「けい」演劇の場の学び”人間賛歌「歌」を終えて”レポート2022.10
初めまして。
関東で役者をしています、
地域密着型一人演劇ユニット『赤キノコ山と蒸したお酢』代表、
創作集団「けい」作家部・俳優部所属のオガワジョージです。
今回はcreate model けい が2022年10月に行った活動”人間賛歌”のレポートになります。
このnoteマガジンはブランディングの一つとして、地域に向けての活動記録を公開し、経験を共有することを目的に行っています。地域への表現活動に関心のあるクリエイターさんに見ていただけたら嬉しいです。
今回は第3場「賛」から得た制作面での学びを活かしながら、
・過去に載せた企画書や準備段階で作成した企画整理書の振り返り
・展示に向けた制作面の準備
・実際に企画を運営してみての学び
・全体的なまとめ
から、良かったところや改善が必要なところを見つけていきます。
こちらが10月の”人間賛歌「歌」”のイベントレポートになります。
合わせてお読みいただけたら!
最後の方にリンク集がありますので、そちらからでも大丈夫です。
また、今回の8-10月活動レポートは20,000字ほどありますので、興味のあるところだけご覧いただけたら。演劇の場の学びはまとめに書かれています。
*****
8月8日~ イベント前、制作準備
「歌」の制作準備を始めるにあたって、今までと同様に1月段階にあった構想と第3場「賛」で感じたことを合体させていきました。
1月段階の企画書と「賛」の学びから
1月の段階では第4場「歌」はこのようなイメージでした。
当初は朗読のパフォーマンスに参加者を募集し、5日間かけて稽古・試演会をしたあとに、上演しようと考えていました。
「賛」で感じたことがこちら。
感じたのは、
・場をつくるとき、まだまだ声かけやサポートなど配慮できる面があった。
・対話で話したり聞いたりしてるとき、その人やものへの想いを感じた。
でした。
さらに、「賛」の改善点もクリアしようと考えました。
制作期間中のスケジュールに余裕を持つこと、対話についてより練習を重ねること、場づくりについて学んでいくこと、アンケートについて再考することがありました。
スケジュールに余裕を持つようにしたため、結果的に演劇やダンスなどさまざまな場に参加でき、その場のつくり方を参考にしていくことができました。
企画整理書
これらを踏まえ、このような形で進めようとしました。
第1場~3場であったことをもとに「歌」をつくるという部分は変わらず、ビジョンが「大切な人へ想いを伝えたいと思うような空間になる」から「経堂での時間に関心を持ち、交流が生まれる(空間)」へと変化しました。
また、会期を1週間ではなく、経堂アトリエさんの秋のフェスタに合わせて2日間にしました。
「賛」の改善点は制作の部分で後ほどふれていきます。
フライヤー作成、宣伝
今回の屋上の写真は、第2場「間」で撮影を担当していただいたスゲノ君が撮った写真を用いました。
この写真を「歌」のイメージに合わせるように明るめにしました。
以降はデザイン、キャッチコピーの没案です。
(日にちを間違えています…)
経堂アトリエさんやcreate model けいに協力してもらっている方々に相談し、「歌でお開き」になりました。
今回も地域の掲示板用のデザインは行わず、正規フライヤーのみの掲示となりました。
SNSの宣伝は8月26日から行い、9月1日から予約を開始できました。
紙版の正規フライヤーは2週間前の17日に受け取り、それ以降から今までご協力してくださったお店に置かせていただきました。
また、今回はラインなどで直接お声がけする余裕があり、多くの方にお誘いができました。
予約フォーム・確認メール
今回は自分で作業する時間があり、内容も多くなかったため、そこまで時間はかかりませんでした。
フォームからのご予約は過去最多の8名でした。
確認メールの発信は制作に時間がかかり、送るのが遅くなってしまいましたが、1週間以内には送れたように思います。
制作開始
8月~9月は「歌」の制作にあてようと考えてスケジュールを組んでいたため、さまざまな場に出向くことができました。
