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咲坂伊緒「サクラ、サク。」/石塚真一,NUMBER8「BLUE GIANT」/中井英夫「虚無への供物」

月が替わったら読書メーターのまとめとともに印象に残った作品について書いておく。

2024年5月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:3926ページ
ナイス数:93ナイス

https://bookmeter.com/users/959347/summary/monthly/2024/5

4月のわずか漫画3冊という体たらくから一転、5月は漫画14冊と小説その他3冊を読みました。
今回はその中から漫画「サクラ、サク。」と「BLUE GIANT」、小説「虚無への供物」について書きます。



咲坂伊緒「サクラ、サク。」

咲坂伊緒先生は「アオハライド」を読んで好きになり、長編作品は全て読んでます。最新作の「サクラ、サク。」は2021年から2023年にかけて別冊マーガレットで連載。自分は単行本完結を待って一気読みしようと決めていました。全9巻。

主人公の咲(高校1年生)は、前までは自分の存在価値を肯定できない引っ込み思案の女の子だったが、ある日電車の中に忘れたバッグを親切に駅に届けてもらったことに感激、それからはどんな些細なことでも積極的に人助けすることを心がけて自分の価値を確かめるようになる。バッグを駅に届けてくれた拾い主の名前もわかっていて、以来、咲にとってその人はいつか会ってお礼をしたい憧れの探し人になっていた。
高校に入学して、クラスメイトの陽希の兄の名前がその探し人と同じ名前であることを知り、何とか会うことができないかと陽希に近づく。
咲と陽希と陽希の兄と、ひょんなことから親しくなったクラスメイトの琴乃と美斗士、彼らを中心にした恋と誤解の青春ラブストーリー。といったところ。

言っちゃわるいけど、咲の度を超えた人助け親切心というか、余計な気遣いが周囲をかき回して話がこじれる。後半は気遣いと勘違いが混ざりあって、読んでいて非常にイライラする。話としては想定していた通りやがて咲と陽希が互いに思う関係になるのだが、おまえらその状況でなんで両思いを確信して付き合わないんだよ!! とじれったさのあまり漫画を床に叩きつけたくなる。
しかしさんざんイライラさせた挙げ句、最終的には読者のイライラを綺麗さっぱり回収するカタルシスエンディングだった。咲坂先生の作品はその綺麗な画が好きだし、心に響く台詞や演出も好きで、最後にはそれらがちゃんと散りばめられていた。
オススメではないけれど、ファンとして読破できて良かった。

石塚真一,NUMBER8「BLUE GIANT」

正確にはアメリカ各地を巡る「BLUE GIANT EXPLORER」のラスト9巻と、次章のニューヨーク編「BLUE GIANT MOMENTUM」1巻を読んだところ。
さらに前の章のヨーロッパ編「BLUE GIANT SUPREME」(全11巻)はバンドメンバーのキャラも良くて、感動シーンも多く、主人公宮本大のサックス演奏も画から圧倒的なものが聴こえてきていた。なので次のステージでこれ以上のものが描けるのか?と「EXPLORER」は半ば懐疑的、少し興冷め気味に読んでいた。
そしてやはり「EXPLORER」の新しいバンドメンバーは「SUPREME」を超える熱をなかなか感じられず、ちょっと停滞感を感じていた。
しかしそんな「EXPLORER」も最後は良かった。ネタバレは無しにしておくが、劇場版あってのこのエンディングだったのではないかと自分は勝手に思っている。(ほぼネタバレか?w)
上原ひろみ様の素晴らしい楽曲と劇場サウンドに圧され、思わず感動させられてしまった劇場版。原作とは異なるストーリーだったのだが、劇場版および原作のストーリーディレクターNUMBER8氏の粋な計らいか、「EXPLORER」も終わり良ければなんとやらなのでした。(  ˙³˙)~♪
で、新章の「MOMENTUM」はいよいよジャズの本場、頂点を極めんニューヨーク。ヨーロッパではジャズのフェスで聴衆を熱狂させるまで上り詰めたのに、アメリカに入ったらまた無名のゼロからスタート。そして地道に各地でライブハウスの出演を取りつけ、客を圧倒し、ネットもバズらせてきた大。それがニューヨークの地に立つとまた無名の東洋人プレイヤー扱い。
バトル漫画で言う“強さのインフレ”みたく、“演奏力のインフレ”が起こってるよこれ。着々と上のステージに上っていく大だが、読んでるこっちはまた底辺からのスタートかよ…と少々お疲れ気味です。( ˟꒳˟ )
最終的に世界的プレイヤーになることはわかっているけれど、どんなエンディングで収めてくれるのか、何卒お願いしますよ〜。

中井英夫「虚無への供物」

夢野久作「ドグラ・マグラ」、小栗虫太郎「黒死館殺人事件」と並ぶ日本三大奇書のひとつ。読み始めたのはじつは2月初旬頃です。上下巻すべて読み終えた先月にどちらも読了登録しました。読むのに約4ヶ月かかりましたよ…。
三大奇書の中では一番読みやすいと言われているけれど、正直ワケがわからなくて読むのがダルかった。

事故死や不審死で不幸が近頃続いている由緒ある家系、氷沼家について、氷沼家にちょっとした縁がある者たちがゲイバーであれこれダベリあい(ゲイバーでの談話シーンから始まるのもまず登場人物が男なのか女なのかわからなくて混乱したんだけど)
「これはきっと新たな殺人事件が起きるわよ」
と勝手な予言の後に予言通り事件が発生。(は?)
氷沼家の若い子息が浴室で急死したのだ。普通に見れば事故死で済まされそうなものを密室殺人だとみんなよってたかって疑って、あれこれ密室殺人のカラクリや犯人の動機など推理合戦を始める。
読んでいてまず思ったのは、普通に不謹慎。人の死を遊び半分に推理ごっこしてるこの人たちワケわからん。何なんこれ?と読んでいるうちに氷沼家で第2の殺人(?)が起きる。これも鍵のかかった部屋で事故とも見える死。これって推理ごっこしてる当人たちが怪しいんじゃないか?と思いながら読んでるうちに次々と事故なのか殺人なのかハッキリしない事件が氷沼家絡みで起きていく。
どういうオチになるのかと思いながら一生懸命最後まで読んでいくと、「あっ、えっ?そゆこと?!」てなって、最後の最後には「虚無への供物」というタイトルの威力にのけぞることになる。

ところで、なぜ私がこの「虚無への供物」を読もうと思ったか。それはTwitterで「私に衝撃を与えたミステリ10選」というハッシュタグで多くの人がこの作品を挙げていたからです。
衝撃、といえば衝撃なのかもしれないが、「こういうミステリーもあるのかぁ〜、ってかこれミステリーって言うのか?」というのが率直な感想。
まぁ他ではなかなかお目にかかれない変わった趣向の小説でした。まさに奇書。
ネタバレは無しにしておきますが、1964年発行の著書でありながら、そのメッセージはいまだ現代社会に於いても通ずるものであり、そこはちょっと衝撃を受けました。良い読書経験にはなったけど、三大奇書の他の2作品は遠慮しておきます(^ ^;)…しんどいのはもうたくさん。

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