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箕輪編集室・前田デザイン室の運営メンバーが実体験で紡ぐコミュニティ強化の極意 #コミュニティ強化の教科書

同じ価値観を持った人々が集う「コミュニティ」。家庭や学校・職場とは違うこの「コミュニティ」はオンラインに活動の場を移し「オンラインサロン」という形で、見かけるようになってきました。

『箕輪編集室』というオンラインサロンで出会い、その創成期に共に運営をしてきたお2人。今はその枠を飛び出し、数々のコミュニティ運営に関わり活躍されています。

「コミュニティマネージャー」という肩書きを「いつしか得た」お2人が、これまでの体験を元に「コミュニティを強化していく方法」を初めて語りました。その内容はまさしく、「コミュニティ強化の教科書」。そのイベントレポートをご覧ください。

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<Profile>
左)浜田 綾(はまだ・あや)
ライター / 編集者 / コミュニティマネージャー
大学卒業後、10年間事務職として従事。34歳の頃「自分だけができる仕事」を求めてライター業をはじめる。箕輪編集室に入会後、数々のプロジェクトでの活躍を経て、運営メンバーの一員となる。その後箕輪編集室から派生したオンラインサロン「前田デザイン室」の立ち上げに携わり、コミュニティの設計やマネジメントを運営リーダーとして携わる。今後は「株式会社NASU」のコミュニティ事業部にてマネージャー・CAMPFIREの法人向けのアドバイザーとして活動する予定。

右)柴山 由香(しばやま・ゆか)
合同会社LABOUSSOLE 代表 / 箕輪編集室 運営リーダー / 櫻田潤のビジュアルシンキングラボ 運営 /
会社員を経てノベルティ制作の会社を起業。オンラインサロンに参加しながら徐々に運営側を担うようになり、その経験をもとに大手出版社をはじめとする数々のオンラインサロンの立ち上げサポートなどを行っている。コミュニティの原点は宝塚歌劇団のファンクラブ運営。その経験が今のコミュニティマネジメントにつながっている。

「コミュニティマネージャー」は、見守る人

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「そもそも、コミュニティマネージャーは何をする人?」そんな話題からイベントはスタートしました。Twitterで検索をしてみると、その肩書きを名乗る方はたった42人。まだまだ数が少ないこの職種へのお2人の定義は「コミュニティをよく見ている人」でした。

一見コミュニティを率いる役割かと思われがちですが、意外にもフォローをするのは必要な場面だけで、大切なのは「ジャッジをしない」ことなのだそう。

オンラインサロンは好きな人が好きで入ってくる場所であり「マネージャーが決定権を持ってしまう」と荒れてしまう。そんな悲しいことを避けるために、このような立ち位置でいることを大切にしているのだそうです。

箕輪編集室で運営メンバーが行なったことは、箕輪編集室の全てのページを日々チェックし、Twitterでもエゴサーチをしてはとにかく見守ること。

これらはずっと続けることではなく、コミュニティの初期段階にやり尽くすことが大切。オンラインサロンごとのカルチャーさえできてしまえば、そのあとは必要なくなっていくと話します。

柴山
見守り続けないとコミュニティをよくしていく為の課題は見つからないんですよね。何が良くて何が悪いか、すぐジャッジをしたくなりますけど、それも前後を見ないと判断がつかない。だから見守る。あとは、見守っていることを知ってもらうことも大事なので、コメントやTweetに「いいね!」だけしておくというのも、意識して行なっていましたね。

設立当時にコミュニティマネージャーが行なっていた「見守る」という動きを見て、他のメンバーにも広がっていったことが、箕輪編集室というオンラインサロンが自走しはじめたきっかけだとも話していました。


「コミュニティマネージャー」で鍛えるスキルは、生きることに役に立つ

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そもそも、浜田さんも柴山さんもコミュニティマネージャーが本業ではありません。オンラインサロンのいちメンバーとして会費を払いながら、その役割を担っています。なぜ、ボランティアでそこまでできるのか? その理由をお2人はこう話しました。

浜田
コミュニティマネージャーの仕事って本業に活きてくることが多いと思うんですよね。

柴山
コミュニティ自体が人と人との集合体で、マネージャーは円滑にやりとりできる潤滑剤のような存在だと思うんです。どんな仕事でも、人とのやりとりは必ずありますよね。人のど真ん中で想像力を使って動き続けるスキルが、他の仕事に活きないわけがないと思うんです。

浜田
そうなんです。あとコミュニティマネージャーをしたことで特に成長したと思うのは、「意思決定を意識しながらする力」ですね。

柴山
箕輪編集室でいえば、日々メンバーからくる様々なリクエストに対してオーナーに聞くのか自分たちで解決できるのかをまず判断しなければいけません。オーナーに聞くとしたら忙しい方々を相手に、いつどのように聞くかを考えること。本当に意思決定の連続です。でも、それができれば自分の人生を自分で決められるようになるんですよね。

浜田
主体的になりますし、やればやるほど精度も上がって速くなる。会社に勤めていると誰かから指示されて行うことが多いから受け身の姿勢になりがちですが、コミュニティマネージャーとして自分で意思決定をしようと思うと、すごく考えるんですよね。出した答えが間違っていることもあるかもしれないですけど、自分が考え尽くして出た答えだから、責任を持てるようになる。

メンバーとオーナーの間に立ち、双方がなめらかに過ごせるように想像力を働かせる。そのスキルを得られたことは自身の仕事や生き方にまで影響する大きな収穫であり、コミュニティマネージャーをやっていてよかったと感じるのだそうです。


コミュニティ強化のための実践ポイント

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ここからはお2人のコミュニティ運営の体験を基に、コミュニティを強化するための秘訣を聞いていきます。お2人が定義する「いいコミュニティ」は「価値観が近しい人達がいるところ」、そして「居心地が良いところ」

メンバーが入る前と入った後に感じるギャップを少なくするために、このようなことに気をつけながら活動をされているそうです。


ーコミュニティはトラブルを乗り越えて強くなる!

