見出し画像

【イベントレポート】自分らしさを実現する働き方改革.vol2 ~自分のため、子供のため、家族のための第一歩~

LivingAnywhere Commonsでは、「自分らしくを、もっと自由に。」というスローガンを題材に、自分らしい働き方を実践する方々を招いたトークセッションを開催しています。

2019年12月8日にLIFULL HUBにて開催した第2回は、「自分のため、子供のため、家族のための第一歩」。ゲストスピーカーは、ランサーズ株式会社の篠原智美氏、複業マッチングサイト「CIRCULATION LIFE」ファウンダーで編集者の水野綾子氏をお招きしました。

2人は家族との暮らし方、自分らしい働き方を模索し、それぞれ長野と熱海で2拠点生活を送っています。セミナーでは、2人に移住を決めたきっかけやキャリア形成、家族とのコミュニケーションなどをお話しいただきました。

また、今回のイベントでは会場横にキッズスペースを用意。イベント後にはお子様が参加できるワークショップも実施しました。

長野と東京、熱海と東京の2拠点生活

星 久美子(以下、星):
私はLivingAnywhere Commons事業を担当する、株式会社LIFULLの星と申します。現在、地方には空き家が全国的な問題となっています。これらを活用して新しい働き方、生き方が実践できる場所づくりのための物件の掘り起こしや、活用の担い手の育成をこういう形で運営しています。

私たちのLivingAnywhere Commonsは、全国にシェアサテライトオフィスと宿泊ができる場所を、5年間で全国100拠点作る計画を立てています。現在(2019年12月時点)はまだ2拠点ですが、2020年度中に10拠点のオープンを目指してプロジェクトを進めている最中です。

画像1

私たちのプロジェクトのように、現在は2拠点・多拠点など、働き方が多様化しています。インターネットの発達で、どこでも仕事ができるような時代になり、「ライフスタイルを変えたい」「働き方・暮らし方」を変えたいという方々も少なくありません。

働き方や暮らし方を変える上で、家族の方々とどう向き合い、ライフスタイルを変革させていくのか。私たちはこうしたテーマについて、定期的にトークセッションを開催しています。そして今回、ランサーズ株式会社の篠原さん、CIRCULATION LIFEの水野さんにそれぞれお越しいただきました。まずは、それぞれ自己紹介をお願いいたします。

画像2

篠原 智美氏(以下、篠原):
ランサーズで地方創生を担当する篠原です。私は個人的に、「ライフイベントを楽しみながら、働く世界を作る」というライフミッションを目指しています。どちらかというとワーカホリックなタイプで、大学時代からひたすら働きたいと思っていました。その時、どんなライフイベントがあっても、誰もが楽しく働き続けられる世界を作れたらいいなと思い、このミッションを抱くようになりました。

新卒では地域の雇用改善に貢献したいと、地元の銀行に入行します。そして人材会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア)に移り、新サービス「DODA」の立ち上げに関わりました。その後、さまざまな事業を立ち上げながら、現在はフリーランスを支援するランサーズに在籍しています。

家族構成は夫と息子の3人で、夫の転勤をきっかけに、2019年7月に長野へ移住しました。月の6割は長野、それ以外は東京と地方を行ったり来たりという毎日です。移住から半年経ちましたが、まだまだ課題が山積みというところです。そんな実感も踏まえてお話しできればと思います。

画像3

水野 綾子氏(以下、水野):
私は、編集業を生業としています。新卒で出版社に入社し雑誌の編集者を経て、現在はWebコンテンツの企画編集や人や企業のPR戦略事業などに携わっています。家族構成は夫と娘2人、息子1人の5人で、2017年4月に家族全員で熱海へUターンをしました。

熱海は観光のイメージが強いかと思いますが、新幹線で品川まで約40分と、意外と近いんです。毎日1,000人弱が東京へ通っており、私自身行き来するなかで、「働き方」や「暮らし」といった、観光以外の可能性がたくさんあるんじゃないかと思うようになりました。そこで、熱海の新しい価値を模索したいと動くなかで、熱海の企業と首都圏のビジネスパーソンの方々を、複業という形でつなぐかたちに可能性を感じ、「CIRCULATION LIFE」を今年の夏頃から運営しはじめました。