以下、「歌」の参考になると感じられたイベントなども書きます。
8月20日 リフレクティング体験会参加
8月24日 ダンス練習会、ハラスメント防止講習会参加
8月27日 ダンス練習会参加
8月28日 プライマフェイシイ観劇
9月3日 Lumeto「誰がために」観劇
9月6日 稽古会参加
9月7日 画家 Roy Taroさんと今後の打ち合わせ
9月8日 「賛」に協力してくれた西條くんとお話
9月10日 キルハトッテ「どこどこのどく」観劇
9月11日
岬企画「ガラチョ」観劇
エディット・ピアフプロジェクト「あなたはエディット・ピアフを知っていますか?」観劇
9月12、13日 TEAM空想笑年さん制作手伝い
9月17日 経堂にて友杉さんの個展のお手伝い
9月24日 経堂にてフライヤー配布
9月25日
経堂にてフライヤー配布、Hiphop Kindergarten WIP「Play!」参加
9月30日 経堂アトリエにて仕込み
太字のところは特に参考になったイベントです。
8月よりも前に組んでいたものもありますが、基本的に「歌」の制作と関連づけて、イベントスケジュールを組んでいました。
また、第2場「間」と第3場「賛」のイベントレポートと制作レポートを書けておらず、「歌」で第1場~3場のつながりを整理して示すためにも、並行して仕上げる必要がありました。
順を追って、制作過程を書こうと思います。
朗読「はじまりの歌」の制作課題
はじめに、完成したものを載せておきます。
こちらを参照しながら読んでいただくと、より面白いのではないかと思います。
PDF版はこちら。
変更後の企画整理書にこのように書いていました。
第1場~3場までの過程で感じたことや受け取った言葉をもとに言葉を綴って、日常の中でつながり、生まれたドラマを伝える作品を目指しました。
変更前の企画書でもこの部分は変わらず、経堂の街を眺められる屋上で、参加者の方々と一緒に朗読(群読)をするような光景は、僕が人間賛歌の企画を通して見たいと考えていた光景でした。しかし制作を開始した当初は、第1場~3場を通して受け取った言葉はあるものの、どんな形で上演しようか悩んでいました。
第4場「歌」は「想いを伝える」というテーマでした。
その想いの伝え方で悩んでいて、今までの朗読パフォーマンスの通りに僕一人で読んだ方が「想いを伝え」やすいのではないかと感じながらも、”お客様と一緒に読む”というアイディアを捨てきれずにいました。
個人的には”一緒に読む”ことで起きる瞬間を見てみたい気持ちが強くあり、どうにかして第1場~3場の流れを日常の中のドラマとして「歌」にしつつ、自然な流れでその場にいらしたお客様に参加してもらいながら、”お話を一緒に読む”という方法を考えようとしていました。
その方法を見つけるためには次の課題をする必要があると考えました。
課題
・書けていなかった第2場、3場レポートを書き、今までの流れを整理する。
・その流れをお客様に伝えるとき、朗読/群読のどちらが良いかを決める。
・群読の場合、体験としてお話の自然な流れで読める歌の構成を考える。
・参加してもらう側として心理的安全性のある場づくりの仕組みを考える。
そこで、レポート作成やさまざまな場への参加をしつつ、身近な人に相談したりしながらパズルのピースを集めてはめるように課題を進めました。
1.場づくりの仕組みを考える
場づくりについてのまとめです。
「賛」の改善点で挙げた、
・哲学対話やオープンダイアローグのような対話の実践は、
スモールステップで練習を重ねてから本番を迎えること。
・安全な場の作り方や声かけなどについて、
さまざまな視点から学んでいくこと。
の2つを改善したら、結果的に場づくりの仕組みを考えられるのではないかと思いました。
ハラスメント講習会は、演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会さんの講習会でした。
最近の演劇界のハラスメントについてを入り口に、ハラスメントとは何かを法律上の定義などから学び、どう対応したらよいのかの措置、実態調査で得られたこと、実際の事例を知りました。
