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夢日記『暗がりの男』2023/3/5

廊下の端に男がいる。暗がりに沈むまだらのタイルの床の果てに、その黒い影法師が伸びている。
男は影が溶けて根を生やしたような風体で、そこに立っている。温度のない足音。等間隔で天井の梁にこだまする。
男が近づいてくる。一歩、また一歩。異質なまでに揺らめく首。木偶のように動かぬ脚をお前は呪う。湿った呼気がお前の唇に触れる。ぬるい酩酊。
視界が覆われ、そしてようやく、お前は黒々とした山高帽の下を知る。

そこには何も無かった。物質と呼べるようなものは、何も。だが、虚はお前を眼差すと、お前はたしかに知っていた。

男は見ている、ただ、お前を。

夢日記  2023年3月5日

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