Uターンを決めたのには、いくつか理由があります。まずは子育て環境。夫は岐阜出身で私は熱海出身でということで、やっぱり自然の中で育てたいという思いがありました。あとは、東京1拠点生活への違和感。このまま東京に住まいを構え、ずっと同じように働き、同じように暮らすことに漠然とした不安感があったんです。そして、2014年に父が体を壊したのが、移住への大きなきっかけとなりました。私の実家はお寺で、私は3姉妹の長女でしたが、改めて実家を継ぐという問題に向き合うことになったんです。

すると、本来の地域コミュニティのハブという役目を持っていた、お寺の面白さを再認識するようになりまして。お寺を現代に合った形にアップデートしたい。誰かにお願いせず、自分でやろうと決意しました。

ちょうど2014年はデュアルライフという言葉が生まれたり、地方移住という選択肢も浸透しつつある時期でした。しかし当時は、既存の仕事や生活を一変させて、引っ越すというスタイルが中心だったと思います。私はそうではなく、東京での仕事も好きでしたし、リセットするような移住はしたくなかったんですね。これまで築いたものを活かしながら、徐々に移行できないかと考えました。熱海と東京の距離感だったら、それもできると思ったんです。実際に熱海と東京を行き来する中で、自分のキャリアやライフスタイルの可能性が、ものすごく広がったと実感しています。

会社との話し合いをどう進めたのか

星:
それでは早速、トークセッションに入りましょう。お二人はそれぞれ、2拠点生活をされていますが、移住する際の課題や、大変だったこと、印象に残っていることはありますか?

水野:
当時勤めていた出版社は、2拠点という選択肢そのものがありませんでした。PCも会社用で、持ち帰って仕事することも表立ってはできない。この状況をガラリと変えるのは難しいと思ったのと、改めてUターンをしたらどんなスキルが必要かを考え、ベンチャー企業に転職したんです。

移住を考え始めてから実際に移住するまでは約2年ありましたが、移住前には職場と「なぜ移住したいのか」「移住したらその分交通費がかかるけれど、どこまで相談できるのか」を、膝を付き合わせて話し合いました。そうしたら、意外と「じゃあ(熱海から)通ったらいいんじゃないかな」と、交通費も含め前向きな返事が返ってきたんです。

篠原:
約3年前から移住のイベントやフリーランス向けのイベントを企画する中で、自分もいつか移住したいと思うようになりました。夫の転勤がきっかけで、「いつか」が急に来ちゃって。いざ移住となると、仕事はどうしようと思い、水野さんと同じで会社と膝を付き合わせて話をしました。いきなり相談をするのではなく、役員や周囲の社員に「転勤の内示が出るかもしれない」と、少しずつ伝えていました。

画像4

夫の働き方・暮らし方の変化

星:
会社に思い切って相談したことが、大きな変化につながったんですね。ここまでは会社のお話でしたが、ご主人の反応や、働き方にはどんな変化がありましたか?

篠原:
私はもともと家事育児が得意ではないので、単身赴任期間が4か月ありその間のワンオペは本当につらかったです。その様子を見ていたので長野で一緒に暮らせるようになってから、とても家事・育児に協力をしてくれます。あと、子供と離れていた時期があったからか、より溺愛するようになりました(笑)。私は出張が多く、1ヶ月の1/3は東京か地方に出張しています。そのため、夫が会社とも相談して、働き方を見直してくれるようになりましたね。

水野:
2015年くらいから「移住してお寺を継ぎたい」と相談をしていましたが、夫は最初本気と思っていなかったみたいです。私の本気度が伝わってからは、夫も自分の働き方を少しずつ考えるようになりました。とはいえ仕事も忙しいし、最初は「品川にワンルームを借りて、週末だけ熱海に帰る生活をする」と言っていたんです。ですが、家族と離れて暮らす想定をしてみて、家族の中のプレゼンスが下がる危機感を感じたみたいで(笑)。「一度移住をしてみて、ダメだったら戻ればいい」と考えてくれて、家族全員で移住することになりました。

熱海に移住するタイミングで、夫の会社もフルフレックス制度が導入されて。自分で働き方をデザインできるようになってからは、仕事や飲み会の付き合いを見直すようになりました。現在では、移住してからの方が帰宅時間が早いという、面白い現象が起きています。移住が、仕事や家族の中での立ち位置などを、考えるきっかけになったんだと思います。

周囲に新たなライフスタイルを提示できた

星:
次のテーマですが、ご自身やご主人の働き方や生き方が変わる中で、会社やコミュニティ、周りのご友人の働き方に、何か変化はありましたか?