どんなことがハラスメントにあたるのかを知れたことで、あいまいだった部分に明確な線が引けたように思いました。知っただけで終わらせずに、ここで得たことをきちんと実践していかなければならないと感じました。
特に、ハラスメントのリスクをなくすには「一方的な言動から、双方向のコミュニケーションの形にする」のが基本であり、これしかないという言葉が胸に残りました。
プライマ・フェイシイという舞台を観劇したとき、性被害の怖さや社会の歪みを目の当たりにしたようで、息が浅くなって胸が詰まる感じがしたのを覚えています。講習会のときに感じた想いがより一層強まりました。
その後、観劇するときの団体の空気感や、ダンス練習会・稽古会の場の空気感を直に体験できたこともとても参考になりました。
やはり、雰囲気が上向きで居心地が良い場は、気持ちが良いほど相手のことを思いやっていると感じました。気配りや真心のようなものを端々から感じ、信頼できる感覚です。
舞台公演の制作のお手伝いをしたとき、お客様(相手)に対する真心を特に感じました。それだけで胸がいっぱいになる時間でした。
当日運営は僕一人のためできることは限られていたため、お客様を無視せず、受付のやり取り、展示空間での会話、屋上までの案内、屋上での声かけなど、関わるところはすべて誠実にするよう心がけたいと考えました。それがきっと心理的な安全性につながるとも思いました。
2.今までの流れを整理する
第2場「間」、第3場「賛」のレポートを作成するのに1ヶ月、8月末からスタートし、「歌」開催まであと少しの9月末に終わりました。
「間」のテーマは「心の距離」、「賛」のテーマは「想いを馳せる」でした。その時々で感じていたことをレポートに仕上げていきましたが、この7か月間で一番考えていたことは経堂の人と街と向き合うことで、そこに経堂以外の人を呼ぶことで、結果的に僕と住んでいる人と訪れた人が交わることとなりました。
「歌」は第1場~3場で”あったこと”をもとに制作するつもりでしたが、レポートにまとめてみても、自己紹介での出会いや、街に少しずつ出て行ってつながれたことや、大切な人に想いを馳せたりしたことなどが、いまひとつピンと来ていませんでした。
向き合ったことで、どうなっていたのか。
そこで、人間賛歌のステートメントに立ち戻ってみました。
この企画は、僕と、経堂の人や街との関係性の変化の過程を見せていく企画でした。「向き合う」は関係性を変化させるための方法であり、「向き合った」ときに心を開いたり閉じたりする。
その瞬間を分かち合うことが「人間を讃える」ことだとしたら、想いを伝える歌に必要な要素が少しずつ見えてきたようでした。
3.歌の構成を考える
実際の時系列とは異なりますが、これまで2つの課題に取り組みました。何となく形が見えてきたものの、まだピースはバラバラで、具体的に一つの歌として構成していくのは難しいと感じていました。
ピースとしてあったことは、
・歌を制作する。
・朗読として上演する。
・その場の人たちに参加してもらう。
・屋上で行う。
・1時間以内に収める。
・第2場、第3場で受け取った言葉を用いる。
・人とのやり取りを大切にし、心理的安全性をつくる。
・関係性の変化の過程を伝える。
・人と向き合い、分かち合う場をつくる。
だったと振り返ります。
このピースをぴったりと収めるための枠がないような、一本の筋がまだ通っていないような感じがしていました。
特に太字の部分のイメージが湧きませんでした。
個人的に、関係性が変化するには時間が必要だと考えています。
時間がかかる変化の物語を伝えるなら、演劇が一番伝わりやすい方法だと思います。演劇ならば観客参加型のものを参考にしながら、構成を組み立てられた気もしました。
しかし今回は朗読の形で、1時間以内(予定時間は30分~40分)で、その時間に7か月分の関係性の変化を収めて伝えるアイディアが浮かびませんでした。
そこで、朗読のテキストにあたる歌をもう一度考えてみることにしました。今までの朗読でやってきたような、想像で紡いでいくお話ではなく、別の紡ぎ方を見つける必要がありました。
