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La French Tech とは?進化を続けるフランスのスタートアップ

著:Daiki Yoshioka, Yukine Yanagawa 

皆様、フランスと聞くと何を思い浮かべますか。チーズやワインを思い浮かべる方々は多いのではないでしょうか。

フランスがチーズやワインなどで有名なのは事実ですが、フランスでスタートアップが急速に伸びている事をご存じでしょうか。(フランスのスタートアップエコシステムとしての進化や経路はこちらの記事をご覧ください)ユニコーンだけでも26社を保有するフランスは、世界的にもスタートアップ大国として認知されつつあります。

今回はフランスのユニコーン企業を日本で牽引しているリーダーの方々をパネルとしてお呼びし、国内で事業を展開する上で有利に働いた点や苦労した点を伺いました。

パネラーの自己紹介

ソフィー:La French Tech Tokyo代表のソフィー・メラリです。現在は、投資家として日本のスタートアップに投資をしています。フランスのスタートアップ企業が日本まで進出する事は素晴らしいと思いますし、これからもどんどん支援していきたいと思います。私の経歴ですが、マサチューセッツ工科大学 (MIT) からMBAを取得した後、現地のVCに就職しました。計3年間米国に滞在した後、昨年来日しました。

立脇:Exotechの立脇 竜です。弊社はフランスの26社のユニコーンの中で、5番目のユニコーンになります。実は工業部門で初めてユニコーンになった企業で、英語で「industrial unicorn」とも呼ばれています。

Exotechの業務内容について説明します。皆さん、Eコマース経由でお買い物をされる機会があると思います。購入ボタンをクリックした後、大きな倉庫が控えているのはご存じでしょうか。皆さんがオーダーした後、倉庫の中を人が走り回って皆さんのオーダーをピックアップして梱包します。Exotecはこのプロセスをロボットの力を使って完全自動化します。

しかし、我々はソリューションをただ売っている訳ではありません。倉庫の自動化を希望されているお客様へ、コンサルティングから導入、導入後のケアまで全部行っています。

倉庫の自動化はこれから市場規模が伸びると想定をされているので、これからExotecの名前とソリューションを見る機会はどんどん増えると思います。(グローバルインフォメーションによると、自動倉庫のグローバル市場規模は毎年9.2%の規模で拡大しています)

私のバックグラウンドですが、Exotecには今年の5月に入社をしました。現在はManaging Directorとして日本での事業を牽引しています。その前はアメリカの企業に在籍をし、その前は12年ほどドイツに在住していました。

西谷:デンタルモニタリングの西谷 博幸と申します。2ヶ月前にデンタルモニタリングに入社し、日本法人を設立しました。今月10月に国内販売を開始する予定で、現在準備を進めています。

デンタルモニタリングは人工知能 (AI) を利用して歯科矯正の患者様の進行状態をリアルタイムでモニタリングします。それを分析してドクターに報告をするソリューションです。

具体的に説明しますと、デンタルモニタリングをお使いの患者の皆さんは、ご自身のスマホのカメラを使い、ご自身の歯列を撮り、デンタルモニタリングのプラットフォームにアップロードします。プラットフォームに送られたデータはフランスのAI(人工知能)と医師により分析され、日本の主治医へとデータが送られます。

日本の主治医が遠隔的に患者の歯列矯正の進捗を見る事が出来、適切な通院タイミングの指示が可能になります。結果的に、患者さんの通院負担ががくりと減ります。

例えばアライナー矯正の場合、通院頻度は6週間に1回程度です。ワイヤー矯正の場合も通院頻度は4週間に1回程度が一般的です。デンタルモニタリングを使用する事により、今まで6週間に1回と言われていた通院頻度が半年に1回程度に減ります。

週に1回歯列をスキャンしてデータをアップロードしていただだけで、あたかも毎週通院をしているかのように、事細かく歯列矯正を行えるメリットがあります。ドクターにとっても、患者さんが本当に必要な時だけ通院する事になりますので無駄が省け、より多くの患者さんの治療に専念いただける画期的なシステムです。

私の経歴ですが、元々は北米・EU圏発の医療ハイテック・スタートアップ企業を国内で展開しておりました。前職は歯科のスキャナーなどの医療機器を扱っておりました。事業後に退職をして妻とバンドを組んで、ロックバンドをやっていたんですけれども、あることからデンタルモニタリングから連絡が入りました。

