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覇権がなくなる日(5)

1996年のCBSテレビで「対イラク経済制裁について、現地の50万人の子どもが死んでいる。これはヒロシマの原爆投下より多いと言われている。これについてどう思うか?」というキャスターの問いに対して「それだけの値打ちがあるのです。(We think, the price is worth it.)」とオルブライト国務長官(クリントン政権時代)は答えました。この発言に対して腹に据えかねた国連の経済制裁担当官3名が辞任。

そのうちの一人のアイルランドの外交官ハリディ(Denis Haliday)氏は「私はこれまで(対イラク経済制裁について)“ジェノサイド”という言葉を使ってきた。何故なら、これはイラクの人々を殺戮することを意識的に目指した政策だからだ。私にはこれ以外の見方が出来ない。」とコメントしています。
2003 年、ハリデー氏はイラク人の窮状に注目を集めた功績が認められ、ガンジー国際平和賞を受賞しています。

また、2021年にハリディ氏はこのように語っています。
「国連は事務総長が率いる事務局や私のような人々がスタッフを務め、UNDP(開発計画)と機関がすべての国で事業を行っていますが、そのほとんどは開発的で人道的です。実際にそれは良い仕事であり、パレスチナ人を養うものであろうと、エチオピアでのユニセフの仕事であろうと、本当の影響を及ぼします。」「国連の機能が崩壊するのは安全保障理事会で、彼らの利益のためにいまだに権力を握っており、国連を操作し続けています。世界の悲劇はこの安保理事会の拒否権が憲章に違反し、人権条約に違反し、戦争犯罪や他国民の虐待を引き起こしていることです。それに加えて、彼らは武器を製造および販売している国であり、戦争の武器はおそらく彼らが生産できる最も収益性の高い製品であることを私たちは知っています。 したがって、彼らの既得権益は支配であり、軍事力であり、干渉です。 彼らが見たい方法で世界を支配することは、新植民地主義の行為で帝国のようです。

このオルブライト国務長官の50万人の子どもを殺す価値がある発言について、九兵衛は哲学者ジェレミ・ベンサムの功利主義「最大多数の最大幸福」の致命的欠点を思い出さざるを得ません。「拷問される個人の不幸よりも、その拷問によって産出される他の人々の幸福の総計の方が大きいならば、道徳的ということになる。」という啓蒙主義(西洋思想)の不道徳という欠点です。まさに、オルブライト発言はこの欠点を体現しているからです。

ソ連が崩壊して東西冷戦が終結した時、誰もが平和が来ると期待しました。しかし、実際にはクリントン政権時代からすでに米国の策謀は始まっていました。世界中に軍事介入を行って、世界の警察となって、しかも利益率の高い武器ビジネスを行うというネオコンの策略です。クリントン政権のオルブライト氏も、ブッシュ政権のチェイニー氏も、オバマ政権のライス氏も、バイデン政権のブリンケン国務長官もみな同様です。米国の外交を担当する国務省は民主党政権であろうが、共和党政権であろうが、みな「人道的介入」という綺麗事の建前で、実は「軍事介入によって非人道的な虐殺」をゲームのように行っています。「それだけの値打ちがある。(We think, the price is worth it.)」と考えてです。心に負い目も感じずに、米国にとっての美徳だとでも言うように。
世界的に常識とされる道徳観や美徳の概念を無視して、合理性のみの啓蒙主義で建国された米国という国が如何に異常な国であるのか
米国の国民がすべてそうではなくキリスト教的な道徳観を大切にする保守層もたしかにいます。たしかに異常な啓蒙主義者は米国の支配層だけですが、保守層も無関心を決め込んで見て見ぬふりをしており、これも問題です。
道徳観が希薄なだけではなく、米国人は基本的に他国の歴史には興味を持ちません。250年ほどの浅い歴史の米国と他国の長い歴史を比較しても「嫌になってしまうだけ」だからです。このように他国に無理解な国が覇権を握っていることに寒々とした気がします。

