ホラーに挑む2022 第7回:映画『新・死霊のはらわた』感想
邦題はこうですが、実際には本家『死霊のはらわた』とほぼ無関係な自主制作映画『新・死霊のはらわた』の感想です。
なぜ「ほぼ」無関係かと言えば、この作品には製作総指揮という形で本家『死霊のはらわた』シリーズの監督サム・ライミが関わっているからで。
これについて日本のレビューサイトや個人ブログ等にて「サム・ライミは撮影中にたまたま通りかかって声をかけただけ」とする噂が見られますが、これは下記の理由からデマだと考えられます。
まず自主制作映画だけあってか、海外サイトでも情報が乏しく、サム・ライミが製作総指揮だとしているソースがほとんどWikipediaと海外の映画情報サイトIMDbしかないという不確かな状況ではあります。しかしこの「サム・ライミは声をかけただけ」というエピソードについては映画の発信元である英語圏のサイトにはこれに該当する記述が見られません。このことから日本発祥のデマだと考えられます。
またサム・ライミが関わっていることを裏付けるもう1つの根拠として、本家『死霊のはらわた』シリーズで主人公を演じたブルース・キャンベルが本作『新・死霊のはらわた』の主人公と悪役の子分との声をアテレコしていることが挙げられます。
これについてはブルース・キャンベルの公式サイト(リンク先はWayback Machineから見られる過去ログ)でも役名は伏せられているものの確認できるので、ほぼ間違いないと思われます。
ブルース・キャンベルとサム・ライミは2人で映画を作り続けている間柄ですし、ブルース・キャンベルがこんな自主制作映画に声で出演している以上、サム・ライミも関わっているとしても何ら不自然ではありません。
とはいえ、サム・ライミが製作にガッツリ関わっているというわけではなく、どうやら『死霊のはらわたII』の売上の一部をこの映画に注いだ、という程度の関係性ではあるようです。
さてそんな『新・死霊のはらわた』は面白い映画かと聞かれるとかなり微妙なところ。自主制作映画だから役者陣が尽く棒読みなのは仕方ないにしても、そこに脚本の杜撰さも加わって非常に緊張感に欠ける映画になっています。
ホラー映画で緊張感が無いとはこれ如何に。
この映画はゾンビものなのですが、登場人物たちのゾンビに対する警戒心が異常に低く、不注意から次々とゾンビに噛まれてしまいます。ゾンビ退治の専門家なはずなのに。
ハザード中という世界観とこの緊張感の無さとのミスマッチが酷いです。
もしこの映画が『死霊のはらわたII』ほどのクオリティだったなら、そのミスマッチは狙ったものであって、コメディとして楽しめば良い映画なのだろうと理解できるところです。しかし『新・死霊のはらわた』は総じて低クオリティであるため、笑って観るべきなのか、真剣に作ってなお緊張感が足りなくなってしまったのかが分からない。
ただグロ表現は非常に凝って作られており、これには感心させられました。
例えば序盤のワンシーンである人物がうっかりゾンビに指を噛みちぎられます。ここまでならまあ誰でも思いつきそうなものですが、そのゾンビの首を即座に切り飛ばすと、ゾンビの生首の切断面から先ほど食いちぎった指がでろ~んとずり落ちてくるのです。この発想力にはビビりました。良く思いつくものだと。
映画全体を通して、ゾンビたちの演技も含めてそういったグロテスクなゾンビ映画を好きな人たちが好きなように作った映画だということはヒシヒシと伝わってきます。
そういう目で見れば、少しほっこりしながら観ることはできるかもしれませんね。
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