見出し画像

共通点は「独学」のデザイナー。失敗も成功も、チームが経験に変えてくれる

ものづくりとデザインの力で、世界をちょっとだけ明るく照らしたい。

私たちは、東京・恵比寿にあるコンテンツ制作の会社「ラブソル」です。

社内にはさまざまなクリエイターがいますが、今「デザイナー」を名乗っているのは、二人の女性。年齢も、立場も、もちろん得意なことも違う二人ですが、目指すのは同じ方向。
冒頭の「ものづくりとデザインの力で、世界をちょっとだけ明るく照らしたい。」という、弊社の理念です。

コロナ禍でずいぶんと社会に浸透しましたが、弊社でも「リモートワーク」を取り入れています。
この記事を書いている私、ライター上村も、鹿児島に住みながらラブソルの業務委託メンバーとしてお仕事をしています。
いろんな働き方をしているメンバーがいますが、今回話を聞きたい! と思った二人のデザイナーも、まったく違った働き方をしています。

一人は独身・日々オフィスに通いながら、がっつりとラブソルのお仕事をしている正社員の小野寺。
もう一人は、横浜で小学生の息子さんを育てながら、私と同じくフルリモートの業務委託の形で働いている、あさの。

二人のデザイナーが、なぜ今の自分にたどり着いたのか。この働き方を選んだのか。そこには、働くことの可能性やラブソルという会社の未来が見える気がして、今回、対談という形で余すところなく語ってもらいました!

左:あさの あゆこ
社会人生活はずっと事務職だったが、40歳で出産を機にフリーランスデザイナーの道へ。2022年7月からラブソルのアライアンスメンバーとしてデザインアシスタントを務める。紙ものからグッズ・web記事図解などデザイン全般にたずさわる日々。最近は、業務の傍らiPadの『Procreate』や文字詰め(カーニング)などを勉強中。家族が大好きな小学生男子の母。夢はカッコイイおばあちゃんになること。

右:小野寺 美穂(おのでら みほ)
LA BOUSSOLE のデザイナー。学生時代、一度はデザイナーを志したものの「自分はデザイナーにはなれない」と思い込み、新卒で営業職に。しかし、デザインへの思いは捨てきれず、会社員をしながらオンラインサロンを舞台にクリエイティブに向き合い始める。その後、フリーランスのデザイナーとして活動。更なるステップアップを志し、業務委託として働いていたラブソルに入社。今では、指名で依頼がくるほどに。

憧れても、真っ直ぐにはたどり着けなかった「デザイナー」という職業

小野寺:私たちに共通点があるとしたら「学校でデザインを学んでいないこと」でしょうか?

あさの:そうですね。美大や専門学校に通ったことはないですね。

小野寺:実は私、新卒で入社した会社では、人材派遣の営業をしていました。ひたすらテレアポしたり、飛び込み営業をしたり、今とはまったく違うことをしていたんです。

あさの:えー、そうだったんですね! 私は就職氷河期世代で、就職というのは「する」か「しないか」の時代。新卒で会社に入れなかったら、もう仕事ができないんじゃないかと思うくらい厳しかったです。
デザインや絵を描くことが好きで、そういう仕事をしたいと思ってはいましたが、当時は、食べていくということとリンクができなかった。なので、事務職をずっとしていました。

小野寺:時期や状況は違うけれど、わかります!! 
高校生のとき、初めてデザイナーのという職業を知って、「わぁ!これいいな」と思ったんです。でも、センスもないし、周りにデザイナーという人がいなかったので「自分がなれるものではない」と、自分で自分に足枷をはめてしまったんですよね。

新卒入社してからの二年間、営業をしながらどこかでずっとデザインへの思いは消えなくて…。
業務に関係なくてもいいからと、オリジナルのLINEスタンプを作ってみたりして(笑)今思うと、「デザインをする時間を人生の中で増やしたい」ともがいている二年間だったと思います。

あゆこさんがデザインを始めたのは、どういう経緯だったんですか?

あさの:もう、デザインは「趣味でいいや」と思っていたんです。私は結婚が遅くて、出産したのも40歳。子どもの成長をそばで見ながら、仕事も諦めたくない。でも、目の前には専業主婦か、子どもを預けて働くかのどちらかしか選択肢がない。

そんな時に、興味を持って入ったオンラインコミュニティで、ラブソルを立ち上げて二年目くらいのゆかさんとみかさんに出会ったんです。
同じく子どもがいるママだけど、ゆかさんは会社を立ち上げてバリバリお仕事していた。きっと「そんなの甘いですよ」と言われるだろうと思ったけど、その時考えていた「子どもをどこにも預けずに在宅で、フリーランスでデザインのお仕事をしてみたい」という思いを相談してみたんです。
でも、ゆかさんの答えは「いいんじゃない、やってみれば。応援するよ」でした。