そもそも歌とは何なのか
第3場「賛」に協力してもらった西條くんに相談し、一緒に歌について掘り下げていきました。
・誰のために歌うのか
・何を歌うのか
・歌ってどうなりたいのか
それぞれ、以下にまとまりました。
・今まで来てくれた人、関わってくれた人のため
・感謝→知る/知られるの負荷のかかる時間を共有してくれたこと。人生を分かち合う関係になってくれたこと。
・関係を続けていきたい。つなげていきたい。「これからもよろしくね」
僕がそもそもどうして歌いたいのかを固めることができました。
また、歌について考えを深めるとき、この映画を思い出しました。
映画『二重のまち/交代地のうたを編む』予告
こちらの映画は、僕が2021年3月に観て感動した作品です。
興奮したまま映画館ですぐ書籍『二重のまち/交代地のうた』を購入しました。
この映画は東日本大震災で津波の被害にあった陸前高田市が舞台になっています。映画の終盤、街を一望できる高台で、陸前高田市についてのお話『二重のまち』を地域の方々の前で朗読するシーンがありました。
企画立案の1月段階で、最終場に経堂アトリエさんの屋上を使って街に向けて朗読をしている光景を想像したのは、この映画からきています。
この書籍を見返しながら、歌について考えていたところ、こんな記載がありました。文章中の太字は僕が引っかかったキーワードです。
『歩行録』をすべて読み終えることはできなかったものの、他にも身体に関する記載がいくつもありました。
『二重のまち』では、歌は忘れないために歌うこと。
『歩行録』では、人が大切にしていた歴史(伝統・鎮魂、大切な言葉・誰かの記憶・忘れられない風景も含んでみようと思います)を物語として伝えるとき、聞き手には身体的な感覚が伴い、身体化されることで、遠い場所や時間まで届くということが記載されていました。
続いて、第2場「間」の参考書籍としてご紹介した『テアトロン』にも歌と身体化についての記載がありました。
高山さんはワーグナー・プロジェクト:ニュルンベルクのマイスタージンガーという実践で、神奈川芸術劇場(KAAT)をストリート化し、普段は縁が遠いヒップホップの文化を劇場空間に入れました。
その実践に至るまでに、ギリシャ悲劇→ドイツのオペラ作家リヒャルト・ワーグナー→ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトと、演劇史をさらっていきました。そのブレヒトについての記載の中で「ルターの宗教改革」としてまとめられたところに、歌と身体化について書かれていました。
ルターは本を朗読するだけでなく、歌にして地域の人たちに歌わせたり、劇にして一緒につくりあげることで、聖書の内容を(心や身体に沁み込ませるように)身体化し、信仰を促したようです。
これらから、人間賛歌「歌」で朗読する歌の紡ぎ方が定まりました。
僕を含めた、7ヶ月間で参加した人たちがそのとき感じたこと・あったことを第1場~3場の順を追って書いていくことで、関係性の変化の過程を「忘れない」ために朗読のテキスト”はじまりの歌”にする。
”はじまりの歌”を第4場で集まった人たちが声に出して読んだりワークをして、過去にあったこと・感じたこと、関係性の変化の過程を身体で体験してもらえるようにする。
9月末くらいに制作の方向性が定まり、急いで執筆を行いました。
4.朗読/群読かを決める
最終的な上演の形は、僕一人だけの朗読だけでなく、全員で一斉に読む群読でもなく、お客様に体験していただく朗読となっていました。
テキストも普通の朗読のお話のようなテキストではなく、演劇の台本のようなものとなりました。
過去の時間のことや他の人の言葉・記憶・感覚を体験するには、演劇の台本の形式が一番参加しやすく、伝わりやすいと考えたためです。
また、先に出てきたベルトルト・ブレヒトが目指していた「教育劇」の形式にもチャレンジしてみたかったというのもありました。
「教育劇」について、『テアトロン』の中ではこう書かれていました。
そこで”はじまりの歌”では、第1場~3場の流れを順を追って書いていくなかで、関係性の変化を促すワークを取り入れながら、過去にいらしたお客様の言葉を「想い」として台詞にしてみました。
