見出し画像

Vol.26「補う」「超える」「信じる」「広げる」「畳む」「働きかける」

今回は、科学の視点から組織の未来を考える「ピープル・アナリティクス」の分野のパイオニア企業を率いる鹿内さんにお話を伺いました。
データサイエンスという言葉を聞いて久しいですが、実際に、研究者でもある鹿内さんが率いる企業は、科学的であると同時に、鹿内さんの組織への想いが詰まっています。創業から現在に至るまでの、鹿内さんの組織との対話をお伝えします。

企業理念に共感し、弱点を【補う】ことで対応障壁を取り除く
研究者であった鹿内さんは、大手人材企業に入社後、社内起業制度を活用し、当時同期入社の方と、現在の会社の前進を立ち上げられます。
当時は、ピープル・アナリティクスという言葉も新しく、市場自体も今のように確立されていない、まさに黎明期。鹿内さんは、本格的にピープルアナリティクスを礎としたサービスを市場に提供すべく、大手人材企業に在籍しながら、複業としてシンギュレイトを立ち上げ、活動を始めました。

「会社を軌道に乗せるためには、自分が、今走らなきゃいけない」という意識の中で、走り出した鹿内さん。
「まず、自分を強化してくれる人材より、弊社に共感し、事務的な手続き作業、経理作業などの弱点を「補う」人に仲間になってもらいました」

自分が今、走るといった時に、ちゃんとやればできるけれど、心理的に対応障壁が高そうなことを、しっかり補って、気持ちを軽くして動き始めたのだそうです。
そして、対応してもらう先があるからこそ、鹿内さんはご自身の対応障壁を取り除くことで、より集中して事業に取り組めたのですね。

法人を発足すれば、あれも、これもと数多くの業務が生まれます。ご自身のできることに集中できる環境を作るために、自分で全てこなすのではなく取り除き、「補う」から始める。今後、起業される方に必要な視点ではないでしょうか。

事業の核を強めて「引き上げる」人材への経営者を【超える】期待
ご自身が走ることを補い、鹿内さん自身が集中して事業に取り組める環境が整ってきたタイミングで、事業の核となるデータサイエンスを「強める」「引き上げる」人材が参画し、組織は新たな局面へと向かいます。まさに、ご自身と一緒に走り、共感を持って進める、心強いメンバーと共に、さらに事業成長に向けて走り始めたのです。走り、強め、補うチームができていくフェーズについて、鹿内さんに、組織運営や、メンバーに対する当時の想いを振り返っていただきました。

「働きがいと経済成長を両方大事にしたい」

鹿内さんが、このように口火を切りました。
「これは今のサービスのコンセプトでもあるんですけど、いわゆる働きがいと、経済成長、その両方を求めています。経済成長は、自社の経営といった視点になりますが、一方で大事にしたいのは、参画しているメンバーが、何をやりたいか。つまり、主体性がブレークスルーになると思っています」

メンバーの方の働きがいー自分は何をやりたいのか?主体性について、改めて考えさせられる視点ですね。さらに、鹿内さんは、こう付け加えてくださいました。

「僕を超えてくれない人は、いらないなっていう感覚があります。社長の話は、はいはいと聞いて勝手にその先をやりたがる、そんなメンバーで組織づくりをしたいと、創業当初からずっと思ってきました。自分がキャップ(蓋)になってはダメだとずっと思っています」
経営者にとって、「社長を超える」は、簡単には言えない視点と言葉ですが、そこには、鹿内さんの人と組織への強い想いを感じます。強く、ご自身の事業や、取り組まれている分野にコミットされているからこそ、組織長である自分が組織の蓋をしてはいけない。常に、メンバーに自分を超えてもらいたい。並々ならぬ覚悟と共に事業に向き合われている心が伝わります。

経営者を超えて「突き抜ける」メンバーへの成長をとことん【信じる】
ここまでは、「働きがいと経済成長」の「働きがい」の視点でお話を伺いましたが、組織である以上、経済成長も必要です。

