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インバウンド沸騰!そんな中で宮崎県は観光の目的地に選ばれているのか、統計を元にして検証してみた。

最近、弊社が運営する「一平寿し」や「九州パンケーキカフェ」では外国人観光客の姿が増えてきていて、ようやく賑わいが戻ってきたように感じます。朝食を外で食べることを旅の楽しみとする方も多く、「九州パンケーキカフェ」では、時折海外エージェントからの団体予約も入るようになりました。とてもありがたいことです。

九州パンケーキカフェの朝食メニュー

とはいえ、福岡や熊本に出張するとあきらかに増えている海外旅行客の姿が、地元宮崎の”まちなか”中心市街地や、夜の繁華街”ニシタチ”にはまだまだ少ないと感じます。ホテル関係者に伺うと、熊本空港入りで霧島から宮崎に入る団体のルート客(主に台湾人)は増えているとのこと。その後は高千穂〜阿蘇を周遊して熊本空港、または福岡空港からアウトするらしく、「宮崎単体では、なかなか目的地として選ばれていない」とのお話でした。

4月30日付けの観光庁発表による宿泊統計調査(2024年2月第2次速報、2024年3月第1次速報)によると、2024年3月の宿泊数は5,486万人泊と2019年同月比107.2%となりました。日本人宿泊数は3月は4,216万人泊(2019年同月比101.3%)、外国人宿泊数は1,270万人泊(2019年同月比133.4%)となりインバウンドが好調なことが顕著。

観光庁宿泊旅行統計調査
https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/shukuhakutokei.html

九州全体ではどうかというと、観光庁が2024年2月に発表した「宿泊旅行統計調査」によると、2023年の外国人延べ宿泊者数は、福岡県が473万7,990人泊(全体5位)で九州・沖縄では最も多い結果でした。次いで沖縄県の414万8,110人泊(同6位)、大分県128万1,000人泊(同13位)、熊本県96万1,870人泊(同18位)、長崎県46万1,970人泊(同21位)、鹿児島県33万7,770人泊(同25位)、佐賀県15万340人泊(同39位)、宮崎県11万6,270人泊(同42位)となっています。※訪日ラボ記事より抜粋

宮崎県は依然、観光客自体がコロナ前の8割に満たない水準となっていて、全国に比べて観光客の回復が遅れている。外国人宿泊数はコロナ禍前と比べると3分の1ほどにとどまっていて、インバウンド需要の取り込みも大きく出遅れている。※このニュースソース(NHK宮崎)は年次データのため、直近はさらに回復傾向であることには考慮が必要

同じく「新幹線がない」隣県の大分県では、過去最高を記録したコロナ禍前の2019年と比べてもおよそ90%の水準まで回復。 また、去年の外国人宿泊者数は78万7971人で前の年と比べて6倍に急増。インバウンドがコロナ禍前の状態にほぼ戻った形です。

全国的なホテル宿泊価格の上昇は大きくは3つの要因があると考察され、(1)国内旅行・インバウンド需要の急激な回復による需給の逼迫 (2)国内需要よりも料金に寛容なインバウンド需要に合わせた基準設定/主に都市圏 (3)コスト高や人手不足のため、稼働率はある程度までにとどめて価格を高止まりさせるという価格戦略の変化、これらの複合的な理由によって一部の地域では価格が高騰しているのだと考えられます。

つまり県内のインバウンド需要が回復していない(客数が増えていない)のに全国のトレンドに乗っかる形で料金を上げる、またはコスト高と人手不足を価格転嫁で乗り切ろうとする宮崎県内の一部の宿泊施設の施策には若干の無理があり、そんなことを続けていると「高い割にぜんぜん快適じゃなかった」という地域全体のレピュテーションリスクの方が大きくなる可能性がある、のではないかと危惧しています。むろん、設備更新・リニューアルやサービス向上に伴う価格の上昇が望ましいことは言うまでもないのですが、大浴場やサウナ併設の新しいホテルが増えている中で、古くて狭い客室に高い料金で泊まらせられた経験は誰しもあるのではないでしょうか。

この価格戦略がどこに向かうのかはなかなか見通せませんが、現在、全国ではホテルの建築ラッシュが続いていて、オペレーションの現場でも急速にDXが進んでいることを鑑みると、今後しばらくたてば価格も平準化してきて、正当な稼働率でリーズナブルに泊まれるホテルも増えてくると考えられ、その時に需要が回復していない地域の観光産業は益々衰退するかもしれないという危機感もあります。

地域の宝とも言える歴史文化をベースにした高付加価値ツアーを企画するような独立系の旅行会社も孤軍奮闘していますし、サーフ&ターフ(サーフィン/ゴルフ)コンセプトも好調、そして、何よりも「食」の魅力がある宮崎。これらを活かした知名度を上げる為の大胆な独自性のある観光戦略が行政には求められます。

独自の高付加価値ツアーを企画する「Hidden Gem Journey」
https://hidden-gem-journeys.com/top-japanese/

日本のインバウンドは好調で、2023年は5.3兆円と2019年の4.8兆円を超えて過去最高、2024年は第1四半期だけで1.7兆円と更新は必至。そんな中で、果たして”選ばれるまち”になっているか。それとも「観光立県を目指す」はずだった宮崎県はその看板を下ろすのか。とても重要な局面だと思われてならないのです。

参考
【九州・沖縄編】シリーズ「観光振興計画を読む」第6弾 ゴールは地域経済の発展。持続可能な観光立県に向けた取り組みとは

宮崎県「宮崎県観光振興計画」の改定について
https://www.pref.miyazaki.lg.jp/kanko-suishin/kanko/miryoku/201907kankokeikaku.html

DBJ(日本政策投資銀行)レポート
宮崎県への県外来訪者の周遊動向分析~「県内を全然回っていない!」は本当か~


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