台詞にすることで、いらしたお客様(観客)が、身体を通して声に出し、自分自身やその場にいる相手に「想い」を伝えていく仕組みです。
「はじまりの歌」完成
最後に僕自身の「想い」を伝える部分を書き終えて、「はじまりの歌」は完成しました。
歌の章立てとしては、
0場 前説
1場 出会いの春
2場 広がる初夏
3場 深まる夏
4場 伝える秋
という構成です。
1場はその場にいる全員で自己紹介をし、名前を覚えるワークを入れました。関係性が始まる場です。
2場はそれぞれ距離を取りながら、全員で「あー」と声を出してみるワークを入れました。円の形で内側に声が響き合ったり、街の方へ向いて外側に声をかけていく時間を目指しました。
3場は3分間見つめ合うワークを入れてみました。第3場「賛」で行った内容は「対話」だったのですが、上演時間の尺を考えるとあまり長い時間は取れないため、対話の代わりに見つめ合うようにしました。
4場は僕自身の「想い」を伝える場でした。関係性の変化を経たあとで感じることを書きました。
「はじまりの歌」は7ヶ月間の総まとめであったため、制作を始めたときはうまくまとまるか不安でしたが、こういった形に着地できたことがとても嬉しかったです。
10月1日、2日 人間賛歌第4場「歌」開始、演劇の場の学び
「歌」の制作を9月末に終えて、30日に仕込み、本番が始まりました。
スケジュール
企画書段階では当日の予定スケジュールはこんな感じでした。
嬉しいことに両日とも天候に恵まれ、屋上で朗読を行うことができました。
経堂アトリエさんの立地の都合上、迷われる方が多かったようで、11時の開始時間をオーバーしてからの上演となりました。
朗読「はじまりの歌」は上演時間を約30分ほどを予定していましたが、思った以上に時間がかかり、50分~1時間ほどの尺となってしまいました。
また、正午近くになると日差しが強まったことが想定外でした。
日傘をさしたりお水を飲んだりという声かけを行っていきました。
12時以降は残ってくださったお客様に展示をご案内したり、会話をしたり、「秋のフェスタ」の他ブースを紹介したりしました。
僕も空き時間で他のイベントに参加しながらご案内できたので、想定通りでした。
予算・支出と収入
企画書段階で考えていた予算案です。
撮影費+交通費は、6月頃に出会ったSAKIさんとご縁があり、撮影を依頼しました。ご相談したところ両日ともいらしてくださるとのことで、1日分の撮影費と2日間分の交通費9,600円ほどとなりました。
雑費10,000円は、展示に用いる額縁を購入したり、ご協力いただいたお店での飲食代となりました。ざっくりとですが、3,000円ほどだったように思います。
交通費10,000円は、経堂に会期中も含め6回通っていたため、9,000円ほどだったと思います。
広告印刷費5,000円は、フライヤー印刷に1,351円、テキスト印刷に3,220円ほどかかり、計4,571円と予算案に収まりました。
ざっくりと、予想支出の25,500円を上回ることとなりました。
今回も会場費として、経堂アトリエさんに総売り上げ12,000円の半分の6,000円をお支払いし、残りの6,000円が収入となりました。
※総売り上げの内訳
・朗読「はじまりの歌」 12,000円
アンケート分析
今後の企画の進め方・パフォーマンス向上のために、お客様の情報をデータにしてまとめてみようと思います。
アンケートをQRコードにするかどうかで悩んでいましたが、人間賛歌では紙で統一することにしました。
動員
10月1日 9名
10月2日 7名
※アンケート回答者 13名
※秋のフェスタで展示にお越しいただいた方は含まれていません。
年齢層
20代 4名
30代 4名
40代 1名
50代 1名
60代 1名
70代 1名
未回答 1名
地域
東京都 10名(うち世田谷区 3名)
埼玉県 2名
神奈川県 1名
イベントを何で知ったか
関係者から 7名
Twitter 3名(+1名 複数回答)
地域の掲示板 1名(複数回答)
その他 3名(本人から、経堂アトリエから)