すごく画期的なシステムだと思いまして、「これをやってみたい」というお話しをしたところ、日本で事業を展開をするという形で入社しました。

福田:Meero Japanの福田 強史と申します。26社あるフランスのユニコーンの中でも4番目にユニコーンになったのがMeeroです。

業務内容について — 皆さん、シェアリングエコノミーを聞いた事はおありでしょうか。AirBnbなど、持っている人と欲しい人のマッチングや、スキルを持っている人と必要な人をマッチングするサービスの事です。

Meeroが何をマッチングさせているのかというと、カメラマンと写真が欲しい企業をマッチングさせています。

例をあげます。最近はコロナ禍の影響もあり、出前館やUber Eatsなどデリバリーフードが盛んになりました。デリバリーフードのアプリにはレストランと食べ物の写真が掲載されています。これらの写真ですが、実はオーダーを左右するとてもパワフルなツールなのです。

かつてデリバリーフードサービスの企業がレストランの写真を用意する際、レストラン側の日程を聞いた後、その日程で写真を撮れる人を探さなければなりませんでした。このプロセスを一軒一軒、個々で写真の撮影を行ってました。

しかし、デリバリーフードサービスに加入をしているレストランは非常に多いです。例えば、Uberさんは毎日、全国何百件と写真撮影を行います。
Meeroを使うと、このプロセスが楽になります。例えば、「福田中華店・明後日・15枚」とオーダーを出すと、裏方は全部我々が請け負います。写真が撮れる人に、「この写真の案件がありますよ」と伝えます。そうすると「やります」と引き受けてくれる人が現れます。

写真撮影の後の画像加工も我々が請け負います。これもMeeroがユニコーンとして評価をされる要因の一つですが、写真というのは撮った後も編集に時間がかかります。これを、実はAIを使用してやっています。

なので、ビジネスモデルとしては「シェアリングエコノミー」+「AI」というイメージです。

企業にとって、写真のイメージは非常に大事です。福笑いとも呼ばれていますが、写真が暗かったり明るすぎたりすると、売上に直結します。(写真の見かけが綺麗に揃ってないと見づらいですよね。)これを裏方でサポートするのが我々です。

2016年にフランスで設立され、2019年に日本法人が出来ました。まだ会社としては若いですが、国内のフードデリバリー業界は、ほぼMeeroのサービスを使用をしています。

私の経歴について紹介をすると、IT業界出身です。外資系のソフトウェア・ハードウェア企業の日本法人に在籍しておりました。

国内の事業展開で苦労した点

ソフィー:数ヶ月前、La French Tech Tokyo主導で国内在住の外国人起業家約50人に向けてアンケート行いました。日本で事業を展開する上で一番の課題として上がったのは、マーケティングと新規顧客獲得でした。

2番目の課題として上がったのは、B2Bの営業力。文化の違いが大きい様です。3番目に採用が挙がり、4番目に資金調達が挙がりました。5番目にビザの取得や会社の設立などが挙がり、日本での企業設立の難しさが伺えます。
登壇者の皆様、この結果を鑑みていかがでしょうか。

立脇:このサーベイの結果ですが、我々が正に苦労をしている事が含まれています。特に営業やマーケティングですね。幸い、展示会などで我々のシステムを見ていただくと様々な方に興味を持っていただけます。なので、見込み客は取得しやすいのです。

しかし、日本のビジネス環境を考慮すると、いわゆる現場の人たちが興味も持っていただいても、我々のシステム規模だとビジネスに繋がるまで3–4年間ほどかかってしまいます。それだとユニコーンの伸びるスピードと乖離してしまいます。

我々の現在のアプローチとしては、出来るだけ意思決定に近い方々に会います。フランス商工会議所のネットワークなど、ネットワーキングイベントは非常に心強いです。実際、意思決定者とのコネクションをネットワーキングイベント経由で以前から築いてきました。

フランス企業はネットワーキングに対してオープンなイメージがあります。ドイツのお話を少しすると、ドイツも商工会議所もありますし様々なネットワークがあります。

しかし、企業の意思決定者が参加するネットワークというのはあまり多くないのが現状です。(控え目にビジネスを行う風潮があり、ネットワーキングの場所の総数が少ないのです)

フランス発のスタートアップという切り口から見ると、皆さんの垣根が低いというか、オープンにコミュニケーションを取ることができます。

本日のイベントしかり、名刺交換もできる上、「繋がりそうだね」となるとそこから話がとても早く進みます。そこは非常に素晴らしいと感じますし、我々もどんどん活用していきたいと思います。

福田:日本法人をオープンした事が非常に大変でした。オープン後に新規顧客獲得をする際、二つのアプローチがありました。

一つ目に、Meeroのサービスを他の国で使用をしていた・或いは既に類似サービスを使用していてMeeroのビジネスモデルに知見がある企業に営業をかけるアプローチです。

