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その62)復活屋のスズキさん

※これは、作者が想定するベーシックインカム社会になった場合を想定した、近未来の物語です。

スズキさんの趣味は新しいことにチャレンジすることだ。農業に興味を持って家庭菜園を作ってみたり、縫製に興味を持って自分の服を縫ってみたりと次々と覚える。芸術、音楽、染色、陶芸、DYI、料理など、いろいろなことにチャレンジして、何でもそこそここなしている。

それらのきっかけはインターネットのハウツー動画で、やりたいことができると、まずはネットで調べる。すると誰かが必ず動画をアップロードしている。それを元にそこそこの腕前になっていくのだ。友人界隈からは「ミスターDYI」などと呼ばれるくらいだ。ある程度できるようになると次のチャレンジをするのが好きなのだ。

ベーシックインカムが始まった時、自由にできる時間は増えたけれどもお金がないので何をしたら良いかわからない人が一定数増えていると知った。社会の中でそれぞれの人に役割ができたら生きる張り合いが出るのではと思うようになった。「みんなでできる」「お金のかからないこと」「社会の役に立つこと」を増やしたら面白いかもと思いついた。

斬新なことはついていけない人が出やすいし自分しかわからないことが増えて良くない。むしろ、昔はあったけど、今はやってなくて、復活したら役に立つようなことがいいだろう。生活品や食料などはすでにある。

そう考えていくうちに冠婚葬祭にいきついた。少し前まで、これらの行事や儀式は業者に頼んでお膳立てしてもらって行っていたものが多かった。でも、最近はお金がないからと役所に直接手続きをするだけで済ませる人が増えていた。それってあまりにも味気ない。

調べてみたら、業者が冠婚葬祭を引き受ける前はその地区に住む人達で役割分担をしてやっていたと知った。それならこれらのやり方をマニュアル化して根付かせたらどうだろう。みんなでやれば役目もあるしお金もかからないし、色々工夫しがいがあるぞと。しかも地域の人同士が仲良く慣れるチャンスにもなる。

鈴木さんは世話役を引き受け、暇そうな人に声をかけ、仲間を増やしながらこのプロジェクトを育てていった。

祭りはわりかしみんなが乗ってきた。年間の行事は段々と皆の楽しみに変わっていった。結婚式は多世代で同居する家族が増えているおかげもあって、これもいい感じになってきた。多様性の時代なので事実婚も同性婚もあったりする。葬儀も役割分担ができたことで、地域のみんなが一つになって送れるようになった。もちろん、そういうのが苦手な人もいるのでそれなりに調整には気を使った。

軌道に乗ってくると他の自治体が学びに来た。スズキさんは気前よくノウハウを提供したり、積極的に情報交換も行った。スズキさんのところよりも成果を上げたところが出ると、仲間と教わりにいった。

一度できたプロジェクトは誘ったメンバーが成長してここに引き受けるようになった。引き継ぎはどんどんできているようだ。ようやく手が離れたスズキさんは、また新たな興味に向かっていくのだった。

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