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ヒデちゃんのバットが飛んできた

三振したヒデちゃんのバットが
こっちに飛んできた

空振りしたヒデちゃんのバットが
こっちに飛んできた

フルスイングしたヒデちゃんのバットが
手から離れ、こっちに飛んできた

「あっ!」と誰かが言って
「あぶない!」って聞こえて
振り向いたときにはもう遅かった

スイングしたあとのポーズのまま
こっちを見るヒデちゃんと
回転しながら、もうすぐそこまで
飛んできてるバット

バットは僕の顔に当たり
僕はあまりの衝撃と痛さで倒れ
広場の砂の上を転げ回った

右目の上が大きく腫れ
次の日は学校を休んだ

学校を休んだ次の日
腫れた顔で登校すると
みんながワッと集まってきて
「大丈夫?」
「大丈夫?」と
心配してくれた

僕は恥ずかしさと
みんなが心配してくれる嬉しさで
涙が出てきた

「大丈夫?」って言われるたび
何度も何度も込み上げて
堪えるのに必死だった

僕とヒデちゃんは幼馴染みで親友
とっても仲が良かったから
僕はヒデちゃんの性格や癖まで
全部分かってた

スイングしたままのポーズで
こっちを見ていた君の表情

僕には分かるよ

あれは芝居だって…
僕を狙ったんだって…
ワザとだったって…

僕はどこかで君に嫌われ
君はずっと我慢してた

親友だと思っていたのは
きっと僕だけだったんだ





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