小野寺:わあ、ゆかさん言いそう。想像がつきます(笑)私も、諦めきれず、自分に足枷をつけたままもがいた二年間で、いくつかコミュニティに入ってみたんです。その中の一つで、コミュニティ全体を見て場を健全に保ってくれていたゆかさん、みかさんに出会いました。私のような若者に、打席を作って引っ張ってくれる存在だったんですよね。そこで、デザインを教えてくれる尊敬できるデザイナーの方にも出会えました。タイミングとご縁に恵まれたんですよね。

あゆこさんは、やってみようとなってから、どんな風にデザインに取り組んでいったんですか?

あさの:私が入ったのは、経済評論家の方が主宰するビジネス系のコミュニティでした。だからか、デザインをしている人が少なかったので、「デザインに興味があります!こんなことをやっています」と周りの人に発信をしていきました。その頃、コミュニティ内の大きなイベントの実行委員をされていたのがゆかさんで、「あゆこさん、お願い!」と私をデザインの責任者にしてくれたんです。おかげで名前や活動が知られて、コミュニティの方からお仕事を依頼されるようになって…。

とはいえ、デザインは独学で学んだので、お客さまとのやりとりが成長の全てでした。デザイン的に正しいとか美しいとかよりも、「こうしたい」という想いを持っているのはお客さまなので、お客さまの正解を探すことを目指していく。そのやりとりこそが、私にとっては大切なものでした。

小野寺:お客さまからのフィードバックをしっかり受け止めて、成長の機会にされていったんですね。私も、フィードバックがないと成長できないなと思っていて。
当時所属していたコミュニティはものすごく盛り上がっていて、クリエイターも多く在籍しており、ライターチームやデザインチームなど、10チームくらいあったんです。ある時、デザインチームのリーダーがチーム運営に悩んでいることを知り、デザインはできないけどチーム運営をやります! と申し出て。本職として活躍されているデザイナーさんがいたので、思い切ってフィードバックを受けられる仕組みづくりをしたんですコミュニティでしたが、仕事と同じくらいハードに取り組みました。それが、今につながっています。

働き方が自分を変えていく、「チーム」の可能性

小野寺:私がラブソルにジョインしたのは、フリーランスの業務委託として。それが三年前の9月で、それから数ヶ月経って社員になりました。人を雇うことには、きっとものすごい覚悟がいると思うんです。だから、自分も覚悟を持たないといけないという思いはありました。フリーランスで働いていた頃、ベンチャー企業のお手伝いをしていたことがあったんです。やっぱり、正社員を雇うことには高いハードルがあって、業務委託を雇うケースが多かったんです。私もそうでしたし。そういうのを知っていたからこそ、代表二人の覚悟を感じていました。

でも実は、銀座のカフェでモンブランを食べているときに突然、ゆかさんから「でらみ、会社の保険入る?」と聞かれて(笑)フリーランスの時、週一出社でよかったのに居心地がよくて、気がつけば週3〜4くらい出社していて。きっと、そのまま居ついた猫みたいな感じだったんですよね(笑)

ラブソル創業者二人が大好き、銀座みゆき館のモンブラン

あさの:すごいですね、まだ20代なのに。きちんと言われないと気づけない人は多いと思うんです。

小野寺:一年フリーランスをしたことが大きかったです。フリーランスって、本当のことを言ってくれる人がいないですよね? しかも、そのころは離婚して間もない時期で、余計に「怖い」という気持ちが強かった。

あさの:そうなんですよ! 私も、フリーランスとしてお仕事をはじめてから余計に、コミュニティのイベントでデザインの責任者をしたときのゆかさん、みかさんお二人のきめ細やかな配慮がすごいことだったと気づくことができました。そう思える人たちのそばにいたいし、何か学びたいという気持ちが芽生え、ラブソルがコミュニティを始めたことを知って、「喫茶ラブソル」に入りました。リアルイベントで着るTシャツやグッズのデザインをする企画に参加して、みんなでやる楽しさを感じましたね。のちに一緒にお仕事できるようになるとは、その時は思ってもいませんでしたけど…。

小野寺:あゆこさんの中では、ラブソルで仕事をしたいという思いがあったんですか?

