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はじまりの歌

これは朗読「はじまりの歌」として、
2022年3月から開催してきた地域密着型展示会イベント「人間賛歌」という長期制作企画の最終回、第4場「歌」で用いられたテキストです。


簡単にテキストの概要を述べます。
「人間賛歌」は3月‐4月の第1場「人」、5月‐6月の第2場「間」、8月の第3場「賛」と、約7か月のあいだ経堂アトリエで開催してきました。

そこで僕自身に起きた人や街との関係性の変化を、”はじまりの歌”という台本にして、いらしたお客様とワークをしながら、変化を体験してもらおうというテキストになります。

第1場「人」は”自己紹介”をテーマにし、人や街との関係性が始まりました。
第2場「間」は”心の距離”をテーマにし、人や街との関係性を広げました。
第3場「賛」は”想いを馳せる”をテーマにし、人との関係性を深めました。

第4場「歌」は”想いを伝える”をテーマにし、経堂であったことを「歌」として、過去の場でお客様からいただいた「想い」と一緒に伝えていきます。


人間賛歌第4場「歌」
2022年10月1日(土)、2日(日)
11時~12時 朗読「はじまりの歌」



2022年10月9日 記





0場 前説

 

開催者

こんにちは。人間賛歌「歌」にお越しいただきありがとうございます。早速ですが、人間賛歌ってどんな歌なんでしょうか?

「人間を讃える」までは、行動としてイメージできる気がします。でも、歌にするとき、中身はどんな歌詞になるんでしょう。そもそも「歌」ってなんでしょう。人間賛歌「歌」では、あったこと感じたことを忘れないために残すもの、だとしてみます。

今、ここにはさまざまな人が、円になって座っています。

 

これからここにいる全員で、ここであったさまざまな時間を体験して、ここにいた人たちの「想いを伝える」「受け取る」ために、はじまりの歌をうたいたいと思います。

うたうと言っても、音楽みたいな音程や、メロディはありません。このテキストが「歌」、テキストを音読して伝えることが「うたうこと」です。「歌」には、ここにいた人たちの「想い」が書いてあります。
色んな「想い」をうたってもらえたら嬉しいです。

 

みなさんには、座る前に、呼ばれたい名前を決めていただきました。せっかくなので、一人ずつ、簡単な自己紹介と、経堂との馴れ初めを話していけたらと思います。大丈夫ですか?

 

 反応を見る。

 

はじめて来た、とか、住んでいます、とか、良いとこですね~とか、秋ですね~とか、今感じていることでも大丈夫です。

では  第1場、出会いの春。

 



第1場 出会いの春

 

 開催者が自己紹介を行う。

 次に隣の人が自己紹介をするというように、順番が回っていく。


開催者

はい、みなさん。ご協力いただきありがとうございます!

じゃあ、ですね。集まったことも何かの縁、一期一会だと思うので、ちょっとしたゲームをして、お互いに名前を覚えてもらおうと思うのですが、どうでしょう?

 

 反応を見る。

 

その方がなんというか、人がつながる瞬間を見れたような気がして、素敵な時間を過ごせたなぁと印象に残りやすいんじゃないかなぁと思います。

 

 反応を見る。

 

ありがとうございます。ゲームの説明をしますね。えっと。

 

 開催者とその他、実践しながら、

 

まず、両手を2回、全員でパンパンと叩きます。パンパン。はい、そしたら、親指を立ててつくったグッドサインを、自分の胸辺りに、つけます。そのあと、誰かに、つけた親指を、向けます。これが、動きの流れです。パンパン、グッド、グッド。パンパン、グッド、グッド。リズムはそんな感じですね。ここまでで分からないところありますか?

 

 反応を見る。分からない人がいたら説明する。


開催者

ここからが難しいので、ゆっくりと実践しながらいきましょう。始めの人を決めます。今回は自分がやりますね。はい、みんなでパンパン、したあと指を胸につけながら、「自分の名前」を言います。(自分の名前を言う)。

そしたら、誰か指したい人に指を向けながら、「相手の名前」を言います。(相手の名前を言う)。

手番は移ります。ゆっくりとやってみてください。

 

 人、やってみる。

 次の人、やってみる。ある程度続いたら、

 

とても良い感じですねぇ!

じゃあ、ゆっくりと本番いってみましょうか…!

