ハムストリングス肉離れ復帰アプローチ
ハムストリングスの肉離れは全スポーツ障害の10%程度との報告が多く見られ、再発率も非常に高いスポーツ障害の1つとされています。
ハムストリングスの十分な筋機能が改善していない状態でのスポーツ復帰は、再発のリスクが高くなり、その後のパフォーマンスにも影響を及ぼすことから、病期に合わせて適切なアプローチを行う必要があると考えます。
今回のnoteでは、
ハムストリングス肉離れの概要から復帰アプローチまで、病期に合わせた全ての流れをご紹介していきます。
1.ハムストリングス肉離れ概要
解剖・運動
ハムストリングスは大腿二頭筋長頭(BF long)・短頭(BF short)、半腱様筋(ST)、半膜様筋(SM)の4つの筋で成り立ちます。
BF longとSTは近位で1つの腱となり、SMがその下に薄い腱膜となって巻き付く様に融合し、共同筋腱となり坐骨結節に付着します。
またハムストリングスはBF shortを除き2関節筋であるため、股関節と膝関節の影響を受けると考えます。
BF longは仙結節靭帯にも起始しているため、仙腸関節の影響も受けることが考えられます。
また腓骨頭に停止し長腓骨筋と筋膜で繋がっているため、腓骨の動きの影響を受けることが考えられます。
STは浅鵞足となり、SMは深鵞足となり脛骨内側にそれぞれ付着するため、脛骨の動きに影響を受けることが考えられます。
筋の特徴
BF longとSMは羽状筋であるため、筋線維長が短く、筋線維数が多く、生理学的筋横断面積が大きいため、力の発揮に有利な構造となっています。
STは紡錘筋であるため、筋束が筋の長軸方向に対して平行に配列しており、筋線維数が少なく、収縮速度が速いのが特徴となります。
肉離れ重症度分類評価
肉離れの重症度分類では奥脇の分類が多く用いられます。
また簡易的な評価方法であるSLRの角度によって大まかな重症度の評価が可能となります。
陥凹や皮下出血の程度、ActiveSLRの左右差が大きくなると、肉離れの重症度は高くなり、これらの評価と画像診断で総合的に判断し、重症度の判定を行うことになります。
Active Knee Extension test
股関節屈曲位の状態から膝関節を伸展させるテストになります。
30°以上の左右差は重症度が高くなるとされています。
また、このテストではハムストリングスの近位を伸張させた状態から遠位を伸張させるため、PSLRとの比較をすることで有益な情報を得られることが考えられます。
柔軟性評価|ASLR test
重症度分類|奥脇の分類
奥脇の分類はMRIの結果を基に3段階に分類します。
Ⅱ型では筋腱移行部の損傷であり、腱膜損傷の有無が重要となります。
※腱膜損傷ではコラーゲンの再生と成熟に6-8週程度を要するとされています。
遠心性収縮は腱膜に過剰な伸張ストレスを加えるため、修復を確認してから実施することが望ましいとされています。
そのため損傷の程度だけでなく、損傷部位の特定は重要となります。
受傷起点
ハムストリングス肉離れはスプリントタイプ(ハイスピードでのスプリントや加速局面)とストレッチタイプ(脚を遠くに伸ばす状態)に分けられます。
遊脚期後半の踵接地の為に、股関節屈曲および膝関節伸展が同時に起こる際にハムストリングスは膝関節の伸展を制限し調整するためのブレーキ動作として働きます。
踵接地の際に地面からの床反力により瞬間的な力発揮が要求され、収縮様式が遠心性収縮から求心性収縮に転じます。
遠心性収縮時の受傷起点では、筋線維内の結合力が弛緩時の倍の強さになることから、その力は筋腱移行部の結合力を上回ることになり、筋腱移行部が損傷部位になりやすいとされています。
リハビリのポイント
以上からハムストリングスは他関節の影響を受ける他、筋それぞれでの機能も変わることから、機能を考慮してハムストリングスの筋機能を改善する必要があります。
2.肉離れリハビリstage.1|収縮痛の改善
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PT×ATの思考の整理
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