あさの:もちろんです! コミュニティに入るくらい、ラブソルメンバーが好きでしたし。実は、自分から「お仕事したいです」って伝えたんですよ。

今年の4月から、子どもが小学校へ入ったんです。幼稚園のころは、そもそも登園している時間が短かったし、まだ小さいから突発的に体調を崩してしまうこともありました。自分の時間の確保が難しかったんですよね。それが小学生になってみると時間も長いし、学童保育もある。子どもが大きくなっていけば、もっともっとですよね。

私がフリーランスとして受けていたお仕事は、名刺のデザインが多くて。どうしてもリアルの場で使うものなので、お仕事の依頼自体がコロナ禍で減っていたんです。たまたま、そのタイミングで喫茶ラブソルでリアルイベントが何回かあって、参加できて…。お仕事がしたいという切実な思いもあったし、ラブソルとお仕事したかったし、思い切って「何かお仕事があったら、一緒にやりたいです」と、自分からゆかさん、みかさんに伝えました。単発でもいいから、何か関われたらいいなという気持ちでした。

小野寺:そうだったんですね…! ラブソルという組織に所属することで、何か変わりましたか?

あさの:これまでは、自分一人で解決をしないといけないので、抱え込んでしまうこともありましたそれに、フリーランスという立場では、いろいろと制限があるんですよね。ラブソルに依頼が来ている企業さまのお仕事などは、なかなかありません。みんなでやるということは、こんなにも可能性が広がるのだと実感しました。

みほさんはチームをまとめる側ですが、一人のときとチームで仕事をしているときの違いはありますか?

小野寺:チームのお仕事では、手元の集中力というよりは全体を見渡すというか、気持ちを柔らかくして、お互いのコミュニケーションが円滑になるように意識をしています。少しずつ大きな企業さまとのやりとりも担当する機会が増えてきて、チームで取り組む必要性を感じました。最初は、外に意識が向きすぎて手元の仕事に集中することができず、切り替えがうまくいかないことも多くて。「チーム」が苦しくなったりもしました。
でも、気がついたんですけど、苦手なことはあっても、出来ないことって本当は少ないんだと思います。苦手だから時間はかかるかもしれないですが、最終的には人間は慣れていくものだと。慣れるまでは、自分自身も耐えることが必要だし、周りに理解をしてもらいながら待ってもらうことも大事ですよね。一緒に耐えてくれる周りの人がいることは、ありがたいことです。

失敗も、成功も、「誰かと一緒に働くこと」で、未来につながる

あさの:みほさんも覚えていると思いますが、とある施設のパンフレット制作を担当したとき、大失敗をしてしまって。本来あるべきでない黒い線が入ったまま印刷に出してしまったんですよね。目安にするガイド線だったので、印刷されない方式にすればよかったのですが…、これまでは一人でやってきたから、最後に消せばいいやと思っていて。チームでやるからには、データを共有して代わってもらうこともあり得るんですよね。自分の失敗がみんなの失敗になってしまうので、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

私から見ると完璧なみほさんですが、デザイナーとして落ち込んだことや失敗談はありますか?

小野寺:もちろんありますよ! ラブソルに入って半年くらいだったかな、Webデザインの依頼をいただいて、無事にサイトが完成し、お客様もとても満足してくださったんです。そこからさらに、名刺のご依頼もいただいたんです。名刺のデザインを作ってお出しして、普段はすぐ反応が返ってくるのに、なかなか返って来なくて…。「どうしたんだろう」と思っていた矢先、「正直言ってガッカリしました」と言われてしまいました。Webデザインの時に感じたワクワクが、名刺からは感じられなかったと結局、名刺の依頼はなくなってしまいました。本当に悲しくて、悔しくて…。だからこそ、今の私の原動力になっています

あゆこさんは、チームで働くようになったからこそのご苦労もあると思いますが、「チームでよかった」と思ったエピソードはありますか?

あさの:正直、全部という感じです(笑)でも、特に心に残っているのは、オリジナルグッズとしてご注文いただいた御朱印帳のデザインに行き詰まってしまったときですかね。北海道の函館にあるお寺からのご注文で、函館も、五稜郭も、歴史も好きだしと、好きなものだらけで…、ものすごく気合が入っていたんです。もしかしたら、空回りしてしまったのかもしれないですが、まったくデザインとして成り立たなくなって。どこをどう直せばいいのか分からないという状況。そんなときに、みかさんとみほさんが、進みたい方向を一旦整理をしてくれて。澱んでいた流れを変えられて、進みはじめることができました。本当に感謝しています。

小野寺:どうしたらいいか分からなくなるときってありますよね。そういうときは、他の人の手を借りる以外、突破する方法ってないなと思うんです。絶対に自分の中からは出てこないときもあるんですよね。
私もそういうことは結構あって(笑)先日も、由香さんの一言により一点突き抜けることができました。誰かと一緒に仕事をするって良いなと思えました。

