生と死の狭間に見えた光明(インド6)
2016年12月29日(5日目)
「ドンドンドン!」
ドアのノックで起床。
眠い目をこすりながらドアを開けるとホテルのおっさんがいた。
「コピーをとるからパスポートをよこせ」と言う。
怪しい。
パスポートは闇市で売れば良い値段になる。特に日本人のパスポートは高値で取引される。
"パスポートを奪われるのではないか?"
という疑念が俺の頭をよぎった。
パスポートを渡して俺たちはおっさんについていくことに。
万が一の場合、警察に届け出るため彼の写真を撮る。
シャッター音を出したくないので当時流行っていた「盛れる」カメラアプリ『snow』で盗撮。
おっさん、少し盛れてしまったかもしれない。
結論的に、このパスポート盗難事件は杞憂に終わった。
そんなことより。
本日の予定はタージマハルの対岸(マターブバーグ)を観光し、その後バラナシ(ガンジス川で有名な街)行きのバスに乗ること。
マターブバーグにはインド皇帝の墓があり、そこから見える、対岸にあるタージマハルは絶景らしいとのこと。
まず、マターブバーグに訪れる。
しかし、いつものごとく問題発生。
駿太郎が「やべえ、もれる」と。
トイレを探す。
しかし周囲にトイレはない。
残された選択肢は1つ。
野糞。
ただ、駿太郎は今まで外で用を足したことが人生で1度も無い。
インドへ来てもずっとトイレを使用していた。
しかし今回はやむを得ない。
マターブバーグには棒を持った警備員がいるため、彼らの死角にはいって事を成すことに。
初めての野糞がタージマハル(世界遺産)を眺めながら。
なんと贅沢なことよ…。
マターブバーグをでると子供達が群がってきた。
物売りだ。とてもしつこい。
すると俺のリュックについていたカラビナを指差し「How much?」と言ってきました。
なんと俺のカラビナを欲しがったのだ。
驚いた。
今まで買う側だった俺が、インド人に物を売る側になるのは非常に新鮮な気持ちだった。
また、金銭的にも厳しかったし、いらないものは売りつけて金にかえたかったという事情もある。
結局、カラビナ3つの他にネックピロー(空気で膨らます枕)を売ることに成功し、マターブバーグを後にした。
次の目的地はバラナシ。バスに乗って長距離移動をする。
ところで、インドへ行くと腹をこわす、体調を崩す、という話をよく耳にする。
インドでの生活を楽しんでいる俺たちだが、とうとう体に異変が起きはじめる。
まずは篠原と駿太郎だ。
数日前から腹が痛いと訴えていたが、今日になって症状が悪化し、ひどい寒気も感じるらしい。
持ち合わせの服だけでは寒いので衣服を買うことに。
服屋のインド人は2人の弱みにつけこんで法外な値段で売りつけてきました。しかし買うしかない。
買った服をまとってバラナシ行きのバス停へ。
バス停の前には休憩所があったのでそこに入る。
休憩所には、屋根と壁はあるがドアがなく、容赦なく風が吹きつけてくる。
そしていっこうにバスは来ない。日本と違い、インドの公共交通機関は時間にルーズなのだ。
時刻は夜11時。
インドって、暖かそうなイメージがあるけど、冬のインドは寒い。
日中は気温13度くらいですが、夜11時ともなると気温は1桁。
俺は、今まで体調に異変は感じていなかったが、この寒さと乾燥で喉をやられた。
寒いし腹も減る。喉が痛い。バスはこない。
地獄だ。
他にもバス待ちと思われるおっさん達がいた。
見た目が怖いし、危険そうなので関わらないようにしていた。
横目で見ると、彼らは焚き火で温まっていた。
羨ましそうにうっとり見ていると「こっちきな」と。
なんて優しいんだインド人。感動が止まらない。こわいのは見た目だけだった。
「China?」
「No,Japan」
「Oh!ペラペラペーラ、ペラペーラ」
「あー、えっとー………。」
(苦笑い)
インドの公用語はヒンドゥー語。英語は準公用語ではあるが、話せない人が多い。
ヒンドゥー語がわからないため、残念ながらこれで会話は終わった。
しかし、彼らの優しさは俺たちの体だけでなく心もぽかぽかにしてくれた。
次回より「インドバックパッカー地獄編」突入!
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