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【エッセイ】改名してその後 佐山由紀

筆名を旧姓の佐山由紀に変えてちょうど一年になる。

五年間の筆名を変えることには大なり小なりの抵抗はあったが、いざ旧姓の佐山由紀で詩を書いてみるとなんと素敵な解放感を味わっているところである。

産まれたての私、私を形成してきた私、誰のものでもない私、長くなりそうだから纏めると「本来の私」といったところだろうか。

昨年九月初旬、夫の故郷である福岡に帰省した。
夫の親戚群に囲まれるのはとても賑やかで楽しい。衣食住、東京とは少し違う空気に触れると色んな事が新鮮でいちいち感動してしまう。そうした唯一の東京者の私はなんだか親戚群からちやほやされるのだ。愛想笑いも心地良い。
しかし集合写真を撮ってみると、相変わらずの私だけ血の繋がりがない顔立ちやどうしたって馴染むことができない夫の故郷の雰囲気、明らかに何かが違う違和感と疎外感に、家族とは何だ、というもやもや思考でいっぱいになる。

松下育男さんのzoom教室の対談で伊藤比呂美さんがこのような事を仰っていた。
「その土地の詩を書くなら三年以上住んでから書け」
みたいなことだったと記憶している。旅の詩は嫌いではないし書いてみたいとも思うが、福岡に帰省して何となく比呂美さんの言わんとする所を掴めた気がした。

さて兎にも角にも「本来の私」で詩を書くことで得た解放感。たかが名前されど名前。佐山由紀という個になった私は何にも縛られることなくLaVagueの波に自由に乗って泳いで踊ってみる今日この頃である。


追記
昨年十月に三年半ぶりに開催された松下育男さんの横浜教室に参加した。尊敬する先輩女性詩人さんに「離婚したの?」と聞かれ笑ってしまった。そうか。女性の姓が変わるイコール結婚か離婚なのである。思いもよらぬ問いかけと改めての気づきについ笑ってしまったが、家庭円満ですのでご安心を。

佐山由紀さんが「Simple is best」と「Spring has come」を寄稿された詩誌LaVague vol.2はこちらから購入できます。


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