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ソーシャルワーカーに”アレコレ”聞いてみた!〜ラクに生きるための選択〜

ソーシャルワーカーを紹介する企画2人目は、沖縄県内で精神保健福祉士として依存症支援を中心に活動されている❝上原拓未❞さん!

上原さんは、依存症支援を中心とした医療機関や当事者団体での経験を経て2020年の7月から合同会社レジリエンスラボを立ち上げている。

主な活動は、グループホームの運営、カウンセリング、家族教室などでこれまでの経験を活かしながら活動の範囲を広げている。

今回は、上原さんが会社を立ち上げるまでの経緯とともに何を大切にしながら支援にあたっているのかや今後の活動への展望についても聞いてみた!


依存症支援と出会うまで

元々は医療福祉関係の仕事ではなく、エンタメ系の会社に就職するが3か月で退職。その後、社会から逃げるかのように福島の山小屋に籠ったり、全国を放浪する旅に出たりしている。ここの話だけでも聞き応え十分だがボリューム満点のため泣く泣く省略(涙)

「大学卒業後はやりたいこともなく、社会から逃げたいという気持ちもあって根無し草のような生活をしていた。徐々に周りの同級生たちがキャリアを積み重ねている状況を見て焦りを感じ何かできることを探さなくてはという気持ちになっていった。」

その後、東京の出版社へ就職し3年後に沖縄へUターン。元々、精神障害の方といると落ち着くという感覚があったことから、精神保健福祉士の資格を取得、精神科病院のソーシャルワーカーとなった。

「幼いころから周囲の普通に押しはめられることに苦しんできた。私自身、自閉症スペクトラムやADHDの特性を持っていることもあり、精神障害を持っている方といるほうが居心地が良かったりする。自分にとって楽な環境を求めて精神科領域の仕事に就こうと考えた。」

社会から求められる"普通"にもがいてきた上原さん。様々な世界を見たうえで無理なく働ける場所がここだということに気づけたという。

依存症患者への苦手意識

精神科病院では、多くの患者を受け持ち様々な精神疾患の患者の支援にあたっていた。その中に依存症患者もいたが上原さんは初め苦手意識があったという。

「初めは依存症患者へ苦手意識があった。依存症患者の多くが治療を望んでいないことがほとんどで他の精神疾患の患者と比べた時に治療への向き合い方の違いに違和感を感じていた。」

患者の多くは、治療するという目的のために通院、入院しているが依存症患者の場合、周囲の促しで治療していることや受診しながらもアルコールや薬物などを止められない人も少なくない。
それでも依存症患者と関わり続けたことで気づきがあったようだ。

「ある時、私自身にも止めたくても止められないことがあり、"止めたい"と"止められない"の相反する行動や感情は当たり前のことだということに気づいた。」

依存症の治療は特効薬があるわけではなく、人とのつながりや対話の中で回復するということを知り、だったら私にもできることがある!という感覚に変わっていったとのこと。そして、自分自身の見方が変わることで依存症者の態度にも変化があったようだ。

「治療プログラムに参加してもらうことばかりを考えていた時期もあった。ある時からプログラムの参加関係なしで一人一人のことをもっと知っていこうと決めた。すると関わる依存症患者の態度も自然と変わっていった。」

上原さんに対し「あんたがいるから通っている」という患者もいたようで、患者が変わるということの前提には支援者自身の見方や姿勢を変えることが必要であるということを教えてくれた。

その後、依存症支援に特化したクリニックでも経験を積み当事者団体へ転職。スタッフや利用者は依存症当事者(回復者)のため、病院とは違い上原さん一人が専門職という立場になる。とは言っても普通を押し付けられない環境に安心でき、すぐに溶け込めたよう。その反面苦労したこともあったようだが…

病院と当事者団体との違い

病院では、支援者と患者との間で境界線が明確に決められていることが多い。逆に当事者団体にいると境界線が曖昧なことも多いため、期待に応えるために無理をしてまうこともあったとのこと。
その中で「人間同士でそんなにきれいに立場(支援者と当事者)を分けられるのか?」という疑問を抱きだしたという。両方の世界(病院と当事者団体)を経験することで見えてきたことがあったようだ。

「病院では必然的にルールが決められていて、守られていたこともあったが、出来ることにも限界があると感じていた。逆に当事者団体の中では出来ることは増えたが関わりすぎてしまって立場を見失いそうになることもあった。」

支援者としての自分と仲間としての自分の両面からこの人たちをどう救えるのか、支えられるのかを考え抜いたという。どのような立場でも依存症を抱えてしまった「生きづらさ」に共感する上原さんのスタンスは一貫して変わらないように感じた。