パレスチナ問題で目覚めた道徳回帰

世界中でパレスチナでの虐殺を止めろと言う抗議やデモが頻発しています。世界81億人の人たちの多くは、キリスト教徒23億人、イスラム教徒19億人、ヒンズー教徒9億人、仏教徒5億人、(合計56億人で7割)や地域の伝統文化に沿った道徳観を持ち合わせています。日本を除くG6の人口は6.6億人で、1/8に過ぎません。G6の国民全てが「啓蒙主義の不道徳」に賛成なわけではないので、10人に一人だと仮定しても「1/80の人数にしか啓蒙主義的な偽善の屁理屈でのジェノサイドの正当化は通用しない」のも当然です。

米国でも、大学内で反イスラエル・デモが多発しています。これも道徳回帰的な現象です。ただし、極左勢力のジョージ・ソロスやビル・ゲイツが子飼いのアンティファやBLMなどのNGO団体を通じてデモのプロを雇って煽ろうとして資金を提供しているので、純粋な道徳的行為というよりも選挙イヤーでの騒乱を狙っているようで要注意です。

タッカー・カールソンのプーチン大統領インタビューで目覚めた他国の歴史と道徳

このインタビューで、初めてプーチンが戦争を避けるために米国と対話をし続けてきたこと、そして米国がすべてその誠意を裏切り続けたことを知った人が多いのではないでしょうか?そして、ロシアには長い歴史と民族の伝統や道徳感があり思いを新たにした人も少なくありません。米国ホワイトハウスは武器を製造するネオコン勢力に牛耳られており、戦争や軍事介入がないとこれらのスポンサー企業が利益をさせないからです。

ウクライナ戦争で経済制裁を西側から受けても、食料やエネルギーを自給し、鉱物資源も不足分は友好国から調達できるロシアは、2023年の実質GDPは3.6%も成長しています。ユーロ圏は0.6%、米国で2.5%なので、経済制裁など何の効果もないことが分かります。事実、モスクワなどの都市部の小売店には商品が並び、またタッカーの動画で映されたモスクワの清潔で綺麗な地下鉄を観た人たちは、その豊かさに驚いたことでしょう。ホームレスと悪臭のNYの地下鉄とは大違いです。

シカゴ大学のミアシャイマー教授が「シカゴにいるよりもモスクワを訪問している時の方が落ち着く」と感想を漏らし、「歴史と道徳に根付いた国がいかに居心地が良いか」という事実を伝えています。

ワクチン強制接種反対で目覚めた真の悪の枢軸

昨年、不正を暴くことにミッションを絞った米国の独立系ジャーナリストがファイザー社のワクチン開発担当役員の会話を盗撮して不正を暴き、数日で数千万回も動画が再生されました。新種のウイルスを開発し、同時にそのワクチンを開発していたのです。

また、WHOはパンデミック条約という新たな仕組みを通そうとしており、各国で大反対の渦が巻き送っています。パンデミックが起きた時に、各国の主権を超越した強制力を発揮できるもので、さらにワクチンを強制接種できるという内容です。このWHOには製薬会社と、ワクチン開発や遺伝子操作に熱心なビル・ゲイツ財団がスポンサーとなっており、さらには夫が遺伝子製薬会社を経営しているEUのライエン委員長も積極的です。

ネオコンを武器産業に利益誘導する勢力とするならば、これらの人間はメディコンとも呼ぶことができる新勢力です。
日本では、政府にパンデミック条約を締結しない・しそうであるならばWHO脱退も辞さないという議員や言論界の有志がWCHという組織を盛り上げて抵抗しています。

訪日ブームで目覚めた世界共通の道徳観

日本の街ではゴミ箱がないのにゴミ一つ落ちていない。公衆トイレなのにホテル並みに清潔。電車に乗る時も割り込む人はおらず、整然と電車を降り整然と電車に乗る。都会でも田舎でも質問をすると丁寧に答えてくれる。日本の食堂は、お茶やおしぼりを出しても無料。都会でも超高層ビルと公園と古い寺院や家屋などの建物が美しく共存している。どこまで歩いて行っても、安全で危険を感じないほど治安が良い。