次回のイベントに
参加したい 13名
動員数は16名で、アンケート回答者は13名でした。
朗読「はじまりの歌」の参加者は12名で、展示のみの方は4名という内訳でした。
直接お声がけした方がほとんどで、秋のフェスタをきっかけに朗読にいらした方は2名ほどでしたが、ちらっと展示を観にいらした方々もいて嬉しかったです。
年齢層については、20~30代が多いものの幅広い方々がいらした印象です。create model けいで目指す、多世代間交流の場になったのではないかと感じます。
地域については、東京都が多く、次に埼玉、神奈川という順番でした。他県からの出入りが少し増え、経堂に来たのは初めての方、数回目の方、久しぶりに来た方など、さまざまな方がいらした印象です。世田谷区在住の3名の方とそれ以外の地域の方々との交流が生まれたことが嬉しかったです。
イベントを何で知ったかは、「関係者から」「Twitterから」が今まで同様多くなりました。直接お声がけする余裕があったり、今までいらしてくださった方々が再度いらっしゃったことが理由かと思います。
第3場「賛」のメインターゲットはオガワのお知り合い、関係者の方々でしたが、今回のメインターゲットはこの企画に興味を持ってくださっている方々でした。
地域で行う長期制作企画のメリットは、
・今まで関わってくださった地域の方々に声をかけやすい。
・直接お話したときやTwitterの反応で、興味のありそうな方に次回情報を案内できる。
・お客様目線で、もし機会を逃してもすぐ次があるから気持ち的な気軽さがある。
ではないかなと思いました。
メリットを活かしながらビジョンに掲げた経堂での時間に関心を持ち、交流が生まれる(場になる)ことを達成できたのではないかなと感じます。
展示「人」「間」「賛」「歌」
人間賛歌のステートメントと、それぞれの場で制作したものを展示しました。2階リビングを想定していましたが、秋のフェスタの関係で隣の和室が展示会場になりました。
しかし、それだけでは場のつながりを示しながら、あったこと・感じたこと・関係性の変化を伝える「はじまりの歌」の内容に沿わせられないと感じ、キャプションを作成しました。「間」での学びが活きたと感じます。
このキャプションを見ながら、人間賛歌でやってきたことを説明していきました。イベントレポートの方でも書きましたが、展示間のつながりや、「人間賛歌」という言葉との紐付け方が面白かったという感想をいただけて嬉しかったです。
朗読「はじまりの歌」
必要だったピースを再褐します。
”はじまりの歌”のテキストに関する部分は記号をつけています。
・歌を制作する。 〇
・朗読として上演する。 〇
・その場の人たちに参加してもらう。
・屋上で行う。 〇
・1時間以内に収める。 △
・第2場、第3場で受け取った言葉を用いる。 〇
・人とのやり取りを大切にし、心理的安全性をつくる。
・関係性の変化の過程を伝える。 〇
・人と向き合い、分かち合う場をつくる。 △
その場の人たちに、いかに心理的安全性を感じてもらいながら、自然に参加してもらえるかを考える必要がありました。
以前に観た観客参加型演劇の演出は、テキストの都合上参考にできませんでした。どのタイミングでテキストを手渡し、読んでもらうかがカギでした。
タイミングについてはHiphop Kindergartenというユニットが行っていたワークインプログレスの中間発表会「Play!」に参加したときに感じたことを取り入れました。
こちらのユニットはサイファー読書会・サイファー演劇など、ヒップホップのラップと演劇の要素をつなげようとしている団体で、「Play!」はその実験的な場でした。会場に入るとマイクを手渡され、声を出してみるように促されました。「あー」と声を出すと、DJの方が手元で変声加工をしていて、別の音が出ました。そこで僕はぐっと興味を惹かれました。
「Play!」は、音楽的な部分も参考になりましたが、いかに観客を巻き込むかの部分が一番参考になりました。