「僕がどう考えているか理解した上で、メンバーが自分を超えて突き抜けるのは、時間がかかる話です。だからこそ、見て見ぬふりをしたり、口出しをしないようにしています。こういった運営は、メンバーを信頼するからできることでもあります。自分自身が、スポーツをやってきたり、大学院や大学の教員として修士課程や博士課程の学生をたくさん見ている中で、タイミングだけはわからないんですが、突き抜ける人たちがいる。ただそのタイミングって本当にわからないのだけれど」

場合によっては、任せたデータサイエンスのプロジェクトに取り組むメンバーが、想定とは異なる方向を打ち出す状況も起きるそうです。しかし、そこで突き抜けたからこそ、新たな面白さに繋がるし、経済成長にその面白さを繋ぎこむ醍醐味もあると笑顔で話される鹿内さん。

これまで、何度も突き抜けた人々を育て、見てきたからこそ、信じて待つ。メンバーの主体性を信じ、必ず超えていくと信じて続けていらっしゃる姿と、そこから日々生まれるイノベーションの種に、大きな感銘を受けました。

発散の【広げる】と収束の【畳む】を繰り返し成長につなげる
思わぬ方向に突き抜け、それが会社の成長に繋がるような営みが起きている組織の運営には、混乱の手前での収束も重要だと、鹿内さんは話されます。

「混乱とは思わないですが、風呂敷が広がってしまった(発散の)組織状態のように見えることもあります。放っておいたら組織やメンバーが混乱するな、と思っています。一方で、個人でやりたいことがあって、試している段階とも言える。うまくいかないと思えば、本人が状況を畳む(収束する)こともあるし、僕自身で、状況を畳みにいくこともあります」

「場合によって、多少の不安を感じる方も多分いらっしゃると思います。まさに、信頼と不安が対になっている。そう考えると、僕らのコミュニティというか、会社に参画するメンバーの一つの要素は、大丈夫と、メンバーを信頼して広げられることですね。みんなが許容できる不安の範囲で、しっかり広げていく。僕自身も、ダイナミックにチームの状態を感じ取って運営をしていきたいです」

発散と収束を繰り返し、螺旋階段のような組織成長を描いているイメージで運営をされているからこその表現です。

楽しく追求し、成果を「残す」ために【働きかける】
働きがいと経済成長の両方を踏まえて、組織をダイナミックに感じ取っていく、言わずに突き抜けるのを待つ。そんな運営だからこそ、組織メンバーにこれだけは伝えなければ…といった瞬間はあるのでしょうか? 

「2つあります。成果を残したい。成果を定義できないとか、追求できなくなってしまったら、厳しく言っています。また、思わず楽しくて、やってしまうといった主体性の源泉を大事にしたい。一緒に働いている人同士が楽しく、刺激になるような働きかけ(エンカレッジ)をすることがあってこその運営です」

鹿内さんは、成果とエンカレッジ、この2つができていない時は、厳しく言及しているそうです。そして、何か成果を残せない原因があるなら、一緒にエンカレッジしていくことも、共に働く仲間だからこそ大切にされているのが伝わります。

思い切り動ける組織を用意し、その中で突き抜け、共に励まし合いながら成果を出していく。鹿内さんの運営には、揺るぎない仲間と彼・彼女らの可能性への圧倒的な信頼がありました。成果とともに、組織を育てていくために、社長自らがブレずに仲間を信じ抜く。
社長だけではなしえない、新たな地平を目指す組織運営に胸が熱くなると同時に、しっかりと自分、仕事、共に働く仲間と向き合うことの大切さを改めて感じるお話となりました。

【取材協力】
株式会社シンギュレイト 代表取締役
鹿内 学様
https://cingulate.co.jp/

《この記事に関するお問い合わせ》
ラボラティック株式会社 広報担当
info@laboratik.com