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秋は追懐の季節。

体にまとわりつく空気が、いつの間にかさらさらと肌を撫でる風になり、鼻腔へ抜けるのを感じる秋の始まり。

早朝、散歩に出て、シンとした静かな道を深呼吸しながら歩く。
体に血が巡り、半分寝ていた頭が起き始め、秋の匂いを感じながら昔の記憶を思い出す。

大学2年生の8月、初めての海外へ。
日本と季節が真逆のオーストラリア。

ホームステイ先からバス停まで向かう、なんてことない道が私には特別だった。
少し肌寒いけれど、日中の日差しの強さを予感させる朝陽が目に飛び込んでくる。
日本の倍はあるかと思う道幅の、一番端を歩きながら思いっきり空気を吸う。
「ああ今、私は海外にいるんだなぁ。ここにいる人で私を知っている人は私しかいないんだ。」と、静かな興奮で胸をいっぱいにして歩いた。


秋の朝は、あの時と空気が同じで思い出が蘇る。

そんなとき、私は旅に出たくなる。

秋という追懐の季節に。

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