・何かひとつ“ちょっと難しい”と思うプロジェクトにチャレンジすること
・これ終わったな…と思うほどのトラブルを乗り越えること

「人と人とのつながりを強くする」=「コミュニティ強化」と定義すると、トラブルも大切だと話します。一般的にはトラブルが起きそうになるとそれを避けるためにマネージャーが出ていってまとめ上げてしまうことが多いもの。しかし、コミュニティを強くするためにはここでグッと我慢することが大切です。

メンバー自身がそのトラブルを体験し協力して乗り越えることで、メンバー同士のつながりはグッと深くなります。あくまで「手を出しすぎない」。ここでもやはり、見守っています。


ーアクティブ派・ROM専派、どちらにも居心地の良い場所にする

・目立たずとも頑張っている人にこそ役割を渡す

見守り続けることで「自発的に動いていくメンバー」と「声は大きくないもののやりたいと思っているメンバー」がいることに気が付いた柴山さん。自発的に動ける人は自主性を持つのでチームリーダーなどに向いていることが多く、内向的で粛々と物事を進められるメンバーにこそコミュニティマネージャが向いているのだと話します。

そんなメンバーは、実は他のメンバーからすでに信頼されているケースが多く、両者を見極めながらメンバーを運営側に抜擢していくことがコミュニティ強化につながっていきます。

・“お客さん”から“自分の居場所”に

オンラインサロンにはアクティブに活躍するメンバーと、ROM専と呼ばれる所属しながらも静観している段階のメンバーの両者がいます。そのお互いにとって、居心地が良い場所にすること。

特にROM専のメンバーはプロジェクトを応援してくれる大切な存在であり、何かきっかけがあればアクティブ層になっていくこともあります。目立った活動をしていなくても「居場所」として居心地よく所属しているのであればそれもよい状態なのだと、運営側が想えることが大切です。


ーコミュニティに黄色信号!こんなことがあれば着目しよう!

・言葉の乱れ・内輪にしか通じない言葉ばかりのコメント欄!

オンラインサロンではテキストコミュニケーションが主になってきます。コメント欄で乱暴な言葉遣いやハイコンテクスト=内輪にしかわからない言葉が散見されるようになったら注意深く見るようになると話します。

特に内輪になってしまうことは、新しい人が入れなくなってしまうので注意が必要。コミュニティには流動性が大事なので、新しい人が入りやすい空気を作る。チームを作るであれば、リーダーを入れ替える体勢にするなど、言葉が新しいものに自ずとなっていく設計を作ります。

あまりにも大きく広がってしまった場合でも直接言うのは最終手段。まずはコミュニティマネージャーである自分が絶対に交わらないこと・話題をそらすことを大切にしているそうです。

・リアクションが薄すぎる!

オンラインサロンを居場所として感じられなくなってしまう理由の1つは、「反応がないこと」。緊張しながらも一歩踏み出したメンバーに対して無反応が続くと、次の一歩が踏み出せなくなってしまいます。

そんな事態を防ぐためにも、コミュニティマネージャーが自ら率先してリアクションを取りにいくのが大切なのだそうです。その動きを見て、他のメンバーが追随して役割が移っていくことが理想です。

・不透明に何か物事が進んでいる!

「見えないところで何かが動いていること」が、メンバーのもやもやとした不信感につながるのだと話します。情報はオープンに、誰でも参加できるようにしておくことが大切。

メッセンジャーなどを使った個人同士のやりとりで不透明になってしまうことは、ハイコンテクストな言葉の乱用にもつながりがち。とにかくオープンに、そのカルチャーを伝え続けることが大切です。



ここまで読み、「コミュニティマネージャーってこんなに大変なの?!」と思われた方。コミュニティは、作っただけではなかなか機能せず、なくなってしまうものが多いことも確かです。

これだけ考え、これだけ設計をしないとうまく機能しない。「コミュニティ運営は甘くない! 」と、これまでの体験をもとに熱く語るお2人ですが、一方で「資格が必要なわけではなく、誰にでもチャレンジするチャンスがある役割」だとも話します。


人と人とのつながりをなめらかにするコミュニティマネージャー。その実体験を交え、ときにはTweet NGのエピソードも飛び出しつつ一気に駆け抜けた濃厚な2時間半でした。

東京では満席御礼だったこのイベント、第二弾が12月20日(金)大阪で行われます。


新たなコミュニティとの出会いを通じて、それまでの生活圏から一歩歩み出し、新たな可能性を見出していく人が増えています。

性善説に基づき愛を持って見守る「コミュニティマネージャー」。しかし、まだまだその役割を全うできる人は多くはありません。興味がある方は、ぜひイベントに足を運んでみてはいかがでしょうか。

執筆:柴田 佐世子
写真:池田 実加

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