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小六の時に猫を飼うことを決めた帰りの会 上


最近僕がハマっている、YouTubeチャンネルがある。


この動画は、粘着鼠取りに捕まってしまった子猫を救出し、育てていく。


簡単に説明するとこうだ。


この子猫を見たときに、僕が飼っていた、猫に少し似ているなと思った。

それまであまり猫の動画は見ないようにしていたが、これを見て僕が飼っていた猫、ライのことを思い出した。






時を遡ること、2002年2月


僕が小学6年生だった。


いつものように授業が終わり、帰りの会だった。


他に何かありませんか?


先生がそういうと少しみんなの反応を待ってから挨拶して、その日の学校が終わる。


他に何かある人は、いつもいない。


早く放課後にサッカーをやりたい僕はこの時間がとても無駄だと感じていた。


しかしその日は違った。


1人が手をあげている。井口さんという女の子だった。


私の家で猫が生まれたので飼いたい人は教えてください。


ちょっぴり恥ずかしそうにそう言って彼女は座った。


はい!飼いたいです!


僕はすぐに大きい声で答えた。


猫を飼いたい!と思った。それよりもお調子者だった僕は少し目立ちたかったんだと思う。


放課後にいつものようにサッカーをし家に帰る。

仕事から帰ってきたお母さんに猫のことを話した。


ダメに決まってるじゃない。


当たり前のようにそう言われる。


味方を作るしかない。そう思い、姉2人にも声をかける。


猫飼いたいよね?絶対可愛いと思うんだよ!


猫あんまり好きじゃない。


姉2人は口を揃えてそう言った。まさかの答えだった。


味方はいなかった。僕の周りの女性陣は冷たかった。


しかし僕も別に猫が好きなわけではなかった。


でも多分可愛いだろうし、クラスのみんなにもほぼ宣言しちゃったし…


僕は泣いた。


でも泣いた理由は、飼えないことなんかより僕の意見が通らないことが悔しかった。なぜこの情熱が伝わらないんだ冷たすぎて悲しかったことを覚えている。


お父さんに聞いてみなさい。


そう言って。母は僕に携帯を渡した。


母は事態の収束をするための最後の手段だった。絶対に首を立て降らないと思っていたのだろう。父に言われれば諦めがつく。


僕は父に泣きながら電話をした。あまり喋りの上手ではなかった小6の僕だったが一生懸命に伝えた。



飼いたきゃ飼えばいい。


単身赴任の父はそう言った。月に一度か二度しか帰らない父はかなりの放任主義だった。


僕は歓喜した。


母に伝えるともちろんびっくりしていた。


えー飼うのー?和洋、あんたちゃんと世話しなよ!


姉達はまだ冷たかった。


次の日僕は本屋に行き子猫の育て方の本を買った。そしてそれを毎日読み家族に教える。名前もいくつか考えた。

朝起きると

おはようにゃ〜

と言って起きてきていた。と母は今もその当時のことを振り返ることがあるほど猫に没頭していた。


猫が来ることはとてもとても待ち遠しかった。




一ヶ月半後、猫親の井口さんがもうそろそろ親離れするし、少し早いけどとりにきてもいいよ。と言ってくれた。


予定より早くとりにきていいよと井口さんが言った理由は、僕がその一ヶ月半、毎日猫のことを聞いていたので嫌気がさしたのかもしれない。


帰りの会が終わり放課後いつもやっているサッカーもせず、一目散に家に帰った。


鞄を置き、すでに用意されてある猫を入れるタオルが入った段ボールを持って井口さんの家に走った。それはそれは早かったと思う。メロスなんかよりもずっと。待っていろよ、ネコニンティウス。


井口さんの家に着く。猫のいる家部屋に通された。そこには親猫二匹と子猫が6匹がいた。


それはそれは可愛かった。僕が本で見たやつなんかよりも何百倍も可愛かった。


この中から好きなの選んでいいよ!


井口さんが、そう言った。


可愛すぎて少し遠くから離れてみていた僕は、選ぶために近寄った。


よく見ると明らかに色の違う子猫が一匹いた。


井口さん家の猫はアメリカンショートヘアーという種類の猫。本で得た予備知識で、銀地に黒の渦模様の見た目は知っていた。

こんな奴

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しかし一匹だけ焦げ茶色で黒の渦模様の子猫が混ざっている。


他にも貰い手が何人か決まっていることは知っていた。


こいつは他と色が違うから誰にももらわれないじゃねーのか?


そんなことを考えながら、触ってみる。可愛い。色も目立つ。かっこいい。


こいつにしよう。すぐにそう決めた。


家族に反対されても猫を買うことを決めた僕と重ね合わせたのかもしれない。


井口さんに感謝と別れを告げ家までの道を歩く。

段ボールの中でニャーニャー泣く子猫になるべく振動を与えないようにして、慎重に家に帰った。走ってきた3倍の時間がかかった。


家に着くと、まだ誰も帰ってきてなかったので、猫を見ながらたまーに触ったり、熟読してきた本を見返したりしていた。


母が帰ってくる。子猫を見た。

姉が帰ってくる。子猫を見た。


可愛い!!!


三人とも絵に描いたような同じ反応。


それ見たこと!それ見たことか!


嬉しかった。必ずこの反応がある事はわかっていたがな!

どうだ!

飼ってよかっただろ!

可愛いだろ!




それからというもの母と姉2人は来る前と正反対に、猫を可愛がった。それはそれは溺愛した。

毎日可愛いと言った。

餌はあげるはミルクは作るは、猫が夜寝れないとなると母はエプロンに入れてカンガルーのように畳み込んで寝かせた。


もちろん僕もかわいがったが、僕がやる世話がほぼなかった。ここまでは望んでいない。


名前は、ライと決まった。


週刊少年ジャンプのどっかの漫画から取ってきた。オスでかっこいいからこの名前にしようということになった。


付けたのは姉達だった。

僕が決めたかったのに…



そこまでは望んでいない。



そして、ライとの生活が始まった。


ライのこと今は可愛がっているけど、誰もが飼うことを反対した。かわいがれているのは僕のおかげだ。

僕はそこから10数年、この言葉を言い続けた。



続く。










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