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ヤクルト1000のエビデンスを検証① ストレスをやわらげる効果

ヤクルト1000はものすごく流行っていて、今は買えない状況ですね。なんと発売後半年で2億本も売れたようです。

このヤクルトですが、機能性表示食品であり、
・ストレス緩和
・睡眠の質の向上
が謳われています。

これらのエビデンスはどうなのか、元論文を見て調べてみたいと思います。今回は、「ストレス緩和」について調べます。

なお、睡眠の質についても記事を書きました。

元論文

ヤクルト1000のストレス緩和の論文は、

Probiotic Lactobacillus casei strain Shirota relieves stress-associated symptoms by modulating the gut–brain interaction in human and animal models
(プロバイオティクスLactobacillus casei strain シロタ株は、ヒトおよび動物モデルにおいて、腸と脳の相互作用を調節することによりストレス関連症状を緩和させる)

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/nmo.12804

という論文です。今回紹介する内容はこちらの論文を基にしています。

実験条件

この論文内では、ヒトに対する介入試験と、ラットを用いた動物試験の二種類が行われています。
その中でも、この記事での説明はヒト試験にフォーカスします。

試験飲料:乳酸菌シロタ株 YIT 9029で発酵させた牛乳および非発酵のプラセボ牛乳(乳酸菌:10億個/mL)
プラセボ:非発酵のプラセボ牛乳+乳酸(風味調整)
対象者
徳島大学医学部4年生の健康な172人の学生を対象とした。
これらの学生は、5年生に進級するための必須条件である国家試験を受ける予定であり、この試験は日本の医学生にとって最もストレスのかかるイベントの1つと考えられている。
除外条件
(i)30歳以上、(ii)現在喫煙者、(iii)投薬中、(iv)牛乳アレルギー、(v)精神障害と診断されているか、自己評価式抑うつ尺度(SDS)で60点以上の場合
食事条件
試験中、被験者は他の発酵乳、ヨーグルト、乳酸菌飲料、プロバイオティクスおよびプレバイオティクス製品を摂取しないよう指示された。
実験デザイン
被験者は、年齢、性別、肥満度(BMI)、健康実践指数(HPI)、一般健康質問票スコア(GHQ)、状態像不安指数(STAI)、スクリーニング時の唾液コルチゾールレベルをマッチさせた2群に無作為に振り分けた。
試験当日までの8週間、試験飲料またはプラセボ乳を1日1回100mL(※乳酸菌1000億個相当)摂取する群に無作為に振り分けた。介入期間中、被験者は毎日および毎週アンケートに回答した。唾液は、日内変動の影響を排除するために16時から17時の間に、ベースライン時、介入開始6週間後、試験前日、試験当日の直後に採取された。唾液サンプル採取時には、自己申告による不安レベルも評価された。試験終了時に、被験者にどのサンプルを受け取ったか推測してもらうことで、盲検化を確認した。
また、腹痛や風邪などの身体症状について、毎日アンケートを実施した。

高田ら、2016

結果

心理学的パラメータの変化
被験者の不安状態はSTAIで測定したが、試験前日が最も不安が高くなることが分かった。こちらは両飲料の差は見られなかった。
一方で、唾液中コルチゾールでは、乳酸菌飲料を飲んだ方が、プラセボ飲料よりもコルチゾール増加を抑えられた。ストレスを受けるとコルチゾールが増加することが分かっているが、それが抑えられたことから、被験者のストレスが減っていることが分かる。

身体的症状の変化
乳酸菌飲料群では、風邪・インフルエンザ症状の発現率が介入5-6週目に有意に低く、腹部症状の発現率が7-8週目に有意に低く、プラセボ群に比べ顕著であった。

筆者考察

この論文を読む限り、
・8週間毎日、乳酸菌を1000億個摂取すると、
・強いストレスがかかる試験前日に唾液中コルチゾールの増加が抑えられ、
・風邪・腹痛などの症状が減った
ことが分かります。

ここでは紹介しませんが、ラットを使った動物試験の結果も含めると乳酸菌シロタ株を1000億個飲んでストレスが減りそうだ、というのは示せそうです。

ただ、一方で、以下の疑問が残ります。

試験条件に対する疑問

試験中、被験者は他の発酵乳、ヨーグルト、乳酸菌飲料、プロバイオティクスおよびプレバイオティクス製品を摂取しないよう指示した

上記の試験条件で、プラセボ群は一切の乳酸菌を摂っていないので、
①プラセボ群では乳酸菌を摂らない生活により腸内環境が崩れ、ストレスを溜める結果になった。
②乳酸菌アリ/ナシしか試験条件がないので、乳酸菌1000億個という量に効果があるのか分からない。他の乳酸菌食品・飲料との差が分からない。ヨーグルトや普通のヤクルトでも同様の効果が得られる可能性がある。

結果の対する疑問
③即効性は結果を見る限りはなさそう。
④8週間の摂取後に、試験前1日のみコルチゾールの量が抑えられているが、試験2週間前のコルチゾール量には差が見られない。コルチゾールが抑えられる条件は、強いストレスがかかるときだけ?
⑤コルチゾールが減るものの、STAIによる不安スコアは減らない。ストレスの減少に実感があるのか全く不明

実際ヤクルトのHPにはこういう細かいところまで記載されていないので、一般消費者はコルチゾールのグラフを見て、「ストレスが抑えられるんだな」、というくらいしかわからないかもしれません。

ここまで読んで、まぁ、私は一本30円の普通のヤクルトでいいかなと思ってます。

ちなみに私は毎朝普通のヤクルトを飲んでます。OKストアで10本入り332円で安いんですよね。1年前はピルクルを飲んでましたが、ヤクルトの方がおいしい気がしてます。とても腸の調子がいいです。

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