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疼痛の伝導路を理解する 〜科学的根拠に基づく痛みの基礎〜

こんにちは、理学療法士の赤羽です。

疼痛について解説するシリーズの第4回目です。前回は、疼痛の多面性について解説しました。疼痛には、「感覚的側面」「情動的側面」「認知的側面」があり、それぞれの詳細をお伝えしました。
>>>痛みの多面性を理解する 〜科学的根拠に基づく痛みの基礎〜

今回は、疼痛の伝導路について解説します。みなさんは、疼痛の伝導路について考えたことがありますか?私は疼痛の勉強をする前は苦手意識があり、あまり触れてこなかったため、「受容器から脳に信号が伝わる」くらいの認識しかありませんでした。

しかし、疼痛の伝導路について知っておくと「なぜ痛みには多面性があるのか?」や「痛みは脳からのアウトプットである」といったことが理解できます。また、今後のコラムで取り上げる「侵害受容性疼痛」「神経障害性疼痛」「痛覚変調性疼痛」についても理解しやすくなります。

少しとっつきにくいかもしれませんが、一緒に確認していきましょう!

疼痛の伝導路

まずは、ざっくりと伝導路の流れを見てみましょう。

受容器➡脊髄後角➡視床➡様々な脳領域へと投射

これだけでは簡略化されすぎているので、もう少し詳しく見ていきましょう。

侵害受容ニューロンの乗り換え

まず、脳へ到達するまでに3つのニューロンを介します。

侵害受容器(一次侵害受容ニューロンの末端)の信号が一次侵害受容ニューロンを上行➡脊髄後角で二次侵害受容ニューロンへ➡二次侵害受容ニューロンが上行➡視床で三次侵害受容ニューロンへ➡三次侵害受容ニューロンが上行

このように、脊髄後角と視床でニューロンを乗り換えます。

侵害受容器について

一次侵害受容ニューロンには「Aδ線維」と「C線維」があります。これらの神経線維の末梢側の末端は自由神経終末となっており、自由神経終末が侵害受容器として働きます。

Aδ線維の末端にある侵害受容器:高閾値侵害受容器(機械的侵害受容器)

C線維の末端にある侵害受容器:ポリモーダル受容器

高閾値侵害受容器は、強い機械的刺激にのみ反応します。ポリモーダル受容器は、機械的刺激に加えて、熱刺激や冷刺激、化学的刺激にも反応します。

一次侵害受容ニューロンについて

一次侵害受容ニューロンには「Aδ線維」と「C線維」があることは先ほど説明しました。ここでは、もう少し詳しく見ていきます。

Aδ線維:有髄線維で伝導速度が速い。局在がはっきりしている。一次痛に関与。皮膚に多く分布。

C線維:無髄線維のため、伝導速度が遅い。局在がはっきりしない。二次痛に関与。主に骨組織、歯髄などの深部組織や皮膚に分布。

  • 一次痛:怪我をした瞬間に感じる鋭い痛み

  • 二次痛:怪我をした後に続く鈍い痛み

*ちなみに、侵害受容ニューロンではありませんが、触覚や振動覚など非侵害性の情報を伝える線維としてはAβ線維があります。

二次侵害受容ニューロン・三次侵害受容ニューロン

二次侵害受容ニューロンは起始している髄節の1〜3分節高位で対側に交叉し、脊髄の前側索を脊髄視床路として上行します。これは外側系と内側系に分かれます。その後、視床へ達し、三次侵害受容ニューロンへと乗り換えます。

外側系(外側脊髄視床路)

脊髄後角から視床の腹側基底核群へと至る(外側脊髄視床路)➡視床から三次侵害受容ニューロンによって大脳皮質の体性感覚野へと投射されます。

体性感覚野では、どこの部位がどう痛むのか、痛みの強さや局在を弁別します。これはAδ線維からの一次痛の伝導路であり、体性感覚野へと投射することで痛みの感覚的側面に関与します。

内側系(内側脊髄視床路、脊髄網様体路)

脊髄後角から脳幹網様体に側枝を出しながら上行(脊髄網様体路)し、視床の髄板内核に至る(内側脊髄視床路)➡視床から三次侵害受容ニューロンによって、島皮質や前帯状回、前頭前野、扁桃体、海馬、視床下部などに投射されます。

これはC線維からの二次痛の伝導路です。島皮質や前帯状回、扁桃体は痛みの情動的側面に関与し、前頭前野は痛みの認知的側面に関与します。そのため、内側系は痛みの認知的側面・情動的側面に関与します。また、自律神経の中枢である視床下部へも投射しているため、血圧上昇や頻脈、冷汗、顔面蒼白などの自律神経症状が出現します。

まとめ

今回は痛みの伝導路について解説しました。侵害受容器からの信号が最終的に脳へと至り、脳の広範な部位が反応することで、様々な反応が出現することが分かりました。そのため、痛みは脳からのアウトプットであり、痛みの多面性があるのは脳の広範な部位が関わっているためです。

それでは、本日の内容を3つにまとめてみます。

  1. 高閾値侵害受容器➡Aδ線維➡脊髄後角➡視床(腹側基底核群)➡体性感覚野

  2. ポリモーダル受容器➡C線維➡脊髄後角➡脳幹網様体・視床(髄板内核)➡島皮質や前帯状回、前頭前野、扁桃体、海馬、視床下部

  3. それぞれ脳の広範な部位へ投射されることで、感覚的側面・認知的側面・情動的側面という痛みの多面性に関与する。

みなさんも自分なりのポイントを3つ挙げてみてください。

続きはこちら>>> 7/16公開予定

確認問題

問題:疼痛伝導路の内側系に関して当てはまるのはどれですか?

  1. 視床の腹側基底核群に至る

  2. C線維からの一次痛の伝導路である

  3. 外側脊髄視床路が関わる

  4. 痛みの認知的側面・情動的側面に関与する

  5. 自律神経症状には関与しない

解答:

  1. 視床の腹側基底核群に至る:

×、視床の髄板内核に至るため

  1. C線維からの一次痛の伝導路である:

×、二次痛の伝導路になる

  1. 外側脊髄視床路が関わる:

×、外側脊髄視床路は外側系となる。

  1. 痛みの認知的側面・情動的側面に関与する

  1. 自律神経症状には関与しない:

×、自律神経症状に関与する

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