支援の中で自分側を見て開示すること

依存症は、一生の病気と言われるほど一度依存から脱したとしても再発することも多い。そのため、支援者側が疲弊してしまうことも少なくない。そんな時、相手が変わらないことばかりに目を向けるのではなく、自分自身を見つめることが必要であると上原さんはいう。

「自分に置き換えたとしても変わることは簡単なことではずなのにどこかで押し付けていることもある。支援者として傲慢になると支援という名の下でコントロールしてしまうことになる。時には、自分の中にある感情に目を向けることも必要。」

経験を積むほど気づかないうちに自分の当たり前に押しはめていることや自分本位のやり方になっていることもあるかもしれない。また、自分自身で抱え込み過ぎてバーンアウトする支援者も少なくない。

「専門職でいると必然的に自分の話や感情を出すことを良しとしないことが多い。もちろん自分の情報や感情を垂れ流す必要はないが、支援者側が自己開示せず、相手ばかりに開示させようとしていることに疑問を感じることもある。」

だからこそ支援者が自己開示できる場所の存在が必要だと感じているという。新たに支援者向けの自助グループなども立ち上げたいと構想を練っているようだ。

合同会社レジリエンスラボの立ち上げ

カウンセリングや自助グループの活動だけでなく、グループホームという生活を支える環境の中で包括的な支援を展開している。また、そこから見えることを家族教室や支援者向けの研修会に活かしていきたいという。

そして、上原さんは、会社を立ち上げた理由を「選択肢がなかった」という。組織の中で働くことの限界を感じ、やりたいことをやるために独立するという選択にたどりついたようだ。

「元々経営のノウハウもないし、会社を立ち上げたいと思ってもいなかった。逆を言えば知らなかったことで今始められた。ADHDの特性である衝動性で会社を辞めてきたが、今は会社を立ち上げた。これまで周囲から普通じゃないと言われてネガティブに捉えていきたことが強みになっている。

コンプレックスとして捉えてきた自身の特性を依存症支援を通じて肯定できるようになったという。上原さんに限らず周囲から求められることと自分ができることにギャップを感じている方は少なくないのではないか。

そして、会社を立ち上げたからこそ周囲の協力や社会とのつながりが必要であることが実感したという。

「会社を立ち上げて一人で決めることは増えたが、だからこそ意図的に誰かに頼ることや自分中心の考えになりすぎないように気を付けている。結局、独立したからといいって一人でできることは少ない。だからこそ自分が無理しない形で社会や人とどうつながっていくのかを考えるようになった。」

依存症支援を通しての想い

支援者自身が自分らしく楽(ラク)に生きている姿を見せることが支援につながることもある。私が楽に生きられる居場所を見つけたように依存症当事者やその家族にもそうなって欲しいと思っている。

上原さんはこれまで隠したかった過去や恥ずかしいと思っていた経験が沢山あり、つい最近も大事な書類が見つからないことがあったと苦笑いしなが話してくれた。しかし、そういったことも許せる自分になることやこうやって話せるようになったことで随分と楽になったという。
依存症という病気否認の病気とも言われており、まずは認めることからが回復のスタートとなる。
上原さんは、最後に弱さを見せることを怖がらずにできてつながることのできる社会を目指したいと屈託のない笑顔向けながら語ってくれた。

最後に

医療機関、当事者団体の両方で働いてきた上原さんだからこそ説得力のある言葉が多くあった。また、その中での挫折や失敗も多く経験してきたと話してくれた(人に話せるようになるまでには時間がかかったようだ)。ご自身の生きづらさがある(あった)からこそ、より依存症当事者の方に寄り添うことができ、周囲の家族や支援者からも信頼を得ているのだと感じる。
私も上原さんと出会って素直に自分のことを話せたり、気づきをもらったりと、とても影響を受けている。

この企画は、ソーシャルワーカーを紹介するものだが、上原さんの場合、ソーシャルワーカーという枠に囚われないカタチだなと感じた。それこそが彼女の魅力である。依存症というテーマを通して生きづらさを抱えている人たちやマイノリティーとして理解されていない社会に対してアクションを起こしていきたいと言われており、溢れてくるバイタリティーに驚きっぱなしだ。また新たなことにも挑戦するとおっしゃっていたので今後も上原さんの活動に注目していきたい。

今回のインタビュー中、終始笑いぱなしでお話を聞くことができた。
上原さん、ご協力ありがとうございました!

次回のインタビューも今月中に行う予定です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。


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