これらはコロナ禍明けで日本に来日した2500万人の外国人が日本の良さを痛感した際のコメントです。お決まりの観光地ルートや日本食の感動はもちろんですが、私たち日本人にとって当たり前のことに外国人は感動しています。ここに掲げた事柄の反対語を考えて見てください。ゴミだらけ、割り込み当たり前、などです。日本人から見れば「なんて不道徳な!」と怒りが湧いてくるでしょう。

つまり、日本人が縄文時代や江戸期の儒教(朱子学)などで培ってきた道徳概念が、実は世界に通用すると言うことです。

米国覇権の終焉

以前にYouTube九兵衛の視点で2008年当時に筆者が予想した超長期サイクルで、米国のピークは2007年で2030年にボトムをつけると話しました。
そのコースを辿っている気がしてなりません。2024年の大統領選挙でトランプ氏が勝利するでしょう(暗殺や内戦がなければ)。現在のバイデン民主党政権は過去最悪で世界に厄災をばらまいているので、私もトランプ氏を応援しています。Much betterだからです。しかし、その任期が切れた後は米国覇権は間違いなく終焉すると考えています。

「アメリカン・ドリーム」「自由と平等の国アメリカ」「世界の頭脳が集まるアメリカ」。このようなブランド力が米国覇権の源泉でした。
もちろん、基軸通貨ドルやそれを裏付ける圧倒的な軍事力も覇権の裏付けです。しかし、米国ブランドが背景にあったことは間違いありません。

いまや「米国という国にブランド力は無く、軍事介入したベトナム、中東・アフガンやウクライナでは敗退と失敗」を繰り返しています。また、米国海軍の船舶の補修をする自国の技術者もいません。高額な報酬で惹きつけた優秀な人材は「米国を見限り、本国に帰還」する者が後を立ちません。
財政収支も経常収支も双子の赤字の米国経済を見れば、ドルが強いはずがありません。中東から買う原油はディルハムで、ロシアから買う原油はルーブルで、というように貿易当事者同士の国の通貨で決済することを皆が始めれば米ドルはあっと言う間に暴落し、米国経済は沈みます。

グローバリスト(急進左派で不道徳な啓蒙主義者でありマルクス共産主義者)である米国民主党の過激な政治リーダーたちやネオコンなどのディープステートがばら撒いた種が自らの首を絞める結果となるのですから、自業自得と言わざるを得ません。

自惚れしか知らない米国は明らかに衰退の道を辿っているのです。世界の中で平凡なひとつの国という地位に転落しても、私は米国にとってはむしろその方が幸せなのではないかと思えます。

日本の文化・道徳が世界に伝播する

それでは次に覇権を握るのはどの国でしょうか?
私は「覇権」という言葉に時代めいた古臭さを感じずにはいられません。「覇権」などは不要で「覇権国家」など無い方が世界はうまくいくのではないかという気さえします。「覇権がなくなる日」は必ずきます。
そしてそれに続くのは「美徳の時代」です。

ただし、世界を正しい方向に導くのは日本だと思っています
縄文時代から培われた「美徳」、聖書系宗教とも共通する道徳感。
そして、何よりも自惚れず他国に介入せず、相手を思いやる常識の感覚。
きっと、世界を導くリーダーは日本人から出るものと期待しています。
ただし、それは学歴とは無関係に、普通の市民から徳の高い人物が登場するでしょう。

「 歴史をひもといてみよう。文化や文明の礎を築いてきたのは、アブラハム・モーゼ・ゾロアスター・ブッダ・孔子・老子、そしてムハンマドである。彼らは哲学者・芸術家・技術者のいずれでもなかった。彼らの果たした役割は、ただ新たな社会を築くことであった。その役割が新たな潮流となったことは言うまでもない。だからこそ、のちの時代になって、哲学者・科学者・技術者・社会学者・医者・芸術家が各々の分野を軸に活動の実を結ぶことが出来たのである。」

イラン革命時の社会学者シャリアティ氏の言葉ですが、正鵠を得ています。私は日本の普通の人の中から新たなリーダーが出てくると思っています。
たぶん、私が生きている間にはお目にかかれないでしょうが。

美徳・道徳について考えた全5回のシリーズはこれで終了です。



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