最終的に、テキストは受付のタイミングで「後ほどの朗読に用いるテキストです。読んでも、読まなくてもかまいません」ということをお伝えして手渡しました。屋上に上がるときは「お靴をお持ちください」と促し、屋上にはイスを円形にセットしておき「お好きな場所におかけください」と声かけをしました。屋上からの景色を見てもらうことも、惹きこむための大切な要素でした。
そのような流れで、お客様を誘導して進んでいきました。
屋上はこのような雰囲気で、暑かったことと上演時間が延びてしまったこと以外はある程度想定通りに進んでいきました。
僕は”開催者”という立場で読み進めましたが、気持ちとしては一参加者としてその場を楽しんでいました。
朗読には演出をつけず、即興的にその場の雰囲気で読み進めていきました。
お客様に読んでいただくときは僕が先行して例を示し、素読み(棒読みよりは言葉自体にある抑揚に沿う)のような読み方をしていただきました。
1日の上演を終えた時点で、空気感もとても穏やかで温かく、テキストや場のつくり方に手ごたえを感じて嬉しい気持ちでしたが、終了後にご参加くださった方から「強制感」があったという言葉をいただきました。
2日の上演では、見つめ合うワークの途中に「このワークは強制ですか? 強制でなかったら様子見しても良いですか?」と言ってくださった方がいました。もちろん承諾し、様子見をしていただきました。こちらの方にものちに連絡を取り、理由をお聞きすることができました。
「強制感」の理由をまとめると、
・最初から円形に座席がセットされているため、観客が自分で好きな距離感の場所にいれず、落ち着けない。
・参加する/しないの自由がなく、在り方が委ねられていなかった。
・心を開く/閉ざすのタイミングを自分で決められない感じがした。
・「朗読」と聞いていたのにワークがあった。
ということでした。
僕は同意しかなく、ただ反省するばかりでした。
おそらく、「はじまりの歌」は1月の企画段階からやりたかったことであり、見てみたかった光景を優先させてしまい、その場に集まる人一人ひとりのことを考えきれなかったことが原因だと考えます。
僕自身が俳優であり、心を開いてさらけ出す感覚に慣れていて、ワークにも抵抗感がなく、フィクションで演じるときとリアルで生活するときの切り替えをある程度使いこなせ、巻き込まれる場に惹かれるというだけで、他のお客様(特に演劇界隈ではない方々)には抵抗感があるかもしれないという視点が抜けていました。7ヶ月間のまとめとしてその場の人たちと着地した、というよりもその場の人たちを誘導して着地させたという印象になりました。
今まで、人と丁寧に向き合うことを大切にしたいと考えていたこともあり、
最後の最後で丁寧さを欠いてしまったなとも感じました。
朗読「はじまりの歌」は良かったところと悪かったところが出た内容だと振り返りました。
イベント後、レポート制作など
create model けい では、企画したもののレポートをできるだけ書くようにしています。創作ワークショップのレポートだったり、今回の「歌」のレポートが主にそれにあたります。
さらに、月ごとの活動をまとめたレポートがあります。
今回のレポートのように、企画を一歩引いた目線で書くようにしています。
最終的に年間レポートとしてまとめを書きます。
企画レポートは、企画に来ていないお客様に雰囲気が伝わり、興味を持ってもらえるように試行錯誤をしています。追体験のような感じを意識しています。
今回は10月1日、2日両日の撮影でした。SAKIさんのお写真は淡い光の質感を感じながら色彩が豊かな写真で、よりテーマに近いと感じたものを選びました。
「歌」イベントレポートは現在80回ほど閲覧されております。
「賛」イベントレポートは30回、制作レポートも30回。
「間」イベントレポートは55回、制作レポートは50回。
「人」イベントレポートは180回、制作レポートは80回。
企画段階のレポートは65回でした。
(2022年10月15日)
たくさんの方々に読まれているようで感無量です。
今回の「歌」制作レポートですべてのレポートが出そろいますが、今後も少しずつ興味を持っていただけるようがんばります。
まとめ、今後やりたいこと
良かったところ