あさの:御朱印帳を自分一人で受けていたら、どうなっていたのか分からないです…。

小野寺:8月31日に公開された「野菜科学研究会」のオフィシャルサイトの制作は大きなプロジェクトで、まさにチームのみなさんがいてくれなかったらできなかったお仕事だと思っています。あゆこさんにも色々なパーツの制作を担当していただいて、本当に感謝しているんです! 野菜研の公式Twitterのプロフィール画像が無事に完成したのは、あゆこさんのおかげです。
サイト制作には細かい作業もたくさんあって…。他にもメンバーがそれぞれの持ち場を守ってくれたり、仕事のサポートをしてくれて、本当に感謝しています。

居場所を得た二人のデザイナーが見すえる、それぞれの道

小野寺:あゆこさんは、どんなデザイナーを目指していますか? 「これは手に入れたい」というものはありますか?

あさの:お客様の「こうしたい」を叶えつつ、それ以上の提案ができるデザイナー、ですかね。独学でやってきたので、自分のスキルがどのくらいのレベルなのか、いまだに分からないときがあるんです。「私はこれだけのスキルを持っています」と胸をはって、提案できるようになりたいですね。お客様に「この人に任せたい」と思ってもらえるような、ないものを形にできる、そんなデザイナーになりたいです。

みほさんは、最初のころはデザイナーと名乗れなかったと聞いたことがありますが、名乗れるようになったのには、何かきっかけはあったんですか?

小野寺:三つくらい、自分の中で転機がありました。一つ目は、いろいろなデザインの仕事をさせていただき、お客様が喜んでくださるという成功体験を重ねることができたこと。二つ目は、2年くらい前に学生インターンの子が3人入ってきたことです。当時は「うわぁ〜!学生の子そんなに来るの!? 」と思ってました(笑)でも、そういう機会があったからこそ、誰かに自分の言葉で「デザインとはこういうものだ」と伝えることで、意外と自分がデザインについて語れることに気づきました。好きだからこそ、デザインをないがしろにされることに憤りを感じる経験もあり、「そろそろ、自分のことデザイナーと呼んでいいかもしれない」と思いました。三つ目は、自分の中でのデザイナー像がここ数ヶ月で固まってきたこと。どういう領域でとか、どういうチーム編成でとかはきっと変わっていくけれど、「一生デザイナーとしてやっていきたい」と思えるようになったのも大きいですよね。

あさの:ああ…、そうなんですね。聞かせていただけて嬉しいです。私は、最近「あともう少し」という粘りの大切さを改めて実感しています。もうこれ以上何も出ないかもしれないけれど、「これで良い」ではなく、「これが良い」にたどり着けるまで諦めない。そのことを意識しながら目の前にあることをコツコツ着実にやっていったら、未来につながっていく気がしています。一人じゃないところがとても面白く、積み重ねていった先の未来を、みんなで見たいと思っています。

小野寺:粘りって本当に大切ですよね。あゆこさんは子育てをしながら在宅ワークをされていますが、大変だったりしませんか?

あさの:子どもが宿題をしている横で私も仕事をしていると、「僕、宿題終わったよ。お母さんの宿題まだ終わらないの?」と言われるんです(笑)「お母さん、まだ終わらないんだよ〜」などやりとりをしていると、子どものほうが自然としっかりしてくるんですよ。「がんばってね」という言葉をノートにささっと書いてくれたり。応援してくれているので励みになっています。

小野寺:ほっこりする…! 同じ行動をしてくれる人が隣にいてくれるって、本当にいいですよね。私がラブソルに猫のように居ついたのも、同じようなスタンスで仕事をしている人たちがいたから安心感を覚えたんですよデザインは怖い行為で、つくるって孤独なんです。最初のころはデザインすることが怖かった、できるかどうかが不安で…。人が集ったり、隣にいてくれるだけで安心した記憶があります。

ラブソルは、フランス語「羅針盤」という意味で、理念に「オリジナリティを追求するひとにとっての、羅針盤でありたい」と掲げていますよね。私は、自分の好きな人たちに具体的に役に立てるかどうかが、自分の羅針盤だと思っています。具体的にというところが、ミソなんです(笑)「このバナー一つで、本当にお客様の売上は上がっているんだろうか?幸せになれているんだろうか?」と振り返る余裕が最近、出てきて。もっとお客様の課題を根本的に解決できるようになりたい、と思う気持ちが増してきました。

あさの:素敵です。私の羅針盤は「お客様や好きな人の笑顔や喜び、ワクワクを目指していくこと」です。自分の心の羅針盤を信じて行動することを大切に、毎日を過ごしていきたいです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
取材・執筆:上村 ゆい
撮影:池田 実加
編集:柴山 由香
バナーデザイン:小野寺 美穂


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?