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体と薬と健康と・・・第5話 腸活

~腸と細菌の話~

健康コラム『読み物サプリ』。
第5回目は、多くの方が興味を持たれている「腸活」について。
前編・後編でお話しさせていただきます。前編は「細菌」についてです。

私たちの腸内には、「善玉菌」「悪玉菌」とよばれるような「細菌」がいることはご存知だと思います。
ではそもそも「細菌」というのはどんなものなのか。「ウィルス」と比較してみましょう。

「細菌」と「ウィルス」の違いは?

「細菌」は栄養があれば、自ら成長したり、増えたりすることができる”自己複製能力”を持った微生物です。そのため、栄養源と水があり、適切な環境のもとであれば、生きた細胞がなくても自分自身で増殖していくことができるのです。
これに対し「ウィルス」は、栄養や水などがあったとしても、栄養を摂取して自ら成長するといったことが出来ないので、単独では生きていくことが出来ず、自分自身で増殖する能力もないため、他生物の生きた細胞の中でしか増殖できません。他の生物に寄宿してはじめて自己複製することができるのです。
つまりウィルスは、生物の生きた細胞に感染し、細胞を死滅させ、また新しい細胞に感染していく・・・これを繰り返すことで増殖し、生き延びていくのがウィルス感染の怖さでもあります。

ちなみに・・・

ヒトの「細胞」、「細菌」、「ウィルス」の大きさの違いは?

ヒトの細胞は、約0.01㎜。
細菌は、約0.001㎜。
ウィルスは、約0.0001㎜。
すべてに適合するわけではありませんが、ざっくりと比率で知っておくといいですよ。
ヒトの細胞:細菌:ウィルス=100:10:1
大きさのイメージとしてはキーホルダーに使われている「ボールチェーン」の一粒が「ウィルス」サイズとしたら、「細胞」は「バレーボール」サイズのイメージです。

話がかなりそれてしまいましたので、「細菌」の話に戻しましょう。

私たちの体には通常、細菌は住みついてるでしょうか?

実は、私たちヒトのカラダには、膨大な数の細菌が住み着いています。
ヒトの皮膚、口腔(口の中)、鼻腔、上気道、呼吸器系、胃や腸管などの消化器系、さらに膀胱、尿道などの泌尿器系や子宮や膣などにも広く生息しています。
えっ!と思うかもしれませんが、実はそうなんです。
このように常時住みついている細菌を「常在菌(じょうざいきん)」といいます。菌の種類や数、構成比などは部位によって異なり、それぞれの菌が各部位で特徴的な細胞の集団を形成して私たちの健康に関与しています。
例えば皮膚にいる常在菌は、外部の刺激や細菌から肌を守ったり、皮膚のバリア機能を保ったりする働きを持っています。
ですから、あまり除菌・除菌と徹底しすぎるのも、逆に抵抗力を低下させてしまう恐れがあるので、注意しなければいけません。

除菌のしすぎもご注意!

ではここからは本題の「腸内細菌」についてです。

ヒトの「腸内細菌」ってどれくらいいると思いますか?

腸内には、約1,000種類以上、100兆個を超える細菌が住みついています
重さにすると何と1~1.5㎏にもなるそうです。
ヒトのカラダの最大の臓器といわれる「肝臓」の重さが約1~1.5㎏(体重の約50分の1)ですから、腸内細菌の重さは、肝臓と同じくらいの重さがあると思ってください。
自分の体重の1~1.5㎏が腸内細菌とは驚きですよね!
ヒトを構成する細胞の数は約37兆個と推定されています。(昔は、60兆個と言われていたのですが、最近では37兆個といわれています)ヒトを構成する細胞よりもはるかに上回る数の腸内細菌がヒトと共生しているのです。

「腸内細菌」はどのようなバランスで生息していると思いますか?

腸内の常在菌はまず、ヒトのカラダに有益な働きをする「善玉菌」
ビタミンの合成や消化吸収の補助、感染防御、免疫刺激などの働きがあり、皆さん良くご存知の「乳酸菌」や「ビフィズス菌」などがあります。

次に、ヒトのカラダにとっては望ましくない影響を与える「悪玉菌」
これらの悪玉菌は、腸内腐敗、細菌毒素の産生、発がん物質の産生やガスの発生など、望ましくない影響を与える菌で「ブドウ菌」「ウェルシュ菌」「大腸菌(有毒株)」などがあります。

3つ目として、ヒトのカラダの状態によって、有益にも有害にもはたらく「日和見菌(ひよりみきん)」
カラダが健康な時はおとなしくしていますが、カラダが弱ったりすると、腸内でカラダにとって悪いはたらきをします。「大腸菌(無毒株)」「連鎖球菌」などがあります。

菌は3種類

これらの菌は互いに密接に関わりながら、腸内でまるでお花畑の植物の群生のように住み着いているので、その様子から腸内の細菌叢を「腸内フローラ(お花畑)」と表現されています。皆さんも、耳にしたことがあるのではないでしょうか。
そしてこの「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」のバランスは
「善玉菌」:「悪玉菌」:「日和見菌」=2:1:7
で存在するのが理想的とされています。

お花畑のように

このように「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」が関連し合って生息している腸内ですが、皆さんはこんな言葉を聞いたことはありますか?

「腸は第2の脳」・・・!?

実は、「腸」には、「脳」に次いで多い、1億以上の神経細胞があるとされています。なんとこの数は「脊髄」や「末梢神経」よりも多く、「脳」とは独立して、脳からの信号を待つことなく消化・吸収・排泄などの重要な機能を果たしています。
しかもそれどころか、腸には「迷走神経」という太くて大きな神経が埋め込まれていて、その神経線維のおよそ90%が「腸」から「脳」へと情報を運んでいることが明らかになってきています。
それくらい「腸」はすごいんです!

ちなみにですが「第六感」といって、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚の五感ではない感覚をいう言葉があります。
この「第六感」を英語で言うと「gut feeling」といいますが「gut」というのは「腸」のことですから、腸で感じたもの・ことを「第六感」としていることは興味深いことですよね。

また腸には、とてもたくさんの免疫に関する細胞「免疫細胞」があります。ではここで今回最後の質問。

腸には、体内の何%くらいの「免疫細胞」があるでしょうか?

実は、約70%もの「免疫細胞」が「腸」にはあるとされています。(免疫細胞の約50%は「小腸」に、約20%は「大腸」に存在するといわれています)

実はこの「免疫細胞」は、「腸内細菌」のバランスがよい状態だと活性化され、病原体と戦う抗体が効率よく生み出されるようになり、免疫の調整機能もよく働くようになるのです。
そういう意味でも、「腸活」は重要なのです。次回の読み物サプリでは「腸活」をテーマにしますので、お楽しみに。


いかがでしたでしょうか?
少し細かすぎる話もあったかと思いますが、「腸活」の話の前に「細菌」のことや、「腸と腸内細菌」のことを簡単に知っておいていただきたいと思い、お話しさせていただきました。

では次回は「腸活」の話です。

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▼執筆している薬剤師


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