例えば、Uber社。Uber社は他の国でもMeeroを使用をしていたので、日本でMeeroがあれば使ってみようと前向きに検討していただきました。

その他サービスを国内で使っていた企業もありましたが、社内で普及しなかったり、カメラマンを見つける手間が多かったり、写真の質がバラバラだったり、様々なペインポイントがありました。

グローバルでの存在感をうまく使用しながら、顧客を獲得しました。これが一つ目のアプローチです。

二つ目に、伝統的な日本企業に売り込むアプローチ。これが一番ハードルが高かったです。情報をいい塩梅で共有しないと経営者と現場のBuy-inを両方得られないため、サンドイッチ型で両方にバランスを取って提案をしっかりしていきました。

丁寧に時間をかけるのも大切です。日本の企業はやはり保守的なので知らない企業とお付き合いされるのを嫌がる傾向にあります。

「Meeroって誰ですか。」みたいな。でも知らないとあえて「ありがとうございます」と声をかけてしまいます。

有名になる前に購入判断をされるとなんとなく嬉しくなりますよね。これから成長するテクノロジーやブランドをいち早く知ってもらってありがとうございます、と知名度の低い現状を逆手に取ってます。

西谷:デンタルモニタリングは、本社の日本法人に対する期待値が非常に高いです。なぜかというと、歯科医師の方が大変多いからです。

クリニックの数だけでも、国内では6万6千軒あります。コンビニエンスストアと同じくらい、国内では歯科クリニックが存在します。

ところが、大概の問題・我々が苦労をしている点は「デジタル化の遅れ」です。特に歯科矯正は、ワイヤーを曲げたりだとか、アナログの世界です。
しかし、デジタル化が一定なされていないと、我々の仕事が出来なくなってしまいます。

前職はデンマーク系の企業におりましたが、やはり日本はデジタル化の進みが遅いです。欧米は30%デジタル化されている中、国内では10%しかデジタル化されていない。私の業界の中での一番の課題は、デジタル化がなされていない事です。

有利に働いた点

日本で事業を展開する上で、有利に働いた点はどんな事がありますか。
西谷:デンタルモニタリングはまだ国内販売を正式に初めておりません(9月当時)。

しかし、国内の先生方でも技術的に進んでいる方々は多くいらっしゃって、ドクターの個人輸入で使われている先生もいらっしゃいます。

その他、フランス発のスタートアップはとても革新的です。ビジネスモデル自体が革新的であると競合企業が少ない現状もあります。

国内のデジタル化など、展開をする市場に問題がある事もありますが、本当にビジネスモデルが良ければ、フランス企業は競合生が高いと言えます。

福田:私はシリコンバレー系のIT業界に以前おり、IT企業というとアメリカというイメージが強く、ユーザーも同じような印象を抱えている傾向が強かったです。

しかし、フレンチテック、要は「フランス内でスタートアップの数が多くなっていてこれから変わっていく事」を話すとマーケットに興味を持ってもらえます。逆にアメリカの企業にいた際、シリコンバレーの企業と説明をすると、「one of them」 と捉えられてしまいがちでした。

フランスという国はブランドやファッションなどの認知度が高いと思います。しかし、実はテクノロジー方面でも認知度が高まってきていて、「その中の一つの企業なんですよ」と説明をすると、「フランスにもそういう側面があるんだ」と興味を持ってもらえます。

知名度の成長をアドバンテージに取れる、という事です。実際、フランスを前に出してテクノロジーを売る場面は多いです。

立脇:フランスという国のイメージが日本で非常に良いです。特に、品質に対する評価はかなり高いイメージです。

なので、「100%フランスでロボットを作っています」と説明すると良い意味で驚かれます。海外産の部品等を使用せず、可能な限りフランス産の物を重視して作っていますというと非常に評価されます。

それが世界中に広まり、ユニクロ社など大企業がクライアントになります。そうなると、お客様の信頼感がより高くなります。「実は今まで知らなかったんだけど、フランスってテクノロジーの国なんだって」と広まっていきます。

知名度は高くないものの、フランス産はある一定の評価があるので、非常にビジネスがしやすいと思います。

まとめ

パネラーの方々のご意見を伺った後、パネラーの方々で質疑応答があり、その後ご来場された方々にも質疑応答をいただきました(後日公開予定)

フランスのスタートアップ事情や国内のフランス企業についてご興味のある方、是非次回以降のイベントにご参加ください。(約3ヶ月ベースでパネルディスカッション形式のイベントを開催しております)お待ちしております!


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