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Vol.21「思い込む」「伝わらない」「触れる」「許す」「学ぶ」「伸ばす」

リスクが起きてもモノづくりが止まらないサプライチェーンマネジメント。今回は、それをデータの側面からサポートするためのSaaSを運営する会社を起業し、顧客からの信頼を得て活躍されている代表の津田さんにお話を伺いました。
津田さんの起業のきっかけは、これまでのご自身の経験から湧き上がった「顧客が求める価値に貢献したい」「社会的に意味のあることを事業としたい」という強い思いだったそうです。

自分が【思い込む】だけでは【伝わらない】という気づき

「顧客価値を基準に、社会的に意味のある事業をするというのは、自分にとっては普遍的な考えで、誰にでも理解されるものだと『思い込んでいた』」と津田さんは話されます。過去3度の起業経験を通して、自分自身は「顧客価値の最大化」を基点に、「顧客の喜ぶ先に企業の成長がある」という位置付けで事業を進めようと奮闘されているにも関わらず、組織の方向性を合わせることができず、事業が停滞してしまうといった苦しい経験もされてきたと話されます。
このような歯痒さと共に、課題の真因を会社の仕組みやご自身の中に求め、何を改善したら同じことを繰り返さないのか? と自問自答の末に、たどり着いた答えのひとつは「自分が外したくない価値観を言語化して伝えないと、人には『伝わらない』」という点だそうです。

「言語化」という言葉は、津田さんが、今回の取材でも度々使われていた言葉です。「誰にでも伝わるように、言葉にする」という意味だけではなく、津田さんの「言語化」には、ご自身の「思いを言葉に込める」という強い意志の表れと覚悟を端々に感じました。

いろいろな価値観に「触れる」ことから、必要な人材像が見えた

思いを言葉に込めた価値観の言語化について、具体的な経験も伺いました。

津田さんの言語化は、実は、過去のご自身の反省を踏まえてのものです。
「採用初期は『技術的に優秀な人を採用すればいい』と、自分自身も、実は考えていました」
そういった採用を行った結果、会社が目指す方向性や、ご自身の価値観との齟齬を感じる機会も多くあったそうです。

言い換えれば、人を採用し、組織を構成していく中で、いろいろな人の意見や価値観に「触れ」、自分との価値観の違いを目の当たりにされたのです。

採用を通して、「事業が儲かりそうだから、お金になりそうだから」という理由で応募してくる方や、「自分の技術を磨きたいから」「技術が学べそうな会社だから」「自分のやりたいことができそうだから」と、様々な志望理由の方と向き合って行く中で、津田さんは、ご自身の顧客志向に根差した価値観を確立されると同時に、求める人物像についても、改めて明快に描くことを続けられたと言います。

向き合い続けた末、顧客や社会が本当に欲するものを提供するというマインドを持った人、つまり、顧客のため社会のために価値を積み上げていくということに共感して動機づけされる人、といった人材像が言語化を重ねて描かれました。

採用面接の際に「顧客価値を重視した仕事という考え方に共感する」と話される方でも、いざ実際に仕事を始めていくと、会社が求める基準を満たせなかった経験を踏まえ、採用は、複数人の目を通して行われているそうです。

このように、多くの人の価値観に触れ、自問自答し、他者の目も入れながら「自社に必要な人材像」の「言語化」を洗練させて続けるーー決して、一朝一夕にはいかないからこそ、「言語化」に思いが宿るのだと、改めて感じられるお話でした。

「言語化」は単に言葉にするだけでは伝わらないこともあります。「誰にでも伝わる・分かるように言葉にする」という目線で、組織における「言語化」について、次のようなポイントも挙げてくださいました。
「業務に対する期待値を、メンバーにいかに伝えるか? 特に、採用時に明確に期待値を伝えないと、入社後にキャパシティオーバーになってしまい、互いに疲弊してしまいます」
確かに、事前に具体的な期待値を伝え、双方で合意するというよりも、採用者の期待が膨らんでしまうといった話は多いものです。採用のみならず、「このレベルの質や量の仕事ならできるはず」と自分の想定で動かしてしまった経験、みなさんもありませんか?

失敗を「許す」ことからうまれる「学ぶ」企業文化

「弊社のバリューの1つは、「実験のように数多くの仮説検証を重ね、学習し続ける」なのですが、ありがたいことに、言語化を進めながら、『学ぶ』企業文化も育ってきました」

「学ぶ」企業文化とは「オープンに話して学び合う」「失敗した経験を分かち合い、そこから学ぶ」ことを意図されており、「失敗はひとつの仮説検証であり、それは学びの場であると考える」と話されます。

昨今、失敗を恐れないといった視点は、社会的にもよく取り上げられています。そもそも、失敗を避けることではなく、失敗から学びを得ることが重要視されるようになっています。

実際、津田さんは、率先してご自身の失敗もメンバーの方と共有されているのだそうです。そのため、事業に対してネガティブな影響がありそうな事象が発生した場合もなるべく早くシェアすることを心掛けていると言います。
「自分一人で解決してしまうと、メンバーの学習機会を奪うことになる。また、メンバーが考える『より良い対処法』を見逃すことにもなる。失敗を『許す』ことで、継続的に学ぶという考え方が定着してきました」
失敗から学び、失敗を許す。組織を成長させるために重要と分かっていても、実践となると二の足を踏んでしまうことも多いものですが、言葉だけでなく、実際の行動でもこの文化を根付かせることができるのは、組織のメンバーの成熟と津田さんのリーダーシップの賜物ですね。

事業も組織も「伸ばす」

まさに、今、世の中にまだないけれど、必要なサービスを構築している津田さん。今後の展望についてお聞きすると、「Resilireのコアバリューは多階層のサプライチェーン構造を可視化し関係企業を繋げられること。このコアバリューを軸として、サプライチェーンを強くする為のプロダクトをマルチに立ち上げていきたいと考えています。その為に、顧客課題の吸い上げなら顧客への価値提供までのデリバリー速度を格段に高めていく必要があると思っています。」と熱くお話しくださいました。

そんな革新的なサービスの源泉は、自社の人と組織。自社のバリューへの理解や、メンバーが顧客価値と向き合うことができる状態あってこそだと噛み締めるように話されます。
一重に、そしてブレずに「私たちの方向性に共感し、それに対応できる人材を増やす」そして、「事業を『伸ばす』とともに組織も『伸ばす』」という、強いリーダーの意識や姿勢がもたらすパワーを、改めて強く印象付けられるお話でもありました。

顧客目線を持ち、顧客や社会に貢献するという価値観を共有できるメンバーとともに、未来を築き続ける津田さん。その姿勢は、更なる事業展開に向けて、真っ直ぐに、ご自身の価値観を言葉にし続け、日々、周りの価値観に刺激を受けながら、進まれている姿に大変勇気づけられました。また、津田さんの一貫した「言語化」と向き合う姿勢を通して、人と組織のコミュニケーションのあり方についても、振り返る機会を頂くことができました。

【取材協力】
株式会社Resilire 代表取締役
津田 裕大様
https://corp.resilire.jp/

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ラボラティック株式会社 広報担当
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