・イベント前のスケジュールを余裕のあるものにできたこと。
・さまざまな場を参考にでき、人間賛歌で実践できたこと。
・キーワードから書籍や音楽を関連づけて参考にできたこと。
・ハラスメントについての知識を得られたこと。
・今まで制作してこなかったタイプのテキストの制作方法を試せたこと。
・見たかった瞬間を見られたこと。
・この企画をやり切ったこと。
・create model けいで目指した、多世代間交流の場になったこと、クリエイター⇔住んでいる人⇔訪れる人の交流のきっかけになれたこと。
・経堂での活動に関心を持ってくれる方が増えたこと。
・今後も経堂での活動を続けていけそうなこと。
もっと工夫が必要なところ
・見たかった瞬間を意識しすぎて、場づくりや巻き込み方に丁寧さを欠いたこと。
演劇の場の学びについてです。
僕は演劇を身近なものにするために活動しています。
人間賛歌で行ってきたことは、内容的には展示やワークや朗読でした。
それは「演劇」でいうところの劇場空間で、観客とのコミュニケーション・体験を生み出す仕組みで、物語の上演でした。
でもそれは「演劇の場」を目に見える形にしただけで、本当に演劇的な要素はそれよりも前にある目に見えないもにょもにょしているものな気がします。
僕の地域密着型一人演劇ユニット『赤キノコ山と蒸したお酢』は”暮らしの中でつながるドラマ”という言葉を使っています。”暮らしの中でつながるドラマ”は日常生活のシーンで起きるドラマチックな瞬間のことです。
僕の好きな劇場の舞台の上で起きるドラマチックな瞬間は、登場人物たちの関係がグッと深まったり、対話の先にある言葉にグッときたり、複雑に問題が絡み合ってどうしようもなくなったり、その葛藤を乗り越えたり、心を開いたり閉じたりする瞬間です。
僕はそんな瞬間が、劇場という閉ざされた空間ではなく、日常生活の開かれた世界で見たいと考えます。そもそも、よくあることだとも思います。
僕の「演劇の場」は、その瞬間を見たとき、「あ、これは演劇っぽいなぁ」と感じるきっかけをつくるためにあります。
そのきっかけをつくるために、日常から人や街と向き合い、丁寧さを大切に、その瞬間を見逃さずに分かち合いたいと考えています。
「瞬間を分かち合う演劇の場」はきっと、関係性や、対話や、葛藤や、心について、一人ひとりが安心して主体的に向き合える場なのではないかなと思います。そこには色々な年齢・性別・職業・生まれの違いや、立場の違う人がいて、一人ひとりが、その場のみんなと一緒に向き合っていく。
僕は人間賛歌の企画を通して、こんな「演劇の場」をつくっていきたいと言葉にすることができました。
改善点であげたことは僕が目指す「演劇の場」に必ず必要なものなので、きちんと改善していきます。有言実行。
今後やりたいことは人間賛歌全体のレポートを書くことです。
この企画が「演劇を地域に開いたものにすることで、身近なものになっていくのかどうか」を検証するレポートです。
その他にも、create model けいの総まとめレポート(今までの記事はあまりうまく言語化できていなかったので…)で来年度の活動について書こうと思います。
そしてこの長い長い制作レポートを読んでくださったあなた様、本当にお付き合いいただきありがとうございました。まさか過去のレポートも全部読まれたのですか? 大丈夫です。そうでなくても、最高です!
ここまで興味を持ってくださり、感謝が尽きません。
ぜひともどこかでお会いしたときに、感想をお聞かせください。
「これからもよろしくお願いいたします」
リンク集
create model けい マガジン
はじまりの歌
はじまりの歌 PDF版
映画『二重のまち/交代地のうたを編む』予告
書籍『二重のまち/交代地のうた』
『テアトロン 社会と演劇をつなぐもの』
ワーグナー・プロジェクト
いただいたものはすべて創作活動にあて、全国各地を回って作品をつくったり、地域に向けた演劇活動の資金にします。「たった一人でもいいから、人生を動かす」活動をより大きく、豊かに頑張ります。恩返しはいつになるか分かりませんが、必ず、させてください。よろしくお願いします。