 

 周りの人、反応する。

 開催者から始まり、ゆっくりとだが次々と続いていく。

 誰かが失敗した場合、全員で「惜しい!」など反応する。 

 失敗したとき、失敗した人からやり直す。 

 ある程度回るようになったところで、

 

ありがとうございますー! すごい! 拍手しましょう!
これ、本当はめっちゃ難しいんですけど、みなさんは簡単でしたね。さすがです。自己紹介、出会いの春を終えて、関係性が始まったみなさん。この円の関係性を、遠くの方まで広げていきたいと思います。

では  第2場、広がる初夏。


 


第2場 広がる初夏

 

開催者

◇時  現代。〇〇年〇月〇日、〇曜日。〇〇時〇〇分。

 

◇場所 東京都世田谷区、経堂、4-31-8。
    経堂アトリエ、その屋上。(雨天ならば2階)

 

◇人物 (そこにいる人の名前を挙げていく)
    全員「歌」をうたう人であり、聞く人でもある。

 

◇舞台 街の営みを一望でき、風の音や、木のざわめきが聞こえる。
    電車が通り過ぎ、さまざまな香りが漂ってくる。
    (その場にあるもの、感じることを描写していく)

 

 間。

 

みなさん、ここは「舞台」ということになりました。

舞台の上だからといって、特別なことは考えなくて大丈夫です。席を立って、少し、円を広げてみましょう。どうぞ。

 

 人、起立し、円を保ちながら広がる。

 

では、舞台を味わってみましょう。目をとじてください。

ここからはテキストを見なくても大丈夫です。

怖い方は開けていても良いです。耳を、すませてみましょう。

 

 沈黙。

 

 

 

開催者

深く息をします。すう、はあ。すう、はあ。力を少しずつ抜いて

いくイメージです。

もっとリラックスしたい方は、座っても、寝ても大丈夫です。

やさしく、あー、と、声に出してみてください。

ゆっくり、せーの。

 

 全員、あーと声を出す。


良いですね。何回かやってみます。せーの。

 

 全員、何回か声を出す。

 

素敵です。それでは、静かに、目を開けて。おはようございます。

では、今度は、円をさらに広げて、この舞台の端に立ちます。

ちょうど良い距離感に並んでみてください。

 

 全員、それぞればらけ、舞台の端に並ぶ。

 

そしたら、外の方に身体を向けてください。

景色を眺めながら、何回か、声を出してみましょう。せーの。

 

 全員、何回か声を出す。

 

とてもきれいです。では、テキストに移ります。

これから、みなさんに、街との心の距離についての「想い」をうたってみてもらいます。

そうですね、自分から、〇〇さん、〇〇さん、〇〇さん、という

風に、うたっていただけますか?

 

 反応を見る。


開催者

一周したら、また自分から始めます。よろしくお願いします。

「なんとなく(街や人の)空気感が好き」

 



「最初は〈知り合い〉がいたからという理由で来ただけだが、自分が正直になれる貴重な場になっている」

 

「おだやかでとても静かな街で、おどろきました。今度ゆっくりとおさんぽに来てみたい」

 

「ハチミツ専門店が存在できる文化度の高さ、席を譲ってくれる老紳士、こだわりの商品、店主の温かさ。この街独得(特)の価値がうらやましくもあり、ノスタルジックを感じ、あこがれる」

 

「懐かしさと憧れの程良いバランスで、心地良かったです。小説にでてきそうな街。ちょっと迷子になったのに、なんだかホッとした気持ち」

 

「大学一年のときに一人暮らしを始めたのが、最初の経堂との縁。その頃はこの場所(アトリエ)も、街のお店も、ほとんど知らなかった。いればいる程、深みが出てくる街」

 

「出会う全てのヒト・モノ・コト・イキモノたちが、みんなあたたかくやさしい場所です。天祖神社の木のざわめきが日々のいやし」

 

「活動を経堂にする機会が増え、この場所に縁を感じています。でもまだ知らない場所がたくさんあります」

 

「街のかもし出す雰囲気がほっとする感じでとても良いなぁと思います。お店も周ってみたいなぁと思いました」


「もう一回来たい! いい出会いがありそう!」

 

「普段の生活とちがう、時間の流れ、余白のある人々、ホスタビリティ。60~70年代の日本の良き時代の街並み、歴史を感じる緑、来訪するのに、素晴らしい世界。今の自分の直面する世界(ウクライナ難民受け入れ)とは大きく異なる世界。ウクライナの人達に来ていやされて欲しい」

 

「文字や情報でしかなかったものが、〈たんけん〉を通して空気やにおいに触れることができた。五感で体験することでより深く味わうことができ、距離が縮まったように感じる」

 

「遠藤周作の小説に出てきた〈東京の経堂〉〈ミツが住んでるところ〉のイメージから、余裕(余白?)をもっていて、静かに人を待っていてくれるところ。考えるスキを与えてくれるところ。待つということは静かな勇気とゆとりがひつよう」

 