画像5

篠原:
社内でもリモートワークが認知されるようになったように感じます。最近ではリモートワークルールができたり、実際にチームで実証実験的に「リモートワークDAYを作る」という流れも出てきています。

社員の意識の変化や「フルリモートでもちゃんとやれるんだ」という認識に貢献できたのは、嬉しかったですね。リモートワークや移住について相談を受ける機会も増えました。

水野:
私の場合、「熱海から通えるんだね」と驚かれることが多いです。昔から通っている人は多かったのに、それが認知されていないんだなと。実際に、社内や取引先、当時の保育園のママさん・パパさんからも、「そういったライフスタイルができるんだね」と、興味を持っていただけます。

星:
2人の行動が、周りにも変化を与えたんですね。とはいえ、会社の制度をいきなり変えていく、交渉するのはなかなか難しいと感じます。取っ掛かりとしてのはじめの一歩を、どういう形で踏み出すべきでしょうか?

篠原:
様々な人に小さく話題を振って共感者を増やすのはいかがでしょうか。あとは、出来るだけ制度をいじらずにチャレンジできるか、模索するのもアリだと思います。例えば交通費。長野-東京間は往復で約15,000円かかりますが、弊社の交通費上限は月額30000円です。なので、上限を超える分や宿泊費は自分で払うことにしています。出勤する回数やタイミングも話し合い、お互いが働きやすくなるように調整しながら進めています。

水野:
移住はゴールではありません。私の場合は「お寺を継ぐ」という明確な目的がありました。移住して3年経った今も、働き方や暮らし方は微調整を繰り返しています。とはいえ、大学卒業後にすぐ上京したので、移住を考え始めた当初は、熱海のことがほとんどわかりませんでした。まずは、今の熱海のことを知らなきゃいけない。そう思い、現地で面白いことをしている人やコミュニティとつながりを持ち、1〜2年ほどかけて関係を深めていきました。

いきなり移住という選択は、かなりリスキーだと思います。私の場合、月1くらいの頻度で熱海に帰るようにしたところから、徐々に小さなステップを踏んだことが、移住に踏み切れた要因だったと思います。

画像6

移住が子供に与えた変化

星:
篠原さんは、急なタイミングでの移住でしたよね。半年間の生活で、どんな課題を感じていますか?

篠原:
夫と転勤のタイミングをずらすことで、移行期を作れたのが良かったと感じています。東京での生活も残しつつ、時間のバッファを持ったことで、会社とも余裕を持って相談ができました。リモートワークに移行するための体制を整える時間も確保できました。移住してからは水野さんのように、まさに今地域コミュニティとのつながりづくりを進めています。

移住生活の課題ですが、保育園探しが大変でした。引っ越したのが7月という中途半端な時期もあって、都心部並みの枯渇状態です。地方に住む場合でも、保活は気をつけたほうが良いと思います。私の場合、長野駅から通える範囲の保育園は満杯で、同じ市内でも山の方へ車で30分走らせたところは空いているという状態でした。

星:
保育園の話題も出ましたが、移住したことでお子さんに何か変化はありましたか?

水野:
長女が今9歳なんですが、都内だと遊びに行くとき、公園の遊具や水族館など「場」が用意されているという感覚が強かったです。熱海では、割と何でも遊びに昇華できる自然環境があって、クリエイティブな部分がすごく成長しているんじゃないかなと思います。あとは、熱海のまちづくりのコミュニティに関わっていることもあり、多種多様な大人のいる場所へ連れて行く機会も増えました。

それが「いろんな人がいていいんだ」という、学びにつながっていれば嬉しいですね。親が子供にできることって、意外と少ないんですよね。その限界を認めつつ、多彩な大人との触れ合いを楽しんでくれたらと思います。

篠原:
長野は緑が多いから、遊びが増えたというのはあります。ですが、それ以上に「家族との時間が増えた」というのが大きいです。お互いの通勤時間が約2時間減った分、3人でいる時間が増えました。子供の中でも、「家に帰ったら、パパとママとこれをする」と、3人ありきでの遊びを考えてくれるのが嬉しいです。

