パリ13区

久し振りに一人で映画を観た。フランス映画「パリ3区」。
1日に1回しか上映されない上に、朝8:15の開始のみ、ときたら空いているに決まっている。
予想通り、時間ぎりぎりに入っても座席は1/3も埋まっていなかった。
これからこの映画を観ようという方は、ストーリーに触れるのでそれを記しておこう。

さて、主人公は20代前半の台湾出身のエイミーと長身のアフリカ系の男性カミーユ。
またもう一人、その二人に重なる形で30代のスレンダーなフランス人女性のノラ。

3人とも頭がよいのに仕事、というより人生が不安定であり、それを補うかのように恋愛には奔放である。

難解な映画だという人もいたが、私は不安定な20代、職業が定まらない30代をおくったせいか共感する部分があり印象深い映画のひとつとなった。

エイミーは姉から「パーソナル障害」と言われるが、私は違うと思う。
もともとピアノやバレエを習う裕福な家庭出身であり、熱心に勉強して大学も卒業しているのに運がないのだ。
低賃金な仕事しか見つからず、あげくにドラッグにまで手をだして迷走している。

そんな荒れた生活の中でも老人施設で孤独に生きる祖母を見舞い、伸びた髪を整えてあげる思いやりある娘だ。しかしそこでも、エイミーは悲しい事実に直面する。

私はエイミーの屈折した態度、品のない言葉遣いは自身の運のなさからくる、また社会への腹立たしさか起因していると思う。
2年前に観た「パラサイト家族」(韓国映画)の中で、
こんなセリフがある。
「あの人たちは裕福だからいい人になれるのさ。」と。

最後はハッピーエンド。屈折したエイミーも人生に失望し傷ついたノラにも、支えてくれる相手が現われる。

映画館を出た後、心も軽く美味しいコーヒーが飲みたくなった。



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