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【色をめぐる旅】 -カーマインレッド-

“カーマインレッド”

この鮮やかな赤は、何から作られた色かご存知でしょうか。

実は、“”から作られた色なのです。

“コチニールカイガラムシ”という、サボテンに寄生する虫のメスから作られているのです。

コチニールカイガラムシイメージ

カーマインレッドの歴史

ヨーロッパにおいての、この色との出会いは16世紀まで遡ります。

当時、広大な土地を求めたスペインは、メキシコ高原を支配していたアステカへの侵略をはじめます。
アステカ文明滅亡のはじまりでもあったこの時、侵略者たちはその地の人々が“鮮やかな赤”を身に纏っているのを目の当たりにします。

かつては、今のように日常の中に“色”というものは、多くありませんでした。
そのため、“色”には価値がつけられ、高額で取引がされていたのです。

彼らは、アステカからその染料と技法を持ち帰ると、その後約250年にわたり、その製造法を国家機密とし、コチニールの赤色を独占します。
貴重な色は、高価な宝石と同等のものとして、他国との貿易に用いられました。

コチニールカイガラムシ

“カイガラムシ”といえば、園芸家の間では“面倒な虫”の1つとして有名なことでしょう。植物に寄生しては、その植物から栄養を吸い取り、枯らしてしまうことがあるからです。
またその種類も多く、一口でカイガラムシと言ってもさまざまな性質、形態のものがいます。

カーマインの色に使われる“コチニールカイガラムシ”は、メキシコに生息するカイガラムシの一種。

ところで、この虫は一体どうやって色を作りだすのでしょうか?

この血のように鮮烈な赤は、コチニールカイガラムシのメスが身を守るために作りだした“酸の色”なのです。

そう、身を守るための色ーーー
この色を取り出すには、虫たちを殺さなくてはなりません。
命を思うと、虫たちの“血”であると言っても過言ではないでしょう。

虫たちから赤い色素を取り出すには、1gにつき100匹ほどが必要となります。100匹の虫の命がかけられたと考えると、たった1gが重く感じられます。

まとめ

『アルルの部屋』(1889年)ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ作
※イメージです

取り出された色は、コチニール染めとして染色にも用いられた一方、絵具としてゴッホやレンブレントの絵画にも使われました。

有名なお話ですが、身近な口紅やイチゴ牛乳などにも使われています。

私たちの生活の中には、たくさんの色が溢れています。

普段、何気なく当たり前のように見ている“色”ですが、それが何処からきて、どのように作られたのか。
ちょっと思いを巡らせてみるのも、新たな発見につながるかもしれません。

参考書籍:「超図解 ぬまがさワタリのふしぎな昆虫大研究」ぬまがさワタリ著 2019 KADOKAWA 出版


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