「去年から今までで経堂の人と街に向き合ってきて、少しずつ大きなところから小さなところに目がいくようになったと思います。もっと深く人と街を知っていきたいです」

 

「新しい家、古い家、整っていたり、放置されていたり、何か少しずつ日々、人の動きと共に変化している町は、植物や生きものの息する場所もさりげなくこしらえているのが良いなと思いました」

 

 間。

 

開催者

ありがとうございます。では、もとの円に戻りましょうか。

 

 全員、もとの円に戻る。

 

開催者

この円から関係性が始まって、広がって、街を眺めながら、

色々な「想い」をうたってみました。

ちょっと、この感覚をのんびり味わってみましょうか。

 

 沈黙。

 

はい。今度は、ここにいるみなさんとの関係性、心の距離感を、少し縮めるように、深めていきたいなと思います。

まだ緊張があったり、不安があったら、その気持ちを大切に。

円を少しだけ、小さくしてみましょう。不安のある方は、その不安な気持ちの分、離れても大丈夫です。では、どうぞ。

 

 全員、お互いに距離を縮めたり、とったりする。

 

準備できましたかね。では  第3場、深まる夏。

 


 

3場 深まる夏

 

開催者

みなさんは、普段人と見つめ合うことはありますか?

今から、お隣の人と3分間、見つめ合ってみたいです。

できれば、マスクも外して、お顔が見れるようにもしたいです。

難しい方はそのままで。どうでしょう?


 反応を見る。

 

ペアを組んでみます。よろしくお願いします。

(余った方は自分とやりましょうか)

 

 それぞれ、ペアを組む。

 

それでは、3分間計りますね。マスクを外して。

よーい、スタート。

 

 3分間。

 

ありがとうございます。ざっくりと、どんな気持ちでしたか?

 

 それぞれ、反応する。

 

今、感じたことから、お互いの距離感を変えても大丈夫です。

変えたい方はいますか?

 

 反応を見て、促す。しばらくして、

 

今度は、全員で、全員の目を見つめ合います。ずっと同じ人を見

ても良いし、切り替えても良いです。時間は3分。スタート。

 3分間。

 

開催者

ありがとうございます。さっきと比べてどうでしたか?

 

 それぞれ、反応する。

 

これから、自分の大切なものについての「想い」を、

同じようにうたってみます。

先ほどの順番でうたっても良いですか?

 

 反応を見る。

 

開催者

では、いきますね。

「ありがとう」「ありがとう」

 

「カラダとココロ」「カラダとココロ」

 

「笑顔を見ること」「笑顔を見ること」

 

「風通しの良さ」「風通しの良さ」

 

「自分の気持ち」「自分の気持ち」

 

「彫刻とは何か」「彫刻とは何か」

 

「余白」「余白」

 

「自己肯定感」「自己肯定感」

 

「身の丈」「身の丈」

 

「家族への愛と感謝」「家族への愛と感謝」

 

「立ち続ける糧」「立ち続ける糧」

 

「自分の意志の存在を信じ抜くこと」

「自分の意志の存在を信じ抜くこと」

 

「目に見えないもの」「目に見えないもの」

 

 間。

 

開催者

さまざまな「想い」をうたってみました。

出会いの春、広がる初夏、深まる夏と、時間が経って、

人や街との関係が、ちょこっとだけでも変化してたら、

想いはきっと伝わっています。


最後にあと、少しだけ  第4場、伝える秋。



 

4場 伝える秋

 

開催者

どうして、人や街と向き合いたいのか。

どうして、関係を深めたいのか。

関係を深めたあと、何があるのか。

自分は、その人の人生にいさせてほしいんだなと思います。

その人の人生が、変わっていくのを近くで見たい。

 

ここは、その変化が始まるきっかけで、広がるきっかけで、深まるきっかけで、それはまさに変化する瞬間で、近くで見てる。

きっと、その瞬間は、普段の暮らしの中では見逃して、過ぎ去って、しまうもので、それを見逃さずに分かち合いたい。

 

そんな瞬間を、たくさんたくさん、分かち合えたら、目の前の人を讃えていける、気がします。目の前の人を完全に理解することはできないけど、分かち合った瞬間の分、想いを馳せて、伝えていく。

 

良かったら、このあとも、人生にいさせてください。

 

最後に、この場を開きます。

みなさん、お手を拝借。

ここに来てくださり、本当にありがとうございました。

よーおっ。






いただいたものはすべて創作活動にあて、全国各地を回って作品をつくったり、地域に向けた演劇活動の資金にします。「たった一人でもいいから、人生を動かす」活動をより大きく、豊かに頑張ります。恩返しはいつになるか分かりませんが、必ず、させてください。よろしくお願いします。