星:
お子さんやご主人に変化があった中で、これからお子さんが小学生、中学生へ成長するにつれて、働き方や暮らし方にも変化があると思います。その中で、ご家族とどのようなコミュニケーションを重ねていきたいかを教えてください。

水野:
私は働き方やライフスタイルで、何の優先順位が高いのかを常に考えています。一番は家族なんですが、それ以外の順位は入れ替わることも多いし、今後も大事にしたいことは変わると思います。今後もそうした価値観の変化を恐れずに、仕事や暮らしを微調整していけたらいいですね。

こうした話を、夫とあまりするわけじゃありませんが、定期的にコミュニケーションを取っていきたいと考えています。最近は娘も自分の意見を伝えるようになってきたので、2人ではなく3人、3人ではなく家族でのコミュニケーションの重要性を、日々感じています。

これ、今日言っちゃダメだよと言われていたんですが。私がお寺を継ぐなら、将来一度は剃髪しようと思っていると、娘に話したんです。そうしたら、彼女に「すごくいやだ!」と言われて。理由を聞いたら、「三者面談に坊主で来られるのは本当にいや」と答えが返ってきて(笑)。

じゃあ、カツラで三者面談に行けばよくない?と聞くと、「取れるかもしれないからダメ」って。親の意思や行動をしっかり説明したり、伝える必要が出てきたなと。こういうところでも、家族の形は年齢やフェーズで変わるなと改めて実感しました。

画像7

篠原:
私は出張に子供を連れて行くことも多いです。それに夫が転勤族なので、今後また違う場所に移住する可能性があります。子供が小学生に上がるころにはメインのコミュニティをどこにするか、検討する必要が出てくると思います。それでも、いろいろなところへ出張や転勤を経験することで、子供が自分の思いをしっかり持ち、何をしたいのかを意識して伝えていけるように育ってくれたら嬉しいですね。

今日、見知らぬ土地で出会った大人と意思疎通ができて、相手を知る。そういう大切さを、子供には伝えていきたいと思っています。

自分のできること、小さいことから始めよう

星:
ありがとうございます。今日ご参加いただいた皆さんの中には、今後どういう生き方や働き方を選びたいのか、そのヒントを求めていた方もいらっしゃると思います。

最後に2人から、2拠点・他拠点生活に踏み出すための第一歩になるアドバイスを、メッセージとしていただけたらと思います。

水野:
いきなり思い切った行動はしなくていいかなと思います。自分のできることから、本当に小さな事でいいので、それを積み重ねる事。それが、結果として大きな変化になるし、いざ大きくジャンプしようというときに動けるかなと。私は熱海の企業と首都圏の方々を複業でつなぐという活動をしていますが、最初からそれが念頭にあったわけじゃありません。「これは需要があるんじゃないか」「熱海の企業や首都圏の方々にとって、お互い良い変化を生む入り口になりそう」などの思いが、いろいろと活動をする中で見えてきました。

移住を目標としている方なら、気になる場所にまず観光で足を運ぶことからでもいいです。今からできる、小さなことから始めるのがいいと思います。

篠原:
「会社に伝えてみること」は、非常に大切なことだと思います。膝を突き合わせて話すと、意外にOKをもらえるケースもあります。会社制度の有無に限らず、まずは相談してみることをおすすめします。

私の同年代の女性で、昇進が決まっていたのですが、夫の転勤で会社を辞めた方がいます。退職前に話す機会があったので、「会社に仕事を続けたい旨を含めて相談してみたら」と勧めたのですが、会社に相談しないままやめてしまいました。この場合、会社側は「働く意欲は高いけれど、辞めなくちゃいけない」という彼女の悩みを知りません。結果として、ただ優秀な女性が退職してしまった事実だけ残ります。これでは、本人にとっても会社にとっても不幸です。ぜひ「リモートワークなんて無理」と思わず、まずは会社に相談してみてください。何かの糸口が見つかるかもしれません。

画像8

まとめ

イベント後には、クリスマスのデコレーションが施されたおやつを用意して、登壇者、参加者様、そして皆さんのお子様と一緒に座談会を行いました。また、お子様には木製オーナメントを自由に飾り付けする、ワークショップも開催しました。

今後も、家族との生活も踏まえた、新たな働き方に関するイベントを開催してまいります。ぜひ、今後の告知も楽しみにお待ちください。

画像9

<ライター サトートモロー>


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?