蘇るパート共闘
私は一部で過激化する減税主義には反対です。それには声を大にして言っておきます。ただ一点だけ言わせてもらえば、パートタイマーの議論が少しだけ活発化になった事は良かったと思います。すぐに学生アルバイトの扇動になってしまった事は残念ですが。学生アルバイトの労働運動は必要ですが、それを減税ユーゲントに仕立て上げる手法はハッキリと否定します。いずれ学生アルバイトの労働運動も取り上げたいのですが、今日の主題は長年続けてきた非正規雇用センターの取り組みに対して私が知っている範囲でお話ししたいと思います。連合がいわゆる非正規労働者に対してなんらかのアプローチをし始めたのは2006年でした。当時は「正社員クラブの連合がようやく重い腰を上げたが、あまりに遅い!遅すぎる」と言われました。それから20年の間にまさか労働者のような自営業が出現すると思っていなかったので、どう先手を動いても経済状況の方が先手を取ってきます。とは言えそれが社会問題になりつつあった矢先のでき事で、この連合の動きは早くもなかったというのも現実です。産別が主導権を握り、連合本部の力は案外限定的で、指導力を発揮できる事がかなり少ないという欠点を抱えているナショナルセンターがようやく主導的に動き始めて多少は全体を動かすきっかけになったのはこの「パート共闘」でした。パート共闘はそもそも大企業労組と県庁雇用公務員労組の貴族と批判されていた連合が始めた「中小共闘」をさらに発展させる形で、創設されたものでした。実際流通業は正社員より圧倒的に数が多い非正規雇用労働者の方が多く、その組織化においては必ず必要なものでした。「パート共闘」はパート従業員が多い産別を中心に結成された組織体です。23産別が集まりましたが、その主導権は今は解散した産別である「サービス•流通連合」が持っていました。実際彼らがパートタイム労働者の実態を1番把握している産別でした。
さてかつては「パートのおばちゃん」と言われるように、パートタイマー=子供が独立したけど、少しだけ働いてたまには旅行に行こうと夫婦生活折り返しにきた女性の職場でした。必然的に年齢層は高くなります。しかし長らくデフレ経済が続き、パートタイマー=苦学生や就職に失敗した若者の受け皿になりつつありました。そして離婚したシングルマザーや介護離職したサラリーマンなどパートタイマーで働く労働者は急増したのが2000年代です。これに対しては何かしろ手を打たねばなりませんでした。
パート共闘会議の闘い
私が所属している産別は基本的に正社員雇用の方が多く、パートタイマーで働く仲間は数自体は多くはありませんが、連絡会議には参加していました。連合の説明では、パートタイマー労働運動の必要性の認識があるのだったらまず国技館に入ってほしい(これは連絡会議に入ること)そのうち土俵に上がって相撲を取れる産別は是非(これはパート共闘会議に入ること)というものでした。国技館には入った私達は、さすがにパートタイマー労働運動の必要性を感じました。今後会社の方針においてどんどん増えて行く事が予想できました。
さて私達も他の有力産別も非正規雇用の組織化の必要である事はこうした2006年に十分理解していました。実際にこの頃から有力産別を中心に労使交渉の中にパートの最賃など取り上げる例が増えたからです。そしてマスコミ対策の強化も訴えました。マスコミはパートの最賃ばかり取り上げ、今回ばかりはそうした事柄だけでなく抜本的な運動が必要だと感じました。政治の話になってしまうのですが、元非正規雇用の人などが参院の組織内候補として擁立されたのもこの「パート共闘」の延長線です。
さて政権交代直前にはパート法を改正するなど連合にとって「非正規センター」との両輪で時給を上げる事が概ね達成できました。こうした成果こそが地場企業を中心とした中小企業、零細企業の労働者、パートタイマーの組織化を連合が行い、民主党政権に繋げたという自負があります。現代でも地場有力企業の組織化は急務です。2025年の参院選はどうなるのか?今後の運動でしょう。
日本サービス•流通連合、イオン労連の取り組み
全国の小売業やチェーンストアを組織化する日本サービス•流通連合は毎年10000人以上の組織化を達成し、人員も急激に伸びた産別でした。小売産業はそもそも非正規雇用が多い産別で実際前述した「パート共闘」では中心的な役割を果たしました。そしてそれらの産別に入らず、一時期独立労連としてその地位を守り2000年代にゼンセンに参入したイオン労連などを中心にこうした非正規雇用の組織化がリードされてきました。2000年代になると大規模店を出店しても、募集を100人かけても50人ぐらいしか集まらないという人手不足に小売業は直面していました。そうなってくると必然的に派遣社員も雇用せざる得なくなり、職場の状態は従来の本工主義とは距離を取らねばなりませんでした。
この時代になるといわゆる「パートのおばちゃん」だけではなく、パートで売り場のリーダーを務める人やパートタイマーで家計を支える人など私達が考えるパート像から、すでにかなり進歩してきたという実感があります。さてイオン労連などはパートタイマーに「正社員になりたいか」と聞くとその答えは半々でした。「子供がまだ小さい」「親の介護がある」「正社員は忙しそう」という解答がありました。正社員に対して、虐げらる非正規雇用社員というより、様々なプライベートの事情から正社員化には尻込みする人も多かったです。当然ですね。子供を熱を出した時、真っ先に親が迎えに行きます。正社員であれば色々と圧力あるでしょう。求められていたのは、正社員制度の柔軟化もありました。企業内労働組合と言っても小売業になれば長年働くパートタイマーの方が常連客の把握や売り場の工夫など様々な引き出しがあります。とは言え労働組合は「正社員の組織」と思われています。非正規雇用の組織化を一挙に進めたのは、彼ら小売産業の労働組合の宿願でした。小売関係の労働者が国際大会に行くと「ソシキカ、ソシキカ」という単語はもう日本語ではなく、国際労働運動の公用語にもなっています。実際国際労働運動においても、小売産業労働組合は1500万人ほど。国際労働組合総連合の組合員が2億人なので、5%から7%を占める巨大産別です。今後組織人員が増えていく産業と予想されます。後に日本サービス•流通連合も様々な議論がありましたが、ゼンセンに統合しました。ただその理念はしっかりと受け継がれ、ゼンセンは初めての小売業界出身の女性会長が就任しました。これからの小売産業は、もっと変わっていきゼンセン同盟もかつての労働組合最右翼組織からかなり穏健化が進んでいます。もっとも反共運動から成る運動も一部残っていますが、ゼンセンですら「SOGI」を訴えるようになりました。
甦れ、かつての運動
さて非正規雇用の組織化はかつて週刊誌で攻撃された頃に比べれば、かなり組織化できています。正社員は給料天引きで組合費が引き落とされるわけですが、非正規雇用社員はだいたい定額の人が多いと思います。私の単組ではワンコインです。だけど組織化についてはまだまだ道半ばですが。
非常に多いのはジェンダーばかりではなく多様性の取り組みは増えました。外国人労働者の組織化はJAMやゼンセンなどが相当熱心で「一般財団法人 Japan Leading Edge Foundation」の連携は私達ゼンセン運動とは遠いはずの産別も役員は学習会に参加します。過度な外国人労働者の受け入れは今後労働組合の課題になると思います。ただ受け入れた労働者は労働運動として受け入れ体制は整えていくべき課題でしょう。今は父親が休んで病気の子供の面倒を見て、お母さんが出勤する家庭も少なくないです。「夫婦別姓」は別に社会のリベラル化というより、社会の変化に対応するために必要な制度で野田佳彦率いる立憲民主党がその実限を目指すなら労働組合の意見も少しだけでもいいので聞いて欲しいです。多様性の必要性、社会の要請は私たちも重々承知です。また収入の壁を撤去することについてはほとんどの産別が賛成でしょう。ただ一点を申し上げると、労働組合から立場から言えばどんどん稼いで、納税、社会保障費を払うことで公共インフレが整えられ、安定した年金制度の恩恵を受ける事を重視しています。安易な減税理論に傾いた国民民主党は失望しました。今後党側がどういう対応を取るのか分かりませんが、税の簡素化や公平化は応援しますが財源の裏付けが取れない大幅な減税は組合として反対です。重々承知してください。ものを知らないマスコミのような事は言いたくないですが、これは旧総評とか旧同盟とか関係なく私たちは働くことを中心とした安心社会で単純に手取りの増やし方が大幅な減税ではかなりの組合票が流出すると考えています。どうかそれに目を背けないでください。
日本サービス•流通連合などはもう消えた産別です。ですが彼らの運動は労働運動の方向性としてかなり定まってきたという実感もあります。もう非正規雇用に何もしていない労働組合と言われないよう、いっそうの奮闘が求められます。