世界の話だと理解していますが、1回か2回しか読んでいないので、これもまた今後読み直す予定です。
映画『貞子3D』の方は映画『らせん』の後日談にあたるらしく、これも更にオリジナルの続編である『貞子3D2』と共に今後観ないといけませんね。ストーリー自体は小説『エス』とはほぼ無関係らしいです。

小説『エス』の続編である小説『タイド』は時系列的には『エス』の前日譚にあたるようで、これまでの世界観をまたひっくり返すようなとんでもない展開が待ち受けています。雰囲気としてはホラーというよりはオカルトアドベンチャーといったところか。

『タイド』も『エス』同様、一応『タイド』が原作扱いになっている映画『貞子』が公開されていますが、これももはや『タイド』とは関係ない作品らしいです。

そして小説の方は現在『タイド』の続編『ユビキタス』が執筆中。映画シリーズでは『貞子DX』の公開が発表されたばかりです。

そもそも原作小説『リング』時点では貞子は姿を現さなかったにも関わらず、良くも悪くも映画『リング』でテレビから這い出る貞子の姿が定着したせいで、もはや原作小説とは独立したアイコンとして世を闊歩している貞子。
しかし小説から乖離していると噂を聞いているだけで自分の目で確かめたわけではないですから、今後改めて小説を読みつつ、『リング2』『リング0 バースデイ』『貞子3D』『貞子3D2』『貞子』『貞子DX』と観ていかねばなりませんね。頑張れ僕